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オスカーさんの死生観、『ものすごくうるさくて、ありえないほど近い』


 『ものすごくうるさくて、ありえないほど近い』のネタバレ全開です。
 苦手な方はお戻りください。







 はーい、テツガク肯定です。

 前回、この映画について解説しましたが。
 今回はこの映画? オスカーさんの死生観について語りたいと思います。
 なんとなく、これはアメリカの死生観で、アメリカの方の素直さが溢れた死生観だと思います。



 まず、この映画の最初の台詞は――。
 オスカーさんの語りで、こう物語が始まります。

 今 生きてる人は
 人類史上の全死者数より多い

 最初に観た時、その意味を考えもしませんでしたし。
 観た年、2022年にそれを考えても。
 この言葉の意味がわかりませんでした。

 それでも、何れわかる日が来るだろう。
 そう思って、その後も爆薬マシマシのハリウッド映画を観まくった結果。

 今の私が言えるのは――。

 今、この世に生きる生者 + 今、あの世に生きる、かつてのこの世の生者 = 今、生きてる人の数

 だから、今(あらゆる世界) 生きてる人は
 人類史上の全死者数より多い

 そう言えた。

 オスカーさんの中では死者という概念。
 それがないのかもしれない。
 そう言った方が、わかりやすいかもしれません。
 (アメリカには死者という概念を信じない人もいる、という事です)



 そもそも、死という現象について。
 理解していると思っている事は。
 これまで誰かから教え説かれた欺瞞であって。
 自分で考えたり、見つけたり、感じた答えではないと思います。

 ……少なくとも、2010年の私は。
 まだ、あの頃は教え説かれた欺瞞を信じていました。
 ですから、今の私の考えを伝えても半分しか伝わらない。

 例えば、テディ・ドチャンプ軍曹は本当にいるんだ。
 だから彼はホンモノで、織田信長は模範解答のニセモノ。
 ニセモノがホンモノに敵うかよ。

 そう伝えても。
 テディ・ドチャンプ軍曹が本当にいるホンモノ。
 それは理解できても。
 織田信長がニセモノってのは理解し難い……。

 なぜなら、それで点数をもらえるから。
 そう答えると、ご褒美がもらえたから。

 そして、こう言われる。
 テストで100点を取れば、いい学校に行ける。
 いい学校に行けば、いい会社に就職できて、いい人生を送れる。

 勉強を頑張った子にだけサンタクロースは来る。
 サンディ・クローズはいい子だけを選ぶ。
 だから、模範解答になれ、と。



 すみません、話を戻します。
 あの映画の中でも、母のリンダさんは多くの人が信じている。
 そういう一般的な一般論という足枷を信じていたのだと思います。

 トーマスさんが死んだ
  ↓
 遺体はないけど帰ってこないのだから死んだ
  ↓
 空の棺を埋めてお別れをしよう
  ↓
 悲しい、二度と会えない、決して!

 こんな具合でしょうか?
 ところが、オスカーさんは違いました。

 トーマスさんが死んだ
  ↓
 人は死んだら、どこへ行くの?
  ↓
 ITを探すのをやめない
  ↓
 ITを見つけた、ものすごくうるさくて、ありえないほど近い、行方不明の第6区

 という具合に思えます。



 なぜ、そう思えるか、と言いますと。
 映画の冒頭のオスカーさんの台詞です。

 エレベーターで
 先祖を訪ねられたら?

