2023年のまとめ(ゲーム編)
今年遊んだゲームの中から「これぞ」と思ったものを順不同でピックアップした。上半期はピンとくるゲームが無かったが下半期に買ったゲームはどれも傑作と呼ぶにふさわしいものばかりだった。
なお、解説文の長さ=作品の良さではないので悪しからず。
バイオハザードRE4
バイオハザード「2」「3」のリメイクは全世界が待ち望んでいたものだ。あのストーリーがハイエンドなグラフィックになって帰ってくる・・・。
ところが続くバイオハザード4の「RE」版は不安を覚えた人も多かっただろう。何しろオリジナル版「4」の時点で映画に肉薄するグラフィックを誇っておりジャギーだらけのPS時代と違って見たままの景色を受け入れていたからだ。少なくとも俺はそれを「あなたたちが見ていたのはフィルター越しの偽者です!こっちが本物!」と頭ごなしに否定されるのを恐れていた。
しかしその心配もOP直後のおなじみのフラメンコが流れた瞬間にすべて消えた。嗚呼、昔の記憶を優しく包容されているのだと温もりを感じた。そんなノスタルジーもつかの間、レオンがたどり着いたのは無印版の乾いた山道とは真逆の、ジメッとした薄暗い森の中だった。新しい冒険を予感させる一場面だった。
今回のRE4は全体的にトーンが低めであり、古き良きB級臭のある無印版と違って真面目にホラー作品として「4」の世界と向き合っている。
ノーマルの時点でリソース管理を求められる厳しい状況が続き、雑魚の村人たちも強化されているので一筋縄でいかない。リメイク前の面影ある舞台で何発撃っても死ぬ気配がない敵を相手取るという絶妙なバランスは、初めてバイオ4を手に取った時の手応えを思い出させる。背中を焦がすような死の恐怖をジリジリ感じながら突き進む、まさしく純然たるサバイバルホラーに蘇ったといって差し支えない。
そんな緊張続きの戦闘ばかりの本作だが要所要所で癒やし要素が上手く挿入されている。無印版からいる武器商人はキャラが掘り下げられており、クスリと笑える小ネタがいくつか盛り込まれている。また、ストーリー自体もシリアス調でありながらレオンとアシュリーの関係がより一層クローズアップされているので彼らのノロケもリラックスの一助となってくれる。
同じく今年発売されたリメイク版デッドスペースは終始一切の冗談抜きで閉鎖空間のストレスで満たされていたので、個人的に最後までメリハリよく遊べたこのRE4に軍配が上がる。そこはさすがカプコンの大阪センスと言うべきか。
残念ながら今作RE4はゲーム・オブ・ザ・イヤーから落選してしまったが、バイオシリーズは今確実に無印版4と同等以上の黄金期を迎えている。
ちなみに日本語版でもMODを使用すれば海外版同様の暴力表現でプレイできる。もし海外鍵版を買おうか検討しているなら一度チェックしてほしい。
余談だが最近、本作のPS5限定でVR版が配信開始されたようだ。Quest版マーセナリーズの元ランカーとしていつか挑戦してみたいところだ。
ストリートファイター6
今年カプコンは2つの黄金期を一度に再現した。一つはバイオRE4で無印バイオ4の黄金期を、もう一つはこのスト6で「2」以上の絶頂期を呼び寄せた。
その証拠にTwitchの配信数ランキングでは一時期Apexを抜いて1位に躍り出たことがある。コアなマニアしかプレイしないと言われていた格闘ゲームが今やホグワーツなどと並ぶお祭りゲーの仲間入りを果たしたのだ。
ドライブインパクトがシンプルで奥が深く配信映えするからだろうか?それだけではない。今回の一番の目玉はワールドツアーモードにあると睨んでいる。
ワールドツアーは格闘ゲームとRPGを合わせた一人用モードだ。とはいっても「格ゲー×RPG」の図式はPS1時代に何度か試みられてきたが本作は圧倒的な予算と労力をもって制作された長大なサクセスストーリーなのである。
舞台の中心はNYみたいな雰囲気のメトロシティ。ファイナルファイトでハガー市長が器物損壊して回ったあの場所だ。この街ではSTREET FIGHTこそが文化であり礼儀作法でもあり、そんな街でお前は頂点を目指すことになる。道行くNPCの半分くらいは話しかければ快く決闘に応じてくれる。拳を握れば誰でも主役になれる・・・・あの無印スト2がOPで描かれていた世界が今まさに現実となったのだ・・・・!
