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「感覚を大事にする」と「生きやすくなる」

五感(視覚、嗅覚、聴覚、味覚、触覚)=感覚は五つである、と定義したのはギリシャ時代の哲学者アリストテレスだ。現在ではこの5つの感覚は「古典的な五感」などと呼ばれている。

現在は、感覚系の種類は大きく以下の6つに分類されていて、それぞれの系が受け取る刺激の種類は多岐に渡ることがわかっている。(カッコ内はそれぞれが感知する刺激の種類だ。)

視覚系(光(光子))
聴覚系(音(圧力波))
前庭感覚系(重力、加速度、頭部運動)
体性感覚系 *外受容・内受容*(皮膚変形、運動、筋の長さ、筋力、関節角度、温度、機械刺激、化学的刺激、ヒスタミン)
味覚系(化学物質)
嗅覚系(におい物質)

人間はこの全ての感覚を脳で統合し、それを頼りに周囲の環境と自分との関係性を判断して、生きている。そして、感覚が脳で統合される段階でその交わりには「個性」が生まれる。また、体調のような日々変化する要素もそこに関わってくる。

周囲を「感じて」それに「どう動くか」が、生きること、なのだ。
だから、自分の「感覚」とはどういうものなのか、じっくり付き合って理解することが「より生きやすくなる」ということと繋がりやすい。


さて、では、自分が「何を感じて生きているか」に、耳を澄ましたことはあるだろうか。




実際のところ、感覚は無意識に脳に信号を送り続けているので、それに意識を向けなくても身体は感覚に反応して動くようにできている。

例えば、気温が低く体温が保てないと中枢神経が判断すれば、ガタガタと震える。ガタガタと震えるのは、筋肉の収縮が全身で熱を効率よく生み出すことのできる唯一の仕組みだからだ。
けれども、真冬にアングロサクソン系の血を引く観光客が半袖短パンで歩いているのを見かけるように、また隣の夫が自分の包まる羽毛布団を暑いと言って薄がけで十分スヤスヤ寝ているように、身体組成によって(寒さについてはその多くが筋の量によって)、温度に対する反応というのは全く違うことを経験したことがあるだろう。

また、例えば、船に乗ってトイレに入ると酔う。これは、乗船しているその船ごと身体が揺れていることで、視覚的に壁に対して自分は揺れていないにも関わらず現実的には揺れの加速度を感じる感覚が働いているという、感覚情報のズレを脳が処理しきれないことによって生まれる「混乱」だ。
だから、遠くの動かない島を視界に入れて船自体が揺れていることを脳に認識させるだけで、ある程度酔いは治る。(急激な揺れの繰り返しそのものが過剰な情報として処理しきれず酔っている場合は治らない。)


このような「寒さ対応」や「乗り物酔い」など、身体は勝手に感覚に対応している。そして、「人と自分は全然違うな」と、経験として痛いほどわかっていても、わたしたちは「今日は摂氏10度だから上着を着た方がいい」「船は酔うから酔い止めを飲んだ方がいい」と、自分以外の人間に対して、勧める。

きっと「みんなおんなじ感じだろう」と、ある程度思い込んでいるのだろう。そしてもし全員が同じ感覚で同じ反応をしてくれたら、社会はなかなかスムーズに動くだろう、とも思う。

でもそれは人間のロボット化だ。ロボットは、設定された閾値を超えるか超えないかの01で判断するように設定されるのが通常だから(AIはそうでないところを目指しているかもしれないけれど)、一様に反応し、一様の結果を出す。


わたしたちは人間なので、そして快不快がパフォーマンスに大きく影響するように仕組まれた心身を持ち合わせているので、「自分の感覚」の「ここまでオッケー」「ここからはキツイ」を判断して、それ相応に反応することを自分に許してあげることが、生きやすくなるコツなのだ。

ゆっくり自問自答したら、いい。

ポイントは、自問(感覚)に対する自答(行動)を、肯定して実行することだ。そして、隣の誰かがこれをすることを、賞賛してあげることなのだ。

周りと違うことを許さないということは、ロボットを量産するということだ。



・・・自問自答1

今日の天気予報によると、気温は摂氏8度までの上昇らしい。
朝、パジャマで外に出てみる。息が白い。震えるほど寒い。
このまま晴れていれば夜も同じくらい寒くなるだろう。帰宅が夜になるならダウンが必要かもしれない。
天気予報は昨日もおんなじ感じだったけど実際は陽が射していて体感は暖かった、今日もそうかもしれない。風は弱そうだ。
乾燥している。湿度が低い。マスクがあるといいかもしれない。飲み物は暖かくして持って行こう。
よし、行ってきます。


・・・自問自答2

ずっとパソコンの前に座っていて目が疲れてきた。
肩もつらい。とりあえず丸まった背中を伸ばすために寝転がろう。
目も閉じよう。寝っ転がってるだけだと腰がキツイからちょっと揺れとこう。
そういえば深い呼吸もずっとしていない。深呼吸しよう。
あ、久しぶりに深い眠りに落ちることができそうな気がする。10分だけ寝てしまおうか。この間はこれで30分経っててやばかった、ちょっと腕時計で目覚ましかけてみようか。
どうせ眠るなら少し灯りを落とそう。
では少しあちらの世界へ。おやすみなさい。


追記。

ちなみにこれは完全な自論だけれど、ある程度ロボットになることが社会性なのだとしたら、ロボット化のうち自分を破壊せずにコントロールできる要素というのは「適度な体力」「規則正しい生活」だけだと思う。

あと、味覚とかは要注意で、感覚→快楽→依存のルートが太すぎるので、理性(あなたの中のロボット思考)が必要です。