掘り続けて見えてくるサービスの姿
昨年はサービスの原型をつくる最初の年となりました。
自分自身が「ほしい」と思うサービスづくりを、自分の思うように。
これまで、そう考えて手を動かしてプロトタイプをつくり、手書きのラフを書いて人にお願いし、実装を試みてきました。構想したものはノートの1冊にも満たないものでしたが、基本コンセプトが変わっていない事にも気づきました。
いまもっとも時間を割いているサービスは、構想のなかになかったものです。それなのに「面白い、かたちにしてみよう」と思ったのは、明確な自分のペイン(苦痛)があったからでした。
ペインに向かっていくと面白くなる・・というのは、なんだか矛盾しています。今でも「この先に本当に続けられるのか・・・」「めんどうだな」と思う気持ちがあります。やりきれるのか?と自問することも。
解決していくことの心地よさ
持続的に前に進む原動力になっているのは、ペインが解決されていくことが明らかだったからです。
とはいえ、実装には苦痛を伴いますし、新しいスキルセットも学ばなければならず、毎日の歩き時間は思考時間に、電車はコードを書くか知識を入れるか、という日々。
設計は2−3度やり直し、Model を変え、デザインパターンを再習得し、拡張可能な状態でオブジェクトを定義してきました。
もう少しという出口がみえたところから、また遠のいていく日々。
それでも、かなりのビジネスロジックを内包する、ストレスのない状態に向けたサービスに仕上がってきた気がしています。
体験価値へのコミット
今回はペインが対象のサービスであるため、「体験」や「UX」は、心地よさだけではなく、明確なバリューを提供するものでありたいと考えていました。
体験に「価値」を加えるため、「体験価値」と呼ぶことにしています。その体験に価値があるか?を軸に、サービスをブラッシュアップしていった結果、触っている画面は同じままで、裏側の仕組みは大幅に変えていくことになりました。フロントエンドの操作性も重要ですが、何よりも利用者(サービス開発者・運営者)の品質向上を支えられるのか?を考えてきました。きっと、これをサービスミッションにしていくのが良いのだろうなと思い、少しずつドキュメントにも記録しています。
いわゆるテストツールの先
いまはわかりやすくテストツールと呼んでいます。原点は「自分が欲しい「品質向上サービス」をつくる」に書きました。そのときは、サービスを提供し続けることの価値は「コスト削減」を中心にイメージしていました。
いま、実装が進むにつれて、プロトタイプのうえにアイデアが乗っていきます。具体化したイメージから、また膨らむイメージがあります。つくったその先を掘っていくと、行き止まりではなく広がって見えるようになりました。
実装が形になりつつある今、「コスト削減」よりも広い世界が見えてきました。
世の中のサービス提供は、プロダクトだけでは成り立ちません。現在・将来のマーケットに対して、求められるサービスをその時々で実現していくことが必要です。たったひとつのツールでは叶えられないし、自分たちだけで完結もしません。数多くの接続されたサービスと、数多くの関係者のなかで、実現していく事になります。
裏側の仕組みを大きく変え、設計のなかに将来を入れました。この実装は、いまのプロダクトの体験検証には不要ですが、サービス価値があるかを検証するには欠かせないものでした。MVPが変わりました。
ここから先の作り込み
今年は、ぼくの別サービスに適用して稼働させていきます。可能であれば他に利用したい人が見つかるといいなと思っています。継続的にサービス提供するためには、バージョンアップ、移行、環境差異(Development, Staging, Production)を管理する必要もあります。Downtime や Alert など運用管理についてもケアすることが求められます。
こうしたことを、日頃の本業とは別で、限られた時間枠のなかで実装していくためには、たくさんの工夫が必要です。ポジティブに考えると、時間制約(Startupにとってはバーンレート)があるからこそ、ペインに対して必要性を感じたとも言えます。しばらくはこの状態を続けながら、着実に運用に入りたいと思います。
感謝
いまは、開発に多くの人は関わっていません。基本的に自分自身の欲しいものを、自分の手で形作ることからスタートしました。
「自分だけ」だからできることもありますが、悩ましい問題もつきまといます。サービス開発の方向性を「時間がかかっても自分が満足して使っている状態にしていくか」「資金が得られる状態を目指していくべきか」など、ありきたりな問いに悶々とした時期もありました。
相談できる人がいたことは、とても助かりました。たった一言で、迷いがなくなりました。
自分の思いやバイアスが入ると、良い方向へ考えがちです。サービスづくりに苦労したり、自分が持っていない視座からものを見ている数名の方に「進め方」について聞けた事には、たいへん感謝しています。
向こう10年、変わらないものにエネルギーを注ぐ
世の中の趨勢・タイミングなどを考えると「いつが適正なのか?」という問いもあります。Amazon ジェフ・ベゾスが「変わらないもの」について話していることも励みになります。長い目でみて正しいと思えるものに、エネルギーを注ぐことができます。
自分にできると思えることは、他の人もできると思えているはずです。明確なペインがあるからこそ、必ず解消する手段が出てきます。それは1つの統合されたサービスやプロダクトではないかもしれません。
一方、それなのにここまで解消されてこなかった理由も、頭のなかでは見えています。たくさん経験してきた現場で起きていることは、きっと世の中で起きています。トレードオフになっている意思決定を、トレードオフにしないことが重要です。しばらく、この解決にエネルギーを注いでいこうと思います。
向こう1年の間、プロダクトとして触れるものを実現しながら、「自分が欲しい「品質向上サービス」をつくる」に書いた課題を感じる方々と、話す機会が増えたら嬉しいです。