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ヘルニアを食べてくれる体の不思議。病院にかつぎこまれて「重度腰椎椎間板ヘルニア」という病名をもらったその日のこと②
ここまでの話・・・
火であぶられるようなチリチリ。その痛みが、ほんのちょっと、5ミリ位体を動かすだけで、神経の線にそって下半身全体に一瞬で広がる。その痛みを抱えたまま東京城北地区で有名な整形外科へなんとか運ばれた。
結構立派なヘルニアだった
さすがは名高い整形外科。いたし方ないのだけど待ち時間も長い・・・・。
レントゲンとMRIをやっとの思いで済ませた。MRIの診察着に着替えるのも当然できなくて夫に手伝ってもらう。そのさまは、もはや早めの介護練習。
MRIは仰向けになって20分くらいの間、筒のようなものの中に入って寝ているだけ。この仰向けになるのも腰を伸ばさなければならないと思うと怖かったのだけれど、「医師に見てもらえる、もうこれで痛みから開放されるのだ」と思うと安心してしまい、なんと筒の中で数日ぶりにぐっすりと昼寝してしまった。
さらに1時間待ってようやく診察。診察室に入っても椅子に座ることもできず、たったまま医師の話を聞く。そこにはさっき撮影したMRIの画像がはられていた。
立ったままの私に優しそうな顔を向けながら、
開口一番
「わー・・・・わはははは、ずいぶん大きく飛び出したもんだね。こりゃー痛いわ。立派なヘルニアです」
・・・・病名もらった。
生まれてはじめて。風邪とかインフルエンザとか水疱瘡とか、そういうの(って何かわからないけど)じゃない、立派な病名「重度腰椎椎間板ヘルニア(5番)」がもらえた。
病状としては、「背骨(椎骨)の間にあるクッションの役目をする軟骨組織、椎間板の一部に切れ目が入って椎間板組織の一部が神経組織に向かって飛び出して、実際に神経を圧迫し、足の強い痛みや麻痺が起こっている状態」。
あーそうだったんだ。毎日たくさんの患者さんを診ている有名病院の医師が、笑いながら「大きいね、これは痛いね」、というくらいのもの抱えてたんだ。そう思うと複雑な気持ちが湧いてきて、半泣き笑いしてしまったのを妙にはっきり覚えている。
私のヘルニアは自分でMRIの画像を診てもわかるくらい飛び出していた。教科書で見るような背骨のS字があって、その間から背骨と同じくらいの太さの袋のようなものが外側に向かって、にゅるりと飛び出していた。木の幹に直接はりつく梨の実みたいだった。この梨の実のような袋の中には神経がいっぱい入っているのだそうだ。
それからも、結構冷静に先生の話を聞いていたんだけれど、このヘルニアについて驚くような体の不思議を知ったので書いておきたい。
体がヘルニアを食べる?
“重度”と命名されたとおり、私のヘルニアの実は大きめなのだが、「これだけ大きいとかえって予後がよいこともある」のだそうだ。大きいヘルニアの飛び出しを体は“異物侵入”と判断して、それを退治するために食べてしまうことがあるのだと。
へえええええ・・・・。
食べるか食べないかも、完食するかしないかもわからないらしいけれど、そんな不思議で神秘的なことが体の中には起こりうるのですね。
治療法も決まった。いまのところ年齢的にも狭窄(背骨と背骨の間が狭くなってしまう)はしていないので、外科手術はしない温存療法。温存しながらどうやって痛みをとっていくのかというと、ブロック注射という局所麻酔剤やステロイド剤を痛みのある神経や関節に直接注入する注射。これを痛みの変化を見ながら複数回打つ、という気の長い治療法。
「痛みのある神経や関節に麻酔を直接注入」って・・・・聞くだけで、この注射、絶対痛いに違いないのだけれど、その時はチリチリの痛みでもう頭がおかしくなっていて、「この痛みがなくなるならなんでもいい」、そういう気持ちだった。一刻も早くチリチリから逃れたい!
そして、診察室からそのままブロック注射のための処置室へ移動すること、そしてその日はそのまま入院することも決まってしまった。