「スマート新書」を覚えていますか?
「スマート新書」という新書レーベルがあった
「ほぼ日ブックス」について考えていて、そういえば「スマート新書」というのもあったけれど、刊行が途絶えたなと思いあたりました。
スマート新書は”手のひらにおさまる教養”をコンセプトにした、スマートフォンサイズの新書のシリーズ。ページ数は100ページ前後で、価格は550円(一部は715円)。
なんで「スマート新書」は続かなかったのか。
(1)コンテンツビジネスの終了
ピースオブケイク/note(株)の沿革をたどると、スマート新書とcakesを2022年の同時期に終了させています(noteの沿革には更新終了や休刊は載っていませんが)。
おそらく2022年に、コンテンツビジネスから、メディアプラットフォームに切り替えたことが推測されます。
会社としてコンテンツを考えて発信するよりは、noteというプラットフォームにコンテンツを集める方が効率良いのでしょう。
YouTubeの文章版といえばいいのでしょうか。
(2)情報量が少なかった
スマート新書の(現時点での)最新刊「楽しくはじめて、続けるための 自炊入門」は112ページで550円。
最近の新書でいうと、「ハリウッド映画の終焉」(集英社新書)は240ページで1,056円、「なぜ働いていると本が読めなくなるのか」(集英社新書)は288ページで1,100円。
両者を比較すると、スマート新書が割高だったわけではありません。
推測するに、100ページくらいの情報量ならスマホで事足りて、わざわざ本として買うなら1,000円出してでも200ページの情報量を求めているということでしょう。
(3)書店で売らなかった
スマート新書は販売場所を自社のサイト(現在は閉鎖)と、Amazonでの販売に限定していました。
Amazonが巨大であるとはいえ、Amazonに出せば売れるわけではありません。Amazonには話題になったものを加速させる力はありますが、着火させるのは書店でたまたま見つけた誰かか、発売することを楽しみにしていた誰かなのです。
自社のサイトでの販売告知だけでは、そもそもの分母が小さくなってしまいます。
スマート新書と「文具」の撤退
スマート新書にはスマート新書の狙いがあったけれど、継続できるほどには資金が回らなかったため22冊で撤退を選んだのでしょう。
スマート新書は廃刊も休刊もアナウンスされず、ただただ刊行が停止しているだけで、撤退はしていないのかもしれません。
あくまで、開示されている情報から私が推測したことです。
スマート新書の創刊にあわせて、3種類の文具「cakesの手帳」「noteのノート」「自分への取材手帳」も発売されました。
「自分への取材手帳」は創刊ラインナップの一冊「自分への取材が人生を変える」(はあちゅう)から派生しています。
文具は初回のラインナップの色違いが発売されることもありませんでした。
ノートの市場は大きいから、2017年の時点でも膨大な種類が発売されています。
加えて、文具市場は薄利多売だから、3種類だけで収益化できるほど甘い業界ではないのだと知らされました。
このことも、開示されている情報から私が推測したことです。
スマート新書は刊行告知を追っていたし、「noteのノート」も買ったから、惜別を込めて綴り、noteに載せることにしました。
ピースオブケイク/note(株)の沿革(抜粋)
2011年 12月 8日 ピースオブケイク創業
2012年 9月11日 コンテンツ配信サイトcakesを開始
2014年 4月 7日 メディアプラットフォームnoteを開始
2017年 12月 6日 スマート新書レーベルを開始
2020年 4月 7日 note株式会社へ社名変更
2022年 5月23日 スマート新書の(現時点での)最新刊(22冊目)発売
2022年 8月31日 cakesがサービスを終了
スマート新書(全22冊)
01「お金に困らない人生を送るための マネープラン入門」(竹川美奈子)
02「みんなが書き手になる時代の あたらしい文章入門」(古賀史健)
03「知識ゼロからの 人工知能入門」(清水亮)
04「自分への取材が人生を変える」(はあちゅう)
05「仕事力をアップする はじめての「フロー」入門」(石川善樹、西本真寛)
06「いい会社を見極める 株式投資入門」(藤野英人)
07「「わかってる人」がみんなやっている 投資信託の使いかた」(竹川美奈子)
08「これだけは知っておきたい 必要最小限のワイン入門」(葉山考太郎)
09「必ず貯められる 大人のための貯金入門」(横山光昭)
10「大人の教養としての アート入門」(山内宏泰)
11「決算資料からビジネスの仕組みが見えてくる」(シバタナオキ)
12「忙しい現代人のための 手軽でおいしいスープ入門」(有賀薫)
13「意外と知らない 赤ちゃんのきもち」(臼井隆志)
14「読むだけでおもしろさがわかる 大人のための囲碁入門」(大橋拓文)
15「おいしさの「仕組み」がわかる 料理のキホン」(樋口直哉)
16「99%抜ける ドリブル理論入門」(岡部将和)
17「ビジネスの仕組みがわかる 図解のつくりかた」(沖山誠)
18「ゼロからはじめる 大人のための将棋入門」(遠山雄亮)
19「人の心を動かす ストーリーの作りかた入門」(たちばなやすひと)
20「社内外を味方につける コミュニケーション入門」(五百田達成)
21「コロナ時代に知っておきたい 免疫入門」(新妻耕太)
22「楽しくはじめて、続けるための 自炊入門」(山口祐加)