「X to Earn」ビジネスの要はゲーミフィケーションにあり
「X to Earn (以後X2E)」とは何か?
「○○をして稼ぐ」と訳すことができるように、日常的な行為をお金儲けの手段に変えるサービスです。
例えば、歩くだけ、走るだけでお金儲けができてしまう「Move to Earn」の代表としてSTEPNがあります。他にも「Sleep to Earn」や「Learn to Earn」など様々もサービスが生まれており、水面化では笑い(Laugh)や料理(Cook)といった行為を対象としたサービスも開発されているかもしれません。
そして、このビジネスが人々に受け入れられるための要としてゲーミフィケーションがあるのではないかと考えており、今回はこれについてお話していきたいと思います。
そもそもゲーミフィケーションとは?
これについては、ゲームではないものが、ゲームがもつ以下の仕組みを備えることだと考えています。
①制限(ルール)があること
②報酬があること
それぞれについて見ていきます。
①制限(ルール)があること
ルールは自由を奪うものであり、一見するとネガティブなものに思えますが、制限が加わるからこそ発生する面白い現象があります。
それは工夫する余地が生まれるということです。
RPGを思い起こしてください。
初めて入ったダンジョンで出会うモンスターは、その時期の主人公達にとって工夫しないと倒せないようにレベルデザインされています。
例えば、一つ前のダンジョンでは覚えたばかりの魔法で攻略できたのに、今度のダンジョンでは魔法耐性のあるモンスターが出てきて、物理主体の戦術に変更しないといけない。
この場合の魔法耐性というのが「制限」であり、戦術変更という工夫を施す余地を生み出しています。
それ故に、クリアした時には気持ちの良い達成感があり、どんどんのめり込んでしまう。
制限こそがやりがいを引き出し、ゲームを成り立たせているのです。
②報酬があること
制限の中で工夫を施すという行為は思考を必要とするため、それなりの労力が発生します。その中でも「やってみよう」と最初の一歩を踏み出すアシストをできるのが報酬の力です。
そして、実際に報酬を受け取れば「やってよかった」や「もっとほしい」という感情が生まれ、その後の継続につながります。
まとめると、①は仕組みとして、②は動力としての役割を果たしています。
この2つが組み合わさり、「のめり込んで抜け出せなくなる」というゲーム特有の状況が生まれているのなら、それはゲーミフィケーションされていると言えるのではないかと考えています。
「X to Earn」との関係性について
X2Eとゲーミフィケーションは相性がとても良いと考えています。
なぜならX2Eのマネタイズを最大化できるからです。
X2Eのマネタイズでよくみられるのは次の2つですが、その最大化に必要なことを考えながら、ゲーミフィケーションとの相性を考えていきましょう。
①ユーザーの行動データの売却または二次活用
この最大化には、ユーザーが継続してサービスを使ってくれて沢山の行動を取ってくれることが重要です。
つまり「のめり込んで抜け出せくなる」ようにするのが勝利条件であって、まさにゲームの得意分野なのです。
成功例であるSTEPNを見てみましょう。
ユーザーの一番のプレイ動機は換金可能なトークンを手に入れること。
そして、このプロセスを見事にゲーミフィケーションしています。
基本的に仮想のスニーカーを履いて歩いたり走ったりすると「報酬」としてトークンが手に入るのですが、ここに絶妙な「制限」が組み込まれている。
例えば、スニーカーのエネルギーがなくなったり、壊れてくるとトークンがたまらなくなるのです。この仕様に対して、丈夫なスニーカーにするための本体の育成やアクセサリー要素などが用意されており、工夫の余地が盛り沢山。
これが実際にやってみると育成ゲームみたいで、楽しくてやめられなくなる。
スニーカーをすぐ売ってハイサヨナラではなく、良い意味での遠回りをさせられ、総プレイ時間が膨らんでいくのです。
②NFTの売却で発生する手数料
X2EのサービスにはNFTを売買できる独自のマーケットが用意されていることが多く、ここで沢山の売買が起これば、運営元は手数料で儲けることができます。そしてこの最大化のためには、1人のユーザーが複数のNFTを所持したくなる仕組みが鍵になります。
ここでもSTEPNを例に取ってみます。
STEPNでは「制限」としてエネルギーという要素があるとご紹介しましたが、この上限を増やす方法として、スニーカーの所有数が関係します。
例えば、エネルギー上限を10倍まで引き上げるためには30足が必要という具合です。
そんなに買ったら破産しちゃう...と思いつつ、トークンの獲得効率が上がるならいつか回収できると投資感覚で買ってしまう訳です。
このように、X2Eのマネタイズにおいて、ゲーミフィケーションはなくてはならない要素になっているのです。
おわりに
ゲーミフィケーションはマネタイズを成功させるだけでなく、Web3に興味がない人を引き込む力も持っていると思います。
胡散臭さたっぷりのX2Eから臭みを消してくれる脱臭炭な存在。
あのリングフィットアドベンチャーも、運動志向のない人達ですらコンテンツ自体の面白さで惹きつけ、大ヒットしました。
キャズムを超えて世に広まるまでには、大ヒットコンテンツの誕生はもちろん、仮想通貨へのイメージ向上、ウォレットの簡略化などインフラを含めた課題が山積していますが、今年の東京ゲームショウでブロックチェーンゲームのブースが用意されるなど、確実に前へ進んでいます。
社会人として最前線で戦えるように、情報をキャッチして常に頭をアップデートしていかねばと危機感を覚える毎日です。