【17日目】羽織紐
無知は罪とまでは言わないけれど、やっぱり馬鹿は損をするもんで。
二ツ目に昇進するということで羽織を作ったのだけれど、
のみといえば槌、硯といったら水みたいなもんで、羽織を買ったら羽織紐はついてくるもんだと思っていた。
勿論、良い羽織紐とは言わない。
でも音楽プレーヤーを買ったら付いてくるどうでもいいイヤホンみたいな質の羽織紐がついてくると思っていた。
そしてそれを長く使おうと思っていた。
しかし、3枚羽織を作ったのだけど、どれにもそれはついてなかった。
現代っ子だから全部通販
「じゃあ羽織紐買おう」てんでネットショップを見てみたら、羽織紐ってちゃんとしたものを買おうとすると余裕で10000円を超えてくる。
正直「ヒモで?」と思った。
しかしながら祝い事でケチってちゃいけないということで、そこそこ良い値段のものと6000円くらいのものを注文した。
で、注文してから気づく。
──ヤフオクとかメルカリなら破格の安さで羽織紐が買えたんじゃないか?
調べてみるとやっぱりめちゃくちゃ安い。
「んー……やるせねぇ」といくつかカッコいい羽織紐を落札。
うちに届くのを楽しみに待っていたら、
全部女性用だった。
落札した羽織紐は女性用の短い羽織紐で、男性用羽織紐の半分の長さしかなく、短くて結べない。
泣きそうになった。
なんだったら通販で買った6000円くらいの羽織紐も女性用だった。
「知らんがな」
と一人言。
女性用と男性用で長さ違うんかい。
長さは書いてあったけど、そもそも男性用が何センチなのかを知らない。
馬鹿は損をする。
しかしタダじゃ転ばない
ただ損をしただけで終われないので考えました。
「女性用の羽織紐でも繋ぎ合わせれば男性用くらいの長さになるんじゃないか?」
ということで、黒ニッケルの爪金具を買った。
この金具でもって……
この二種類の紐を……
こうだ!
どうですか?
遠くから見ると全くわからないし、近くで見ても「そういうデザインかな?」と気づかれないと思います。
早速羽織に付けてみましたら、
男性用としては短く女性用としては長い、
ただの紐が完成してしまいました。
帯に短し襷に長し。
しかし芸人は失敗をネタにできる生き物なので、このエッセイ(エッセイかこれ?)のネタが一日分できたと納得することにしました。
納得できませんでした。
17/40 池袋演芸場 七日目
【ざるや】
ネタおろしでした。緊張した。
もっと弾けても良かったけど、最初はこんなもん。
夜席前、小満ん師匠とお喋りしました。
「披露目ではどんな根多かけてるの?」
「実は毎日根多変えてるんです」
「偉いなぁ」
偉いなぁ、って。
やっと誰かに褒めてもらえた。