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#62 『自然資源』の課金方法

2024年5月某日

松島に来た。旅行である。「日本三景」として知られる松島は、宮城県東部の沿岸部に位置し、松の木が生い茂った、多くの小さい島々が海に浮かぶ独特な景観を形成している。古くは、伊達政宗がどこかの島で宴を楽しんだり、松尾芭蕉が俳句を読んだりと、いろいろと歴史的なストーリーを有しているエリアであると言える。

松島での一枚。海に浮かぶ盆栽のようである。

さて、そんな松島であるが、現在は観光産業を中心に、地域の経済活動が行われている。飲食店、土産物店はもちろん、島々を巡る遊覧船も主要コンテンツの一部として運営されていた。筆者も、非日常的な空間で、大変素敵な時間を過ごすことができた。

しかし、である。地域経営の文脈で考えてみると、筆者の観光体験は、あまりに「コスパが高い」印象である。つまり、支出した金額よりも高い価値を享受したと感じているということである。これは、一見すると良いことのようにも受け止められるが、伝えたいことは、要するに「あまりお金を使わずとも、満喫できてしまった」ということである。実際、数百円の交通費で松島に訪れ、2,000円程度の遊覧船チケット購入して1時間以上を過ごし、2,000~3,000円程度のアルコール込みの食事と、趣味で集めている、500円のご当地マグネットを買って帰る。あまりに、安い。なお、念の為だが、筆者がとりわけ「せこい」わけではない(と信じたい)。



このように、「絶景」「秘境」といった、素晴らしい自然資源を保有している地域は、その資源を活かして「どのように課金するか」という点で、共通する課題を抱えているようにも感じる。地域の中に、キャッシュポイントとして、宿泊スポット、飲食スポット、駐車場、自動販売機などを散りばめるわけだが、プラスアルファの施策を検討することが、今後の議論として必要だと思う。

方向性のヒントとして、アクティビティの充実などがある。無形のサービスとしてオリジナルなコンテンツとすることで、プライシングの面で自由が効きやすい。要するに、「他所と比べて高い/安い」といった議論に巻き込まれなくて済むということである。さらに一歩進んで、筆者のアイデアとしては「プロセスを現金化する」という視点である。具体的には、目的地に到着するまでの、「特別な移動手段(+教育体験)」をコンテンツ化するとか、目的地を「周遊する手段」をコンテンツ化するとかいう視点である。「周遊する手段」としては、かつては「人力車」などが課金方法だったが、現代では「電動キックボード」みたいな選択肢が登場している。

個人的には、「人力車」と「電動キックボード」では、コンテンツ量が全くことなると感じており、便利な移動手段としての「電動キックボード」よりも、リッチコンテンツとしての「人力車」的なアプローチを推している。

令和における観光戦略として、「絶景」「秘境」に如何に課金するか。その秘めたる可能性について、引き続き考えていきたいものである。
ほなら。

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