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【24日目】黒酒ぶつくさ

自分で始めといてなんだが、40日もエッセイなんて書くことない。
しかし私は『始めた以上やり切る男』なので、始めた以上はやり切ってしまうのだ。

書くことがない時はどうするかというと、いろいろな人のエッセイやブログを拝見する。
で、私がよく読むのが大師匠雲助の『雲助ぶつくさ』だ。

雲助ぶつくさとは

読んでいただくのが一番早いが、簡単に説明すると
『その日にやった噺について思うことや反省を書いた日記』
という感じ。

くどくどと不平や小言を言うさま。ぶつぶつ。
ぶつ-くさの解説

噺家の著書はたくさんあるが、雲助ぶつくさほど当時の噺家という職業の空気感だとか、何を考えて高座に上がっているのかが垣間見れるのは他にないと思う。

いつだったかの雲助一門忘年会で馬石師匠が
「雲助ぶつくさもうやらないんですか? あれ面白いですよ。本になりますよ」
と仰っていて、それに対して雲助師匠は
「ああいうのは若いうちからやらなきゃいけない」
と、もうご自身の年齢じゃ書けないということを暗に仰っていた。
まあ雲助師匠ほどになると、そもそもやる意味も反省することももう無いのだろう。
ならば、と雲助師匠に許可をいただいて『ぶつくさ』を引き継ぐことにした。
なるほど、若いうちは反省だらけでネタが尽きない。

令和四年五月十七日 桃月庵白酒一門会 於・伝承ホール

◎新版三十石
白酒一門会となると私も出演者の一人なので、さらっと前座噺をやって「はい終わり」というわけにもいかない。
お客さんに喜んでもらおうと、やり慣れた噺でも何かしらの工夫をつけるかネタおろしをするようにしている。
とはいえ持ち時間は毎回10分。
ここしかない、と【新版三十石】をやることにした。
勿論開口一番でやる噺じゃない。

【新版三十石】は白酒のものを何度も聴いているが、何をどうすれば面白くなるのかよくわからない。
これまで覚えた噺の経験が全く活きない。
「下手な浪花節をやれば良いのかな?」ということで安直に『訛ってて聴き取れない+緊張してグズグズ』という感じでやってみることにした。
が、びっくりするくらい浪花節の部分が反応が無い。

自分では稽古通りの出来で、浪花節の先生が『緊張しているから目が虚だったり声が裏っ返る』というのをちゃんとやったのだけれど、後から聞けば「本当に緊張しているのかと思った」とのこと。
何がダメだったんだろう? と考えてみると、
『緊張している演技』が伝わっていない説得力のなさもそうだけど、たぶん『緊張してグズグズ』というアプローチがそもそも間違っていたのだと思う。
思い返せば雲助も白酒も【新版三十石】で浪花節をやる時は『下手にやってます』というのを過剰にアピールしている気がする。
でも浪花節の先生自身は自分を名人だと思っているから気持ちよさそうで満足げ。
その感じが面白い。
だから先生は緊張なんかしてない。
この辺を修正してすぐにどこかで試したかったのだけれど、前座時分の話なのでそんな機会もなかった。
早く二ツ目になりたい、とこの時ほど思ったことはない。ぶつくさ。


24/40 浅草演芸ホール 四日目
【新版三十石】
半年ぶり二回目。

ウチの師匠は噺をアレンジする。
で、稽古の時はそのまま覚えるわけだが、これを弟子がそのままやると怒るお客さんがいる。
前座の時から。
腹立つので白酒のくすぐりを抜いてやろう! と、今日抜いて自分で考えたものをやった。
しかし白酒の通りにやってたらもっと喜んでもらえてた気がする。
でも一門会での課題はクリアできた。
高座百遍。次。

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