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【35日目】思い出深い高座
良い思い出はすぐに忘れて、悔しいとか悲しいとかそういった事は脳にも心にも刻み込まれる。
昨日のぶつくさもそう。
このままだと死ぬ時に「やな人生だった」と思いそうだ。
良かった高座
悪かった高座ばかり覚えている。
逆に今までで一番良かった高座ってなんだろうか?
初めての勉強会?
二ツ目の披露目の初日?
いや、今年の9月18日。
台風が直撃した日。
デイサービスの利用者さん達の前での落語。
毎年一回のレクリエーション企画、今年は『落語』という事で、数ある噺家の中から何故か私に声がかかった。
100歳を超える方もお客さんとしていらっしゃるという事で正直「伝わるのか?」と思って白酒にも相談した。
「必ず勉強になるよ」
白酒も昔、そういった所へ行って落語をやったらしい。
師匠がそう言うなら……と大雨の中、バスに揺られて行く。
バスは満員で「台風が来てても皆何処かへ行かなくちゃいけないんだなぁ」なんて思った。
利用者さん達は送迎バスがあるとはいえたくさん集まってくれた。
持ち時間は一時間ということで【子ほめ】と【初天神】。
子ほめは15分、初天神は通しで25分、仲入り5分、残り15分はどこかで聞いたことあるマクラや、
下見に来た時に「クイズが脳に良い」と聞いていたので『小噺のサゲを答えるクイズ』をたくさん作って出題したりした。
落語を普段聴かない、身内ネタも通用しないお客さんの前での落語なので、こんなに準備した事はない。
落語の力
落語は凄い。
年齢の壁なんか超越して笑ってもらえる。
老若男女楽しめる。
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終演後、初めて100歳を超える方とお話しをした。
「面白かったわ。また来てね」
年齢を重ねた人は嘘やお世辞を言わない──ような気がする。
コレが師匠と呼ばれる人達にある落語の『説得力』というやつなんじゃないだろうか?
ありがたい。
また別の方は、
「今は足が悪くてどこにも行けないけれど、必ず歩けるようになってあなたのファンクラブに入るからね」
もちろんファンクラブなんてないが、世代的に「応援に行くわ」ということだろう。
ありがたい。
また別の方は、
「写真で見るよりカッコイイね」
それは嘘か。
まぁありがたい。
普段の落語会では、お客さんは諸々心得ているので会が終わるとサッと居なくなる。
落語家を不用意に褒めたりすると途端にダメになったりもするので皆滅多に褒めない。
しかし前座だった私は、やっぱり声をかけてもらえると嬉しかった。
死ぬ時に思い返されるのはそんな思い出ばかりがいいな。
35/40 新宿末廣亭 中日
【時そば】
この噺は苦手だ。
上手さを見せる噺という感じがするし、アレンジ力を競い合う噺という感じもする。
中途半端で挑むとケガをする。
で、ケガをした。