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ブルアカの元ネタの映画をひたすら観る②

前回までのあらすじ
 ブルーアーカイブに出てくる映画の元ネタをひたすら観ていくという、特にブルアカ本編とは関係のない感想記事です。

 前回の記事から3ヶ月近く空いてしまったが、けっしてやる気がなくなったわけではないということは強く主張しておきたい。いろいろあって映画どころではなかったんです。ヒナ委員長のピアノの練習を毎日やることもできない感じの状況だったので……。
 そんなことを言っているうちにブルアカも3周年のアニバを迎えたりアニメの企画が動いていたりといろいろと話題があった。便利屋のイベントもあったし。『ロシアより愛をこめて』というタイトルでも知られる映画『007/危機一発』(一髪じゃないんですよね)はけっこう前に観たので、いずれ再視聴してこの記事で扱っても良いかもしれない。なんかすごい強いおばさんが出てきたような記憶がある。

 さて、まあいい感じにやろう。


戦場のメリークリスマス(1983年)

坂本龍一以外の撮影メンバーで鰻食ってた話、好き

 太平洋戦争中のジャワ島にある捕虜収容所が舞台。英国陸軍のロレンス(トム・コンティ)をはじめとする連合国の軍人たちは、日本軍の苛烈な待遇に悩まされていた。特にハラ軍曹(ビートたけし)の捕虜に対する態度は辛辣で、ロレンスは日本語を喋る数少ない外国人としてハラと捕虜たちの板挟みに遭っていた。一方、日本軍のヨノイ大尉(坂本龍一)は、新たに収容所へやってきた英国陸軍のジャック・セリアズ(デヴィッド・ボウイ)に尋常ならざる何かを感じていた。戦況が悪化していく中で、日本の軍人たちと捕虜たちの緊張状態は高まっていき、やがて破局が訪れる──。

 イベント「聖堂のメリークリスマス」の元ネタ。メインテーマが流れただけで泣けてくる。監督・大島渚、デヴィッド・ボウイ、坂本龍一、ビートたけしという奇跡のような並びと映画全体から発散される異常な気迫。言葉にしただけでは伝わらない魔力のある映画だ。
 戦争を題材にした映画ではあるものの、戦闘の描写はなく、舞台もほとんど捕虜収容所の周辺から動かない。ただ淡々と人間模様と心理描写だけで進んでいくミニマムなところが美点で、そこに坂本龍一とデヴィッド・ボウイの妖しい美しさも重なって儚く脆い人間性を描き出している。

時計じかけのオレンジ(1971年)

親の顔より見た構図

 舞台は近未来のロンドン。不良少年のアレックス(マルコム・マクダウェル)は仲間とともに悪行の限りを尽くしていたが、あるとき仲間に裏切られて逮捕されてしまう。逮捕されたアレックスは更正のために「ルドヴィコ療法」という治療を受けることになるのだが、それはきわめておぞましいものだった──。

 メインストーリーVol.2「時計じかけの花のパヴァーヌ」の元ネタ(もうひとつの元ネタはラヴェルの「亡き王女のためのパヴァーヌ」)。原作小説も有名だが、「時計じかけの〜〜」という言葉を爆発的に流行らせたのはおそらく映画のほうだろう。
 人間の思考や精神に干渉するタイプのディストピア作品といえばオーウェルの『1984年』も思い浮かぶ。本作はオーウェルよりも露悪的かつ嘲笑的で、政治の力学によって善悪や倫理が次々とひっくり返る様子がブラックユーモアたっぷりに描かれている。登場人物たちの動きや喋り方、出てくる小物なんかも絶妙なキモさで唯一無二。
 大きな権力が人間の自由意志を歪めるというお話自体はよくあるものだが、ここではその被害者として”擁護の余地のない悪党”を登場させ、それでもなお自由意志への干渉が倫理に反するかを問いかける(これに関するキューブリックのインタビュー)。タイトルの解釈については諸説あるものの、人間の意志をより大きなシステムの下で抑圧していくストーリーを暗示しているというのが無難な説だと考えられる(参考)。
 この映画のわりとさいあくな場面で『雨に唄えば』の曲が出てくる。『雨に唄えば』はミナのガチャタイトル(ノワールに唄えば)とかメモロビの元ネタになっているので、いずれ観たい(むかし観たけどだいぶ忘れてしまった)。

ターミネーター4(2009年)

クリスチャン・ベールとサム・ワーシントンのダブル主演。ほんの少しだけシュワルツネッガーも出る

 ハレが観に行った映画『エリミネーター4』の元ネタ。ちなみに、ハレは『エリミネーター4』のハッカー描写に憤っていたが、『ターミネーター4』にはハッカーが出てこない(スカイネットのシステムに無断侵入する場面はある)。

オタクが感想を喋るとき「観客からの評価も悪くなさそう」みたいな俯瞰っぽい意見が出がちなのなんなんだろうな(自戒)