だが主役は一人で十分だ。自分こそが主役だと思い上がっている有象無象どもを□連打で思い知らせてやれ。今作から追加された「モダン操作」はボタン連打でコンボが繋がるのでややこしいトレーニングをすっ飛ばしてすぐに路地裏ファイトに身を投じられるという図式だ。しかもこれは初心者専用の補助輪ではなく実戦投入を考慮された文字通り「新時代操作」なのだ。
まるでアクションゲームでもやっているようにビシバシと攻撃がヒットするのは純粋に気持ちがいいし、RPGらしく相応の報酬と経験値を貰えるので十分な成功体験を味わえる。しかもこの世界は徹底して「ストリートファイト=文化」というルールを守っているので行く先々で我々の常識を超えた何かが起きるのを常に期待しながら冒険することができる。
もちろんレベルが上がればNPCも小賢しい真似をしてくるようになる。ガードがウザい?なら投げ技でその襟首を掴め。チンピラの群れがウザい?ならドライブインパクトで纏めて吹っ飛ばせ。そうして必要に応じて細かいルールを覚えていき、ゲーム内でもリアルでもお前の経験値が積み重なってゆくという上手い図式になっている。
ハッキリ言ってワールドツアーだけでも20時間弱遊べるのでここで終わっても全然問題ないのだが、ここまで来たならばさらなる拳の手応えとジリジリした駆け引きを身体が求めていることだろう。次に向かう場所は分かっているはずだ。そう、オンラインロビーだ。
コンボだのキャンセルだの複雑化した末に20年以上硬直していた格ゲーの殻を打ち砕いたのは他ならぬ、敵をブチのめすという純粋なグーパンチの感触に他ならなかった。
アーマードコア6
まず俺はフロム・ソフトウェアのスタッフに感謝の意を述べたい。THANK YOU…
ミッションと所持金とにらめっこしながら機体をアセンブルし、華麗に足場を跳び回って火線をかいくぐり、MTどもを鉄屑に変えていく。そういうACの真髄といえるカタルシスをマンネリ化させず味わわせてくれるスタッフの技量は頭が上がらない。スタッガーシステムや近接戦中心のバランスのお陰で雑魚MTが火を吹いて崩れ去る様を見れるようになったが、鋼鉄がひしゃげるようなヒット音もまたいい仕事をしている。
しかも本作はフロムがソウルシリーズで磨いてきた手強いボスたちが待ち受けている。過去作「fA」のアームズフォートみたく図体ばかり立派でパイルバンカー一発で沈むような連中ではない。限られたラインナップと予算でじっくり戦略を組み立て、奴らの裏を掻いてやれ。
だがはじめは上手く行かない。何しろ本作から両手両肩の武器を同時使用できるようになったため4つの武器をフルに使わなければ勝ち目はない。これまで死線を掻い潜ってきた猛者たちも前情報を頼りに必死でイメージトレーニングしただろうが、いざ実践となるとその情報量の多さでニューロンが焼かれて死んでいった。
しかしそれを乗り越えて操作をマスターすれば淀みなくミサイルで翻弄しながらライフルの鉛玉を叩き込むという爽快感が病みつきになる。しかもターゲットアシスト時の挙動が非常にカッコいいのでさながら戦場を駆ける死神のような気分になれる。こうした複雑な操作を超えた先の万能感というACの醍醐味も伝統と革新をもって守られていた。
そういうわけでこのAC6の体験は濃密であり、想定プレイ時間の50時間はあっという間に過ぎ去ってしまった。
これは完全に余談だが、俺は発売日に有給を取って他プレイヤーと同時刻によーいドンで始めたわけだが、自分が躓いた時にTwitterを開いてみると同時期のトレンドが同じボスの名前で染まるという現象に何度か直面した(しかもおすすめ欄ではなくランキングでだ!)。これには得も言われぬ一体感があったし、一生の内でなかなかできない経験となった。
10年越しのロボゲー王者の帰還は「ロボットは身近じゃないので共感しませんよ!」だの「最近の若者には草食系主人公じゃないとウケませんよ!」などというスカムじみた評論がすべて偽であることを証明してくれた。そしてこの先ロボゲーはこのAC6を礎にすることだろう。
Hi-Fi RUSH
「最近PvPで勝てなくてムカつく・・・・一人用ゲームも作業ゲーばかり・・・・・俺は何のためにゲームをやってるんだ?子供の頃のゲームはもっと純粋で娯楽という概念を固めた存在だったのに・・・・・」
そういう人に絶対勧めたいのがこの「Hi-Fi RUSH」だ。「是非」ではなく「絶対」だ。これだけ強い言葉を使えるほどにこのゲームには純粋なエンターテイメントが満ちている。
本作を一言で表すなら「リズムゲー×DMC」だ。もっと言えば「DMC系のシステムにスペースチャンネル5とリズム天国のノリをミキサーにブチ込んで出てきたカンフル剤」と言ったほうが正確かもしれない。