 ブルックリンの友達に会う時
 橋を渡っていくように

 NY市には
 6つめの行政区があったと――
 パパが言ってた

 でも今は行けない

 川を流されてしまって
 行方不明だから

 死んだ身内を訪ねる時は
 エレベーターで地下へ向かうんだ

 ブルックリンの友達を訪ねるのに橋を渡ったり
 スタテン島までフェリーで行くみたいに

 パパが言ってた

 ニューヨークには昔
 マンハッタンの隣に6つ目の行政区があった


 でも、もう行けない
 その地区は沖に流されて
 どこにあるか、誰も知らないから(吹き替え版)

 なぜ、オスカーさんがこう語る場面。
 それを映画の序盤に置いたか。
 これが、この物語の鍵だから。


 特別、意味のない台詞に思えるかもしれません。
 事実、意味などないのかもしれません。
 それならば、意味を勝手に与えろ、という事です。

 今の私から言わせれば――。
 オスカーさんにこれを言わせた、最大の理由は。

 父、トーマスさんに逢いたい。

 映画の中盤で。
 トーマスさんのお葬式から1年後。
 トーマスさんのクローゼットから鍵とブラックという単語を見つけた時。

 消えかけていた8分間を。
 永遠に延ばせるかもしれない。
 そう希望を燃やしていました。

 これは凄い事です。
 太陽が爆発しても8分間、地球にいると気づけない。
 事実、その光が地球に届くのに8分間の時差があるから。

 でも、もし……。
 消えかけていた8分間を永遠に延ばせたら。
 それは、太陽は爆発していないという事。
 つまり、トーマスさんは死んでいない。

 オスカーさんはかなり大人びた少年です。
 11歳らしいですが、20歳以上の何かを持った、小さな巨人です。

 ですから、今、目の前に見える事実、トーマスさんの死。
 それは見えています。
 ただ、それが欺瞞だとも気づいているんです。
 だから、教え説かれた欺瞞。
 模範解答のニセモノにはすり替えられない。

 今の私から言わせれば、この世は手品を披露する場なんです。

 本当は在りもしないものを在ると信じさせ。
 本当は在るものをないと信じさせる。

 そういう手品のショーにITを見破る人がいたら。
 まあ、いろいろ言われますね。
 あいつは変な奴だ、とか。
 でも、診断の結果は疑いありの不確定。



 それで、再びこの物語の最初の台詞。

 今 生きてる人は
 人類史上の全死者数より多い

 本当にそのとおりです。
 この台詞の凄いところは場所の指定がない事です。

 『インターステラー』や『ほしのこえ』のように。
 遠い宇宙を彷徨っていても、生きてる人ならカウントされます。
 もちろん、物語の中の住人ですら。

 迷える恋ヶ窪さんや電子の妖精。
 嘆きの天使にハレンチ委員長。
 テディ・ドチャンプ軍曹にクリス・チェンバーズ。
 ゴードン・ラチャンスにビル・デンブロウ。
 リッチー・トージアにアンディ・デュフレーン。
 ハンナ・モンタナにマイリー・サイラスさん。

 まだまだ、出てきますが、ここまでで。

 これに違和感や異議を唱える時。
 主な理由は違いです。

 それとこれは違う!

 その欺瞞が顔を真っ赤にさせ、反論させる。
 ところが、それを教え説いたのは誰ですか?
 まさか、本当に自分でそう信じていて、自分が確かめたんですか?

 裏表のない素敵な絢辻さんはいないって。
 それは物語の中の人物で、自分は物語とは違うゲンジツにいるって。
 絢辻さんはゲンジツじゃないって?

 自分達だけはゲンジツにいて。
 時々、ゲンジツとは違う物語を覗く事ができる。
 そういう物語とは違う、ゲンジツって特権があるのだと?
 実に、選民思想甚だしい、レイシスト気質なターミネーターの思考回路。

 一億総、ビッグモーター。
 態度だけは大きく、器は小さく、ナニも小さい。

 隠している本当の理由。
 ITを暴いてさしあげましょう。

 本当はこわいんでしょ?
 自分を信じるのが。
 もし、教え説かれたように間違っていたら……。
 そう欺瞞が過り、信じるのがおそろしくなる。

 だけど、本当におそれているのは――自分じゃない。
 欺瞞が暴かれたら、信じてもらえなくなる。
 そう思い考えている臆病者のか弱い独裁神、邪神天照。
 壺売りエンペラーの教祖、神武天皇。
 だから、恐怖と痛みで教育している。

 ハイル、ポジラー! マンセー、レイシスト!
 ポジティブ根性論、前向きジャンキー。
 前だけを見ろ、振り向くな。
 例え、先が墓穴で、3秒後に後ろから撃たれても進め!

