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【2024/6/25】江戸文化体験ツアー後編【ねぎまの殿様】
【時そば】を聴くと蕎麦が食べたくなるとか、
黒門町が【明烏】をやると甘納豆がよく売れたとか、
食べる仕草を名人がやれば、聴き手はついその口になる。
なんなら実際に見るよりも食欲をそそる──のだけれど、私は蕎麦はあんまり食わないし、
甘納豆も、美味いけど買ってまで食べたいとは思わない。
【目黒のさんま】の秋刀魚。
秋刀魚は美味いけど、落語を聴くとむしろ食べたくなくなる。
これは、幼稚園だか小学校低学年だかにピクニックで食べた鮎の塩焼きが、子供の自分の口に合わないわ串刺しで残酷だわで、嫌な思い出と目黒のさんまがリンクしてしまうから。
『落語を聴いてもその物を食べたいとは思わない』という話ではなくて、
私も焦がれている食べ物はある。
猪鍋とねぎま鍋だ。
猪鍋は無論【二番煎じ】を聴いて。
落語を聴き始めの頃、『落語』とだけ検索して一番最初に出てきたのが志ん朝師匠の【二番煎じ】だった。
上手いし美味そうと思って、そこから志ん朝師匠ばかり聴くようになった。
ねぎま鍋は、確か五代目の今輔師匠だったかな。
【ねぎまの殿様】の殿様を聴いて。
知らない噺をなくそうと色々聴きあさっていた頃に出会った噺で、ほぼ【目黒のさんま】なんだけど、とにかく美味そうなんだよな。
鍋が好きなだけなんじゃないの?
ねぎの芯を飛び出させたいだけなんじゃないの?
それはそうなんだけど、やっぱり猪鍋もねぎま鍋も、食べた事がないというのが大きい。
「どれだけ美味いんだろう」という想いが落語を聴くたびに募る。
たばこと塩の博物館を出ると街が赤く染まっている。
江戸文化体験ツアーの締めは、やっぱり落語に出てくる物を食べたいということで、
今回ついにねぎま鍋を食べに行くことにした。
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浅草の『一文』さん別館。
店の中は薄暗く、小川が流れていて橋がかかっていて、
中央の良い席では、どう見ても何処かしらの会長が3人集まって会食していた。
あまりの乙さに緊張さえする「まだ早い」お店。
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知らない人のために──。
ねぎま鍋とは、マグロのトロの部分と野菜を醤油ベースの出汁で煮込んだ鍋。
昔は、脂の多いトロの部分は庶民に口に合わなかった。
またヅケにして保存ができた赤身と違って、トロは醤油を弾くんで保存も効かない。
だから当時は肥料にしたり廃棄したりしていたのだけれど、それを工夫して食べられるようにしたのがねぎま鍋。
トロの脂が出汁に溶け込み、野菜に染みて美味いのだ。
我々はコースを予約していて、まず出てきたのが、
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わかりません。
なんでしょうか。
野菜がさっぱりしているのに味が濃い。
びっくりする。
たぶん食べたことない料理。
アンケートを書くと竹酒のサービス。
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日本酒にほんのり竹の香りが。
風流、というやつか。
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えーと、お刺身。
氷の上に大根のシートが敷いてあって、その上に刺身やら何やら。
なんの魚だったか、確か説明してくれたけど目の前の皿に夢中になっていた。
おしゃれとかじゃないな。
とにかく風流なんだよ。
氷以外全部食べた。
そしてお待ちかね、ねぎま鍋。
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トロと言っても高級寿司のアレじゃない。
だったらそのまま食べたほうが美味いのだけど、これはメバチマグロ(本マグロにも変更可)で、そのまま食べるには筋が多かったりする。
所謂、ねぎま鍋にぴったりのやつ。
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煮込んでいく。
醤油の良い匂いが鼻腔をくすぐる。
もう美味い。
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もういけるだろ!って食べたら全然早かった。(勿体な)
もっとグラグラ煮込んで煮詰まってきたら食べ頃。
写真見てたら涎出てくる。
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このくらい色が濃くなったら最高だった。
薬味つけて食ったらまた美味い。
ねぎもちゃんと鉄砲仕掛けで、芯が飛び出す飛び出す。
肉系の鍋とは別競技で、とても比べられはしないんだけど、
自分が歳をとったらコッチだなと思った。
今、【ねぎまの殿様】やったらなかなか良いんじゃないか。
覚えたいな。
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鍋の締めはうどん。
卵と絡ませて。
もはや何も言うまい。
最後はスイーツ。
もう何出されても美味いと思う。
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さくらんぼかな、よくある柔らかいのではなく瑞々しくてポリポリして美味い。
この状態で売ってるの見たことないかも。
うん、もはや旅日記というか食事レポ。
いやはや大満足。
生活のレベルを上げたら、こういった食事を当たり前にできるのかね。
外へ出るとすっかり日は暮れていて、だけど浅草は夜こそ本領を発揮する。
店はほぼ閉まってるけど、浅草寺から何からライトアップされていて、なかなか見慣れない。
いつも良いなと思う。
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茶道、博物館、ねぎま鍋、初めての事ばかりで一日がすごく長く感じた。
毎日こうありたいものである。
が、シビアな話、何をするにもお金。
お金がないと人生は豊かになり難い。
だからもっと頑張らないといけない。
6月の夜は涼しい。
毎年そうだっけ? って毎年思う。
ゆくゆくは本マグロのねぎま鍋を当たり前のように食べたい。
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