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【36日目】感染した時の話
圓朝忌の朝、前座は朝の9時半に全生庵に集合することになっていた。
となると8時起きなわけだが、8時なんて噺家にしてみれば深夜みたいなもんで、言葉を選ばずに言えばうんざりしていた。
そしたら起きた時点で喉に違和感。
エアコンで喉がやられたのか? と思いつつウチにあった検査キットを使ってみると、案の定陽性。
「やった。もう少し寝られる」
ガッツポーズもしてたかもしれない。
自宅療養
寄席関係者のコロナ感染の話を聞く限りでは
「10日間の自宅療養のうち最初だけ少し発熱して後はずっとゴロゴロしていた」
というのがほとんどだったので、自分が感染したら噺の稽古や溜まっていた作業を終わらせよう、なんて意気込んでいた。
しかしいざ感染してみると思い通りには行かなくて、発症したその日の夜、首だけ40度くらいの発熱(頭は37度くらい)をして、酷い頭痛に襲われた。
横になると頭が痛いので、一晩中椅子に座って頭を動かさないようにジーッとしていた。
ただただ一晩痛みに耐え続けるのが本当に地獄で、
この時耳元で「家元こそ至高」と囁かれ続けていたら立川流に入門していたと思う。
2日目の朝に頭痛薬と解熱剤をもらって、辛くはなくなったが頭が働かない。
稽古どころじゃない。
これが6日目くらいまで続いたときには、ただいたずらに時間が過ぎたことに心臓がドキドキした。
罪悪感?
「披露目前にこんなことしてていいのか?」というような。
7日目以降は体調が良くなって、反動なのか妙に稽古が捗って、読書もいっぱいして、部屋の大掃除もしたりして、夜寝て朝起きて部屋でBGMをかける習慣ができてコーヒーの量も減ってスマホ中毒が治った。
あれもしなきゃこれもしなきゃに追われていて生活が荒んでいたが、無理にでも何にもしてない時間を過ごすと人間がチューニングされてまともになるのだと思う。
コロナになって良かったという話ではないのだけれど、毎日休みなく働いていると自分でも気づかない内に何かしらズレてくる。
私に限らず現代人は皆そう。
休みは大事。
披露目の40日間
披露目は毎日ネタを変えている。
毎日毎日思い出して稽古。
そんなことを30日もやっていると、この芝居の4日目くらいから左眼が痙攣し始めた。
調べてみると睡眠不足やストレス、カフェインが原因だそうだ。
思い当たる節しかないが1番の原因はストレスだろう。
「あっ、ウケなかった」と思った瞬間にビクビク! と痙攣して、気になって最後まで集中できなかったりする。(ウケないとストレスらしい)
わからないけど、大滑りしたら痙攣しすぎて目玉が落ちるんじゃないだろうか?
今のところめちゃくちゃしんどい。
最後まで走り切った時、ちゃんと報われるのだろうか?
36/40 新宿末廣亭 六日目
【元犬】
この芝居はただただ苦手な噺をやる十日間。
元犬をやるなんて約三年ぶりである。
前座になって四つ目に覚えた噺で、当時は特に工夫もせずやっていたので「好きじゃない噺だ」と思ったらやらなくなってしまう。
他の噺とは違い元犬はくすぐりが「笑ってください」という感じがして好きじゃない──なんて、当時の私は思っていたのだけれど久しぶりにやると楽しい。
が、印象として真打の元犬はいいけど二ツ目の元犬は「楽してる」と思われそうで、やっぱりやらない噺になりそう。