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【研究紹介】糖尿病予防における睡眠の重要性
久しぶりに他の研究室の紹介を勝手にしちゃおうのコーナーをしようと思います!(3年ぶり2回目???)
今回紹介するのは、同じ富山大学薬学部の病態制御薬理学研究室です。主に糖尿病と脳の関連について研究しています。
早速ですが、私の知識も交えながら解説していきます!
参考文献
「糖尿病防止のための睡眠と嗅覚の役割」
ファルマシア Vol. 59 No.10 2023
1. そもそもヒトは太りやすい宿命にある
研究のお話に入る前に少し…
世の中の多くは「糖尿病」と聞くと「太っている人」と変換してしまいがちだと思います。必ずしもそうではありませんが、やはり太っていると「だらしない」イメージを持つのは確かだと思います。
ですが、ある種これは仕方のないことなのです。なぜなら、ヒトには血糖値を上昇させるホルモンは多数存在しますが、血糖値を低下させるホルモンは一つしかないからです。それがインスリンです。
なぜ一つなのかというと、それはヒトも野生動物の一つにすぎないからです。太古の時代、ヒトは他の動物同様狩りによって食料を確保していましたね。するともちろん狩りが上手く日もあればそうでない日もあります。むしろ上手くいかない日の方が多いでしょう。そうした場合、仮に食べられなくても血糖値を維持できるようにするカラダの働きが必要になってくるわけです。逆に言えば、腹いっぱい食べられることも中々ないので血糖値を下げる必要もなかったわけです。これがインスリンしか存在しない理由として考えられていることです。
もうお分かりかと思いますが、我々のカラダは現代のようにたくさん食事をとることを考慮していません。ですので、ヒトは太りやすい宿命にあるのです。
2. 現在の2型糖尿病の治療戦略
インスリンは1921年に発見され(ノーベル賞も受賞)、以来糖尿病の薬物治療の中心を担ってきました。インスリン分泌促進薬、インスリン抵抗性(太ることによりインスリンの効き目が悪くなっていくこと)改善薬などの末梢組織を標的にした治療ですね。しかしながら、未だに糖尿病人口の世界的な増加に歯止めをかけることはできていません。
そんな中、近年注目されてきたのが糖尿病と脳の関係です。
血糖値の恒常性を維持するにはインスリンと脳・自律神経系の協働が重要であることが知られています。さらにすごいことは、一方が不調になってももう一方がカバーすることで恒常性を保つことにある。つまり、インスリン調節系が不調でも脳・自律神経系がカバーするし、その逆もしかりなのです。
著者らはそれをハイブリッド調節機構と名付け、その観点から、特に睡眠に着目し、糖尿病予防の研究を行っています。
3. 睡眠・覚醒と糖代謝
睡眠と言えば、体内時計のリズムを司るホルモンであるオレキシンが思い浮かびます。脳内のオレキシンは睡眠を抑制して覚醒を維持する作用があります。
糖尿病患者ではしばしば睡眠障害を併発するため、著者らはまず睡眠障害の改善が糖尿病の病態を改善できるのかを明らかにした。睡眠障害が出ている糖尿病モデルマウスに、オレキシン系を抑制する薬を睡眠開始時に投与した。すると、もちろん睡眠障害は改善されたが、驚くべきことに薬を長期的に投与することで糖尿病マウスの耐糖能(=糖の代謝能力。糖尿病ではインスリン抵抗性が出ることで耐糖能が低下する)も改善したのだ。
さらに面白いのが、この薬を覚醒開始時に投与し体内時計をかく乱した場合は耐糖能の改善はみられなかった。また、他のオレキシン系に関係ない睡眠薬では耐糖能の改善は見られなかった。
ここで抑えたいのが、オレキシンが常に糖代謝に悪影響を及ぼしているわけではないことだ。あくまでも睡眠時にオレキシンが睡眠障害・耐糖能の低下に寄与しているだけであり、覚醒時においてはオレキシンも糖尿病の予防に寄与することが知られています。
つまり何が言いたいのかと言うと、オレキシン系の調節によって睡眠・覚醒リズムを調節することによって、糖尿病における耐糖能低下を改善できるわけです。
4. まとめ
このように、脳・自律神経系とインスリンが協働して血糖値の恒常性の維持に役割を果たしていることが示されました。本研究では、薬による介入を行っていますが、本質は生活習慣の向上です。一般に言われる「健康増進のための規則正しい生活」はオレキシンの作用を向上させるためのもので、やはりそれが一番の糖尿病予防であることに間違いないのでしょう。だからと言って食べ過ぎがよくないことに変わりはないですけどね(笑)
【研究紹介】の第1回はコチラ↓
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