このゲームの物事はすべてご機嫌なロックンロールBGMに同期している。周囲の背景も、UIも、そして攻撃モーションもだ。無理にリズムに乗らずとも攻撃は出るが、どれだけ予備入力に頼った連打をしても必ず攻撃モーションは曲に合わせて出てくる。ならいっそ曲に合わせてポンポンと押してリズムに乗るのが得策だ。本作のリズム判定はだいぶ緩いのでそれとなくノッているだけで「PERFECT!」と褒めてくれるぞ。
敵の攻撃もリズムに乗ってくるのでパリィが苦手な俺でも簡単にジャストガードが出来てしまう。リズムに身を委ねて攻撃するだけで多彩な技が出るし、なによりBGMも演出も最高にクールで全体のトーンマナーもビビッドに染まっているのでニューロンに直接ビリビリ刺激が来るはずだ。
マップも程よく探索心をくすぐる設計となっており、カッコいいアクションの片手間に隠しアイテムを探すという絶妙な配置は、少年期に遊んだ傑作「ソニックアドベンチャー2」を彷彿とさせる。
その上ノーマルなら大体の場合戦闘のリザルトではほぼ毎回A以上でお前を褒めてくれる。上手くやればSランクも夢ではない。もしSランクまで届かないならば仲間キャラとのジャムセッションでビートを支配しろ。それでもSランクに届かないならばコンボゲージ効率化のアイテムを使えばエンディングまでゲームのすべてがお前をベタ褒めしてくれるぞ。
ストーリーもゲームと同様テンポよくギャグがポンポン出てくるので終始退屈させないハイテンションなノリだが意外にもミュージカルめいたクサい場面は殆ど無い。むしろブラック企業が話のモチーフなだけにどこかサバサバした雰囲気が漂っており要所要所のジョークにも不思議なリアルさが伴っている。
特に主人公のチャイは一見おバカでアツい王道主人公に見えるが、ああ見えて実は大学中退した25歳のいい大人だという設定を知るとかなり「クる」ものがある。
とにかくそうしたノリとリアリティがハイレベルで調合されているのでプレイしながらカラッとした気分になれることは請け合いだ。
本作は年末に軽い気持ちでプレイし始めたものだったが思いもよらず滑り込みで今年のトップゲームに躍り出た。ゲームの楽しみに飢えているならこのHi-Fiをキメて童心にトリップしよう。
・8番出口
バイオRE4の恐怖はアドレナリンのたぎる「熱い恐怖」だ。一方でこの8番出口は背筋がゾッと冷える「冷たい恐怖」だ。
ルールは簡単で、無限ループする地下通路の中で起きる「異変」を見つけたら引き返すという間違い探し的なものだ。そうでなければ突き進む。これを8回正解すれば本物の出口に出られるというものだ。
俺はホラー作品であまり恐怖を感じる人間ではないが、そんな俺の背筋を見事に凍らせてくれた本作には今年のベストゲームに仲間入りさせたい。窓が一つもない閉鎖空間、無音な空間に突如ポツリと響くかすかな音、そして何者かがじっと見つめてくる視線――そこには人間が死の恐怖とは別に感じる根源的な恐怖が宿っている。
そうした雰囲気作りがアンリアルエンジン5を使って見事に成功しており、なにもキアヌリーブスを出さずとも個人でここまで迫真の体験を演出できるというUE5の実力も広く知らしめてくれた(UE5をいじっている人間として嬉しい限りだ)。
本作はボリュームのミニマルさ故ネタバレしやすいのでこれ以上語れないのだがワンコインで買えるので興味があれば是非プレイしてほしい。
終わりに
以上で今年のゲームピックアップを終える。見ていただいたとおり、その全てが国産のゲームだ。
まずカプコンのバイオRE4とスト6の躍進は非常に目覚ましく「日本ゲームここに在り」ということを再び世界に知らしめてくれた。10年前に世界がソシャゲーに覆い尽くすと恐怖していたのがまるで嘘のように思えてしまう。
また、ゲームから少し逸れるが「サイバーパンク エッジランナーズ」が日清のカップヌードルとコラボしたとにも触れておきたい。いくらアニメ版名義とはいえ不健全で社会悪のZ指定ゲームがお茶の間のCMとして流れたのだ。これは歴史的快挙と言えよう。
アメリカではモンエナみたいなドリンクがCoDやHALOとコラボするのは日常茶飯事だが、日本もマッチョな洋ゲーの大々的コラボが当たり前になるのは時間の問題だろう。
そしてなによりもアーマードコアの復活は正月の10倍くらい待ち遠しく、指折りその日を待っていたものだ。今日ようやくリアル正月を迎えようとしているが振り返るとやはりAC6の発売の方がウズウズしていた。
「闘争ネタを擦ってた奴は全員買えよ!」とマジなのか冗談なのか分からないツイートも一時期出回ったが今回のACはそれを遥かに上回る売上と評価を残してくれた。
争いの絶えない昨今の世界情勢だが、ゆっくりだが着実に星の巡りが正しくなっているのはAC6の売上を見れば明らかだ。人類アセンションの時は近づいている。備えよう。
気が向いたら映画のまとめ等も作るかもしれません。