 ターミネーターといえば名作である『2』を観ておけばとりあえずOKで、『3』以降はまあ……(笑)みたいな風潮がある。『4』はもともと新三部作の一作目として企画されたらしいが、興行的には失敗し、制作会社も破産したため企画は立ち消えになった(その後に作られた続編はこれとは別の企画)。
 ただ、今あらためて観てみるとそこまで悪い映画ではなく、大雑把な脚本ながらもちゃんと山場があり、お金もかかっている標準的なハリウッド映画だと思う。
 念のため『ターミネーター』というシリーズについて説明しておく。近未来、スカイネットというコンピュータ・ネットワークが反乱を起こし、殺人ロボットを使って人間相手に戦争を開始する。スカイネット側と人間側はそれぞれ状況を打開するために現代にそれぞれロボットや人間を送り込み、それによって両者の戦争は現代にも波及することになる。
 有名な『1』や『2』はあくまで「現代」を舞台にしているのだが、『4』は「近未来」だけを舞台にしていて、『1』の前日譚のような話をしている(時系列だと後日譚だが……)。
 今回観ていて意外だったのは、けっこうブルアカのメインストーリー(特に『パヴァーヌ』)と通ずるような話がされていることで、あんまり詳しく書くと両方のネタバレになるのでやめるけど、とにかく状況設定とか問題意識には近いものがあった。
 とはいえ、ふつうのひとは素直に『1』と『2』を観たほうが良いと思う。『4』から観てもいちおう話は理解できると思うけど、あえて『4』から観る意味はあんまりない。
 なお、この作品で出てくる銃のうちHK416はアカリ、レミントン870はミチル、デザートイーグル Mark XIXはマリーの銃の元ネタ(それぞれの出演シーンについてはこれ)。

映画 クレヨンしんちゃん 暗黒タマタマ大追跡(1997年)

別にひまわりが大活躍しているわけではなくないか?

 クレヨンしんちゃんの劇場版第5作。湯浅政明とか水島努がバリバリに参加していた時代で、やたら滑らかなアクションシーンが豊富で良い。私はクレしんを観ない家庭で育ったので映画も2本くらいしか観たことなかったけど、2024年現在では明らかにライン越えてるシーンもたくさんあって面白かった。
 最終編「あまねく奇跡の始発点」の給食部トラックのスチルの元ネタとされるシーンがあるということで、当時のインターネットではけっこう話題になっていた。たしかに構図は完全に一致しているけど問題のシーン一瞬すぎて笑ってしまう。

問題のシーンを知らないひとも調べればすぐわかるよ

 個人的には『男たちの挽歌』とかミナの固有武器でもおなじみのベレッタM92FSが出てきたのも不意打ちで面白かった。自動車とか人間の作画はふにゃふにゃなのに拳銃だけめちゃめちゃソリッドな絵柄で出てくるのも笑う。

続・夕陽のガンマン(1966年)

ポスターの人は左から「良い奴/卑劣漢/悪玉」

 イタリアで撮影された西部劇、いわゆる「マカロニ・ウェスタン」の代表作。同じくセルジオ・レオーネ監督、クリント・イーストウッド主演のマカロニ・ウェスタンである『荒野の用心棒』『夕陽のガンマン』と併せて三部作扱いされることもあるが、ストーリー的なつながりはない。原題も「The Good, the Bad and the Ugly」なので邦題とはぜんぜん違う。
 イベント「TRIP TRAP TRAIN」の章タイトル「The good, The bad, The trinity」の元ネタ。

 行く先々で悪事の限りを尽くしてきた卑劣漢(the Ugly)テュコ(イーライ・ウォラック)は、かつて自分を嵌めた「良い奴(the Good)」ことブロンディ(クリント・イーストウッド)に復讐するため、かれを砂漠の荒野で殺害しようとしていた。
 そこに死にかけの男を乗せた馬車が偶然通りかかる。死にかけの男は20万ドルの金貨を"ある場所"に隠したと語り、テュコに隠し場所である"墓地"の名前を、ブロンディに金貨を埋めた場所の"墓標"の名前を教えて息絶える。金貨を見つけるには二人の情報を併せなければならない。敵同士だった二人はやむを得ず協力して目的地を目指すことになる。
 そんな二人の前に、金貨の横取りを目論む殺し屋・エンジェル・アイ(リー・ヴァン・クリーフ)が立ちはだかる。かれは、民間人であっても容赦なく命を奪う「悪玉(the Bad)」だった。
 こうして南北戦争中のアメリカの荒野で、三人の男たちが20万ドルの金貨をめぐる争奪戦を繰り広げる。

 西部劇と聞くと古臭い印象を受けるひともいるだろうけど、名作と呼ばれる西部劇はどれもわかりやすくてエンタメで面白い。この映画も3時間近くあってテンポの遅いところはあるものの、ストーリーは簡潔にしてスマートで、台詞や映像も恰好良く、音楽も素晴らしい。金貨争奪戦というアイデアは『ゴールデンカムイ』っぽさもあって……というかおそらく『ゴールデンカムイ』の着想元のひとつはこの映画じゃないかと思う。エンジェル・アイの顔が鶴見中尉っぽいし。
 好きなシーンはたくさんあって挙げ始めればきりがないが、教会でテュコの意外な一面が掘り下げられる場面とか、ブロンディが瀕死の兵士に煙草を吸わせるところとかは物語の結末への布石として丁寧で特に好き。もちろん、名シーンとして有名な「三つ巴の決闘」の場面も最高に恰好良い。
 それにしても、この頃のイーストウッドは若すぎて後年の渋い顔に見馴れていると「誰?」という感じがする。若いときも恰好良いけど、だいぶ普通のひとに見える。
 「TRIP TRAP TRAIN」との関連性としては、三つの勢力でマクガフィンを取り合うというくらいかな……。この映画にもいちおう列車を使ったアクションシーンもあるんだけどあんまり本筋じゃないし。

 というわけで、今回は以上5本です。
 第3回は門主が喋るより先に出したいと思います。


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