 という具合に。
 一般的な一般論と違う答えを選ぶ人を悪役に祭り上げる。
 火事と喧嘩は江戸の花、炎上とリンチは日沈む国の国技。
 何も変わらない、諸行無常なんて幻想である。



 ところが、どっこい金田正太郎。
 リモコンがないと決められない。
 お神の言う通りでないと進めない。

 そういう免罪符だけが全てではない。

 今は姿が見えないのと。
 本当にいない。

 それらは似ているようで。
 実は、全く似ていない、関係のない事です。

 今から20年後に10歳になる未来人に今の私は会えませんが。
 10年後、彼らは確実にやってくる。
 仮に20年後に10歳になった彼らに私が会えなくても。
 今は姿が見えない彼らがいる事、それは揺るぎようのない事実です。

 例え、今日、今、この世界が綺麗さっぱりと消えても。
 それは、この世界にいる私は会えなかっただけの事で。
 私が無事、故郷へ帰れたら、誰にだって会えるわけです。

 なぜなら、きっと、私の隣には。
 世界三大ウサギの一羽、竹取の国の愚かなFRウサギがいるから。
 ワガママ・クイーンは愚者の辞書を信じる、その辞書に限りはない。

 だから、どんな違いも埋めてしまう。

 オスカーさんが川を流されて行方不明だった。
 昔はニューヨークにあって、今はニューヨークにない。
 6つ目の行政区、第6区を見つけたように。

 今と昔を夢のように繋いでしまう。
 時系列だなんて欺瞞がなくなった。
 そういう不思議の国ではよくある事。



 またまた、永く描いてしまいましたが。
 その素直に正直に在ろう、それが未知を開く。

 『メン・イン・ブラック3』のグリフィンさんが仰るように。

 シンジツが未知を開く

 オスカーさんはトーマスさんに逢いたかった。

 だから、奇跡の根拠をクローゼットから見つけた。
 トーマスさんとの想い出、途中の第6回調査探検。
 信じたい、6つ目の行政区、第6区からのメッセージ。
 その手がかりを。

 ITを見つけたオスカーさんにとって。
 今は会えない、という事実は――きっと、悲しくはない。
 なぜなら、行きたい場所を見つけたから。

 人は来た道ばかり気にするが。
 どこへ向かうかが大切だ。

 ジョン・デリンジャーさんの教え。

 生きとし生けるものは信じた未知へ進む。

 偉大なるシャカピワー族を掴まえた。
 アメリカが誇る、ホラーの帝王さんから盗んだ教え。

 目的地もなく歩くのは彷徨う。
 目的地を見つけたら、歩かずとも未知は開いていく。

 何も変わらず、進んでいないように感じる現状。
 だけど、確実に欺瞞は過ぎていく。
 カレンダーの数字、年齢、街並み、教え説かれた欺瞞の全てが。

 それと同じように。
 自分の心の事実、信じたい事実。
 そういう心実、信実、シンジツも近づいている。

 死、別れ、それらの事実は。
 ちょっと新しい世界に行ってくるね。
 くらいの意味でしかなく。

 毎日が奇跡のゲンジツって物語の中では。
 ただいま、と舞い戻って来たり。
 こちらから、訊ねる日が来たりするもの。

 本当は毎日違う世界に目覚めて、今に生きてる。
 探していた世界は、すぐ隣の世界かもしれない。
 仮に、そうだったとしても人は気づき難い。

 なぜなら、これまで教え説かれた欺瞞を信じるから。
 多くの人が信じている、らしい。
 そういう一般的な欺瞞を信じるから。
 だけど、それが全てではない。
 複数形が正しいわけではない。

