見出し画像

アニメ版ブルーアーカイブ感想(1~5話)

第6話以降の感想はこちら(https://note.com/tfeirin_note/n/nb97f2ee8c1ad

近頃私は前世のカルマというものを信じざるを得ない状況に迫られている。これまで私が首を長くして待っていた作品が悉く駄作で終わってしまっているからだ。艦これ、ニンジャスレイヤー、ゲッターロボアーク…この作品群にいよいよブルーアーカイブが加わりそうなのだ。一体どんな悪行を前世積めばこのような報いが降りるのだろうか。

さて、ブルーアーカイブといえば今や飛ぶ鳥落とす勢いで勢力を広げ続ける一大オタクIPだ。その無限に広がるキャラと世界観はかつての東方や艦これを彷彿とさせる「日常コンテンツ」の座に鎮座していると言って過言ではない。

これまでの日常コンテンツは視聴者が妄想に浸りやすいよう設定をあえてボカすのが常識であったが、ブルアカはこれと相反する明確かつ感動的なストーリーを両立することに成功した。かくしてブルアカのアニメ化が発表された時は「あの感動が映像で蘇る!」と期待されていたのだが、結果としてどんなに輝かしい思い出も語り方次第で陳腐になってしまうことに気付かされただけであった。

なお、本記事執筆当時はまだ5話までしか放送されていないが、今クールで欠点が直る見込みが無いので執筆することにした。

ブルーアーカイブとは

原作のブルーアーカイブ本編は章仕立てで語られるストーリーであり、今回アニメ化されたのはその最初の第1章「対策委員会編」だ。あらすじをざっくり言えば、砂漠の真ん中にある廃校寸前のアビドス学園で「先生」(プレイヤーの分身)と生徒たちが奮闘する…という話である。

この第1章自体は後章に比べて感動的なパンチラインこそ少ないが、女子高生が銃を振り回して日常と非日常を行き来するノリと勢いのギャグ作品として手堅く纏まっており、なかなか侮れない。しかし今回のアニメはその肝心のテンポを削いでしまったため、有名キャラが人気に胡座をかいてダラダラ井戸端会議する作品に成り下がってしまったわけである。

記念すべき第1話はAパートで世界観の(かなり説明的な)解説な入り、Bパートでならず者との殺陣がそつなく繰り広げられるという構成であった。この時点では少々嫌な予感はするものの要点は抑えてあったので悪くはないという印象だった。

その後新たな切り口でストーリーが展開すると期待していたが、実際にはしょーもないオリジナルシーンで日常パートを水増しするという雑な展開が続くだけとなってしまった。些細な戦闘シーンでも各話大トリにネジ込むという構成に拘るあまり、このような展開になってしまったと考えられる。

艦これアニメ開始時も同じような印象を受けたのだが、キャラがそこそこ動いて喋るという事象に感動できるのはほんの一時であり、それ以上のサプライズが無ければアニメの価値がどんどん下がっていくばかりである。

原作よりも冗長な尺

先に述べた第1話だが、これは原作ゲームではたった7分程度で終わるような出来事である。確かに初見の人に向けて世界観の解説は必要なので、多少尺が伸びるのは致し方ない。しかしそれ以前にDOHCエンジンだの機関銃リーゼントだの余計なシーンで遊ぶ暇があるならもっとやることがあったはずだ。

例えば生徒たちがならず者の処理に追われる姿を冒頭で描いて物語の問題提起をしたり、「先生」がサラリーマン金太郎よろしく掃除や徹夜作業に勤しんで不器用ながら誠意を尽くす姿を中盤に入れ込むなど、そういうことにリソースを割くべきだっただろう。
こういうシーンを映像の力を借りて僅かでも盛り込めば状況説明が一気にコンパクトになり、頑張れば第1話の内容を半分の尺に収めることができたはずだ。

一応擁護しておくと、Aパートがシロコの目線から始まるのはいい判断だったと言えよう。「先生」の人物像が明かされる前に、世界観の案内役として知名度のあるシロコを抜擢したのは理に叶った判断である。当初この演出を見て期待してしまったのだが、どうやら現状の展開を見る限りこの演出はスタッフの気まぐれだったと思わざるを得ない。

オープニングは文句なしの満点

本編と一転して、オープニングは手放しで賞賛し得る最高の出来と言えよう。繊細かつダイナミックなアニメーションは何度見ても息を飲んでしまうが、驚くべきはその物語構造だ。

未登場キャラの紹介を織り込みつつも、

5人で校舎を掃除してまわる生徒たち

迫り来る黒づくめの軍団

校舎で激戦を繰り広げるシロコ

…と僅か90秒の間に第1話でやるべきだった「問題提起と解決」がアレンジも混ぜつつ明確に描かれているのだ。

この中で特筆すべきは掃除するシーンだ。本編でも借金や廃校問題が口で語られているが、この掃除シーンではたった5人で学校を切り盛りすることの弊害や心労が具体的に描かれている。さらに掃除後に屋上でジュースを飲むシーンは清涼感に溢れており、突拍子のない世界でも我々と変わらぬ青春を謳歌していることが分かるわけだ。

他にもこの映像にはまだまだ隠れた要素がぎっしり詰め込まれており、繰り返し見る度に新たな発見があるはずだ。個人的には同じ時間で本編を見るよりもOPを10回見た方が遥かに有意義だとすら思っている。

透き通るような思い出も…

ここまでブルアカアニメを批判してきたが、実は今のところ致命的なキャラ崩壊やストーリーの改変といった問題は特に見受けられていないのが唯一の救いだろう。ただ、とにかく尺の冗長さで大きく損をしているのが残念でならない。同じシナリオを見ているはずなのに「あ、ここはこういう風に喋っていたのか!」という感慨がまったく無いのだ。
この結果を見る限り、鳴物入りで業界に参入したYostarピクチャーズの実力を疑わざるを得なくなってしまった。

友達が一生懸命楽しい思い出を語っているのにちっとも面白さが伝わらないことがあるだろう。それと同じことがこのアニメで起きているのだ。
私が原作で生徒たちと紡いだ思い出がまさか機内食のプレッツェルみたいにパサパサしたものに変貌するとは思ってもみなかった。友達にこのアニメだけ見せて「ブルアカはここから面白くなるから最後まで見てね!あと4クールくらい!」と言っても残念ながら頷くことはないだろう。

もしブルアカに興味を持っているのなら、まずはアニメではなく原作のプレイ動画を見ることを強く推奨する。アニメより短い時間で「原液」に触れられるならそれに越したことは無いはずだ。
そしてもしあなたが友達にブルアカを布教する場合も、ポテチとコーラとHDMI変換器を携え、スマホで下記の動画をテレビで流してやるのが現状の最適解と言えよう。

いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集