「つくばブルワリー」のカウンターの足置きには、ちょっとだけ意味がある。
それは2020年7月の日曜日。
1ヶ月前にオープンしたつくばブルワリー開店のお祝いを兼ねて、仲間と一緒にビールを飲みに行きました。そして私たちが製作と現場設置を担当したハイカウンター下の「足置き」に、遂に自らの足を置いたのです。
写真からもわかるとおり、つくばブルワリーはガラス越しに醸造設備を眺めながら個性豊かなクラフトビールを堪能できる、つくば市初のビール醸造所です。お店の所在地はつくばで最も有名な公園「洞峰公園」の近く、というかすぐ目の前にあります。
つくばブルワリー
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つくばブルワリー代表の延時さんはつくば市を拠点に映像制作を行う会社の経営者。元々は水戸市出身の延時さんですが、つくばに住みつくばで仕事をしていく中で次第につくば市に魅力を感じるようになり、「もっとこの地域に貢献できるような事業に挑戦したい」と考えるようになったそうです。
そこで延時さんが辿り着いたのがビール。
「ワインや日本酒はつくばでも作られているけど、つくばの地ビールはまだなかった。美味しいビールがあれば人が集う場所ができるしみんなが笑顔になる。つくばのPRにも繋がるはず。」
これまでつくばを中心に結婚式場での映像撮影の仕事にも携わってきた延時さん、人の笑顔や喜びにフォーカスが当たってるところが素敵です。
忙しい本業の傍ら時間を作ってはクラフトビール製造の勉強に足しげく通いビール造りのいろはを習得。そして2020年6月に念願のつくばブルワリーをオープンしました。
つくばブルワリーの店内はまるでニューヨークにいるかようなオシャレな空間。特に注目すべきはカウンター天板で、茨城県産のクスノキの無垢材をゴージャスに配置しています。ちなみにこの天板を手配したのは、私たちNisseiも参加している異業種連携のオーダー家具ブランド「mills ends」プロデューサーの筑波洋海君(筑波材木店)です。
醸造されるビールはその時期によってバリエーションも様々。ここ最近のオススメは、筑波山の中腹で採れる「福来(ふくれ)みかん」を使用し爽やかな香りが楽しめるセゾンビールや、
鼻から抜けていくホップの香りと心地良い甘さが特徴のつくばブルワリー初のヘイジーIPA「嬥歌(かがい)」です。
もちろんビールの御供にピッタリのソーセージもこだわりの逸品。稲敷市の「松かたシャルキュトリー」さんがプロデュースする絶品ソーセージです。
さて、ここでようやく足置きの話です。
先程ご紹介したようなクラフトビールやソーセージ、そして無垢のクスノキ天板など、自然の恵みとナイスなビジュアルを兼ね備えた主役級のアイテムとは違って、足置きはあくまでもお店の中ではもサブ的な脇役として存在するプロダクトではありますが、カウンターのスツールに腰を掛けた時に違和感なくリラックスして足を置くことができる足置きは、お客様に美味しいビールを楽しんで頂くために欠かせない大事な構成要素だと思います。
カウンター下の足置きにこだわりを持つ人はあまり多くないのかも知れませんが、今回足置きの製作依頼を受けてみて分かったことの一つに、「世間一般に売られている規格品の足置きには、あまりイケてるものがない」ということでした。もしお時間があるようでしたら「カウンター 足置き」などのワードで検索して頂ければ、きっと皆さんにも共感して頂けると思います。
通常、飲食店さんでよく見かける足置きはこういうタイプが一般的です。
コレが意外と高いんですね。1個5000~6000円ぐらいします。
そして大体のものが床面と壁面の2点で固定するL字型の形状をしていますね。しかし、今回私たちが製作した足置きはL字タイプではありません。
L字にしなかったのには理由があります。
つくばブルワリーさんのカウンター下の壁は軽量ブロックでした。この軽量ブロックに穴を開け足置きを固定するのは、正直あまり望ましくありませんでした。施工の専門業者さんであればノウハウを持っているのでしょうが、現場施工が本業ではない自分の感覚でいくと、軽量ブロックは素材自体が脆いので使用するビスの選定も注意が必要だし、壁や床に固定する際にはメインのパイプを避けた位置からのビス打ちとなるため、ビットの差し込み角度が斜めになってしまう。そうするとユニバーサルジョイント等を使う前提で足置きの設計を考える必要がある、、、
施工業者さんからすれば「いや、それ普通でしょ」と言われてしまうかも知れませんが、経験の未熟な私からすれば「もっとシンプルでイージーな施工にならないものか」と思ったわけです。慣れてもいない施工をして壁に変な穴や割れを作ってしまったら、オーナーの延時さんから一生恨まれるに違いない。恨まれるどころかビールの原料にされてしまう可能性だってある。
「ジーザス!!」
もう床だけで固定できるようにしよう。絶対それがいい。何よりまずは身の安全が第一。そう決心してから床面だけで完結する足置きの設計に取り掛かりました。
発想は至ってシンプルです。イメージは工事現場の「単管バリケード」。
当初パイプを支えるための受け金具は、トップを半円状のラウンド型にしようかと思いました。しかしコスト面で全くメリットが出せないので諦め、代わりにニューヨークの地下鉄っぽい斜めのカットラインをモチーフにして何度もバランスを取り直し今の形状に落ち着きました。
NYの地下鉄車両(川崎重工製)Wikipediaより
EmperorOfNYC - 投稿者自身による作品, CC 表示-継承 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=78378490による
また、足を置くパイプは建設現場で使用される足場用単管パイプの径48.6㎜に合わせて受け金具は設計されています。というのも、この足置きは受け金具のみの販売で、パイプはお客様ご自身でご用意して頂くように設定させて頂いています。理由はこちらでパイプをご用意しても送料が高くついてしまうだけでお客様に何のメリットもご提供できないからです。お近くのホームセンター等で必要寸法をご購入の上、必要に応じて塗装などをして頂ければと思います。(ちなみに受け金具は黒つや消し仕上げです。)
(2022年8月追記)
商品設計を変更し、現在は金具とパイプをセットにして販売しております。
また、床に固定するビスについてもお客様(あるいは施工業者様)でご用意頂くことになります。施工される場所の床の材質によって必要なビスの種類が違いますので、よくご確認の上で設置して頂ければと思います。もしご不明な点がございましたらお気軽にお問合せください。
という訳で、今日はつくばブルワリー様からのご依頼で製作させて頂いた足置きのお話でした。床だけで固定可能な足置きが誕生したきっかけは、
しくじると延時さんにビールの原料にされてしまうことを恐れた僕の保身術
が理由だったことを皆さんにお伝えできれば僕は本望です(笑)
ちなみに。
実はつくばブルワリーさんとは、もう一つコラボ商品を展開しています。それがこちらのアクセサリー。
これは弊社のオリジナルプロダクト「Metal Tag Mt. Tsukuba」の「つくばブルワリー別注品」です。ドッグタグのようなアクセサリーなんですが、ステンレス板を折り曲げることで筑波山のシルエットを表現してみました。そして山影から覗くのはつくばブルワリーさんのマスコットキャラクター「ペブルス君」です。
つくば愛を感じるこのタグ、つくばブルワリーさんの店頭でしか買えない商品となっていますので、是非お店でチェックして頂けたら嬉しいです。
最後までお読み頂きありがとうございました。今回の担当は"Texture" ディレクターの青木でした。
<商品開発/撮影協力;つくばブルワリー>
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つくばブルワリー