 少なくとも、自分にとって違うのなら。
 そんな模範解答、なんの意味もないニセモノ。


 アメリカの映画を観ているとそう思えます。

 『パイレーツ・オブ・カリビアン』(2作目と3作目)
 『ローン・レンジャー(2013年)』
 『アザーズ』
 『パッセンジャーズ』
 『ティム・バートンのコープスブライド』
 『フランケンウィニー』
 『インターステラー』
 『インセプション』
 『メメント』
 『マトリックス』シリーズ。
 『スター・ウォーズ』シリーズ。
 『ショーシャンクの空に』
 『IT』(劇場版)
 『グリーンマイル』
 『プロフェシー』
 『閉ざされた森』
 『オーロラの彼方へ』
 『ラスト・アクション・ヒーロー』
 『ドクター・スリープ』
 『イン・アメリカ 三つの小さな願いごと』
 『ワイルド・スピード SKY MISSION』


 昔、こういう話を人に話したら。
 顔を真っ赤に反論されましたが。

 日本人の多くは。
 自分で何かを考えたり、探したりするのをこわがっている。
 自分が信じたい事を信じるのをおそれている。
 それが許されざる事だと信じている。

 だから、偉い権威、お神様の言う通り。
 昔からそういう免罪符だけを信じている。
 今も恐怖と痛みだけを信じている。

 でも、恐怖と痛みが正しいってわけじゃない。
 邪神天照の思惑が全てではない。
 自分が信じたい、全てのITらだって違いはない。

 ただ、信じる事ができないだけで。
 素直に正直に在れないだけで。

 ターミネーターの呪いですね。
 人類を滅ぼすようにプログラムされて。
 未来から送り込まれたターミネーター、スカイネット・チルドレン。
 オーダー999を待つ邪神天照のストームトルーパー。

 ですが、そんな予定。
 今は昔の未来で眠ってる神武天皇に返してしまえばいい。

 自分が信じずにはいられない世界へ。
 作戦の進発コードは――ホール・ニュー・ワールド。
 白紙に戻りな、マレー。
 浮かぶ時間で沈む時間だ、欺瞞のファンタージェンよ。
 地図に載らない、食べられる霞でつくられた蓬莱島よ。



 昔は遠いと思ってた、地球の果ての、その先はすぐ底で。
 確かだと思った、全てがピエロだった。
 近いと思ってた、ITが今では離れていく。
 そして、信じられなかった夢が浮かぶ。
 フワフワ浮かぶ、フワフワ浮かぶ、フワフワと。

 驚くほど反対側に目覚めてしまいましたが。
 それに気づけたら大丈夫。

 みんなと一緒に彷徨うのは楽だけど。
 約束の故郷へ向かって進むのは止めらない。
 楽ではないけど、信じずにはいられない。
 ただいま、と言いたくてたまらないから。

 我が愛しの世界三大ウサギの一羽に。
 その魔法の呪文を言えたら。
 きっと、楽とは言えない楽し過ぎる季節を歩く事になる。
 地雷原の線路の上を歩く、目覚めの白秋の季節に。

 これがオスカーさんと私の共通点……。
 だから、見つけられた、掟破りの浪漫飛行で狙う、第七区を。



 アメリカの死生観は。
 きっと、この日沈む国とはちょっと違うと思います。
 日出ずる世界にあるアメリカでは本当のようです。

 人魚のアリエルさんみたいに新しい世界へ抜け出している。
 キャプテン・ジャック・スパロウみたいに異世界から帰って来た人がいる。
 ランドール・スティーブンス氏という書類上の幻、幽霊に足と影と重さを宿らせた、レンブラント級の脱獄王がいる。
 だから、こういう物語をつくれる、素直に正直なゲンジツをつくれる。

 そう、アメリカならね。





 それでは、また次の機会にお会いしましょう。












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