【23日目】運命
饅頭が着物着て落語しているような私ですが案外ロマンチストで、ちょっとした事で運命を感じる。
中で「白酒に弟子入りする運命だったんだな」と思うことがいくつかあった。
落語をほとんど聴かずに入門したからよりそう思うのかもしれないが。
風来のシレン
『風来のシレン』というチュンソフトの名作ローグライクゲームがある。
──この時点でもう私が何を言っているか分からないというアナタ。
分からないままで大丈夫です。
雰囲気でお付き合いください。
これは私の大好きなゲームで、どれぐらい好きかと言ったらドリームキャストのアスカ外伝を何千時間も遊ぶほどだ。
『1000回遊べるRPG』というキャッチコピーは伊達じゃない。
ゲームが好きな人からすれば常識だけど、知らない人からすればマニアックで、私は東京に出てきてから現在15年くらいになるが『風来のシレン』が好きという人に会ったことがない。
『シレン好きに悪い人はいない』
これは私の持論で、シレン好きとはいい酒が飲めるだろうなー、なんて思っていたら、
大掃除の時に師匠の家の棚から『風来のシレン』が出てきた。
うわ、運命じゃん!
て思った。
【氏子中】という噺
落語家になる程の人は皆落語に詳しくて、師匠と呼ばれる人は落語辞典に載っている演目は全て頭に入っているもんだと思っていた。
二年ほど前、一朝師匠が配信の会で、
「俺【ねずみ穴】聴いたの初めてかもしれねぇなぁ」
なんて仰ってびっくりした。
落語を知らずにこの世界は入った私は、演目がわからないと
「落語家のくせに落語知らねえのか!」
と怒られることを恐れて見習い期間に知らない古典落語をなくすことにした。
このご時世、インターネットで検索をすれば全ての演目が出てくると思っていだけれどそんなことはなくて、
しょうがないから落語好きの方が道楽で制作したホームページの落語辞典を参考に、あいうえお順で片っ端から落語を聴いていく。
たしか【青菜】あたりから始まってたかな?
それを順に順に聴いていって『う』の段に入ったところで【氏子中】という話が出てきた。
動画サイトで検索── 褒められたものではない──しても【氏子中】は出てこない。
出てきた! と思って聴いてみると内容は【町内の若い衆】。
どこかで聴けないのか? と調べまくっていたら『談志が選んだ艶噺し17』というCDに【氏子中】が収録されていると知った。
そしてそのCDが新宿の図書館ならレンタルできる事を突き止め、会員証を作って早速借りる。
家でケースを開くと落語の解説書が出てきて、探し求めていた【氏子中】のことが書かれていた。
やっと見つけた!
と意気揚々聴いてみると、中身は【町内の若い衆】。
どういうこと?
今確認できる人がいたら教えてほしい。
「こんだけ探しても見つからない!
氏子中聴けないから勉強する気無くしたわ!」
と不貞腐れていた三日後くらいに『白酒甚語楼二人会』で師匠が【氏子中】を演った。
え? どういう確率?
これは運命じゃん!
白酒に弟子入りする運命だったんじゃん!
まとめ
あの時たまたま師匠がうちの近くで落語会をやってたことも、
あの悩んでいた時に師匠がテレビに出ていたことも、
たまたま名前が黒木で黒酒になる事も、
実際のところこういう運命というか、ただの偶然は誰の人生にも幾らもあって、それに気づくか気づかないか、感動するかしないかの大したことのない話なんだけど、
「うわあ、運命だ!」
と喜んでる方が色々と面白いことは知っている。
人生長く感じるらしいですよ、心が動くと。
自分の人生も誰かの人生も落語で長くしたいね。
23/40 浅草演芸ホール 三日目
【初天神】
本日は年に一度の、私の名前の由来でもある白酒黒酒の新嘗祭。
一度しかない二ツ目の披露目。
そして師匠と一緒に寄席に出る日。
人生でもう二度とないこの日に【親子酒】をやるのが最高に洒落がきいているということで稽古したが、昼席で【親子酒】出てしまった。
あららー。
まあそういう運命。