【漫画評】『かくかくしかじか』東村アキコ
最近、大学のデザイン思考を鍛えるワークショップの一環でビブリオバトルをやりました。私が紹介したのが『かくかくしかじか』東村アキコ。せっかくなのでnoteにメモしておきます。
ビブリオバトルは集まった人が一人3分でおすすめの本を紹介し、どの本が一番読みたいか?という「チャンプ本」を決めるというワークショップ。
以下は私が自分の言葉で説明した原稿をもとにしています。
東村アキコといば、『海月姫』や『東京タラレバ娘』など映画やドラマ化された原作を生み出すヒットメーカーです。毎月原稿200枚という驚異的なスピードで描く上(普通の週間連載は16ページ×4=64ページ)、なんとなく不思議ちゃんキャラなので天才肌なのかと思っていたのですが、その裏には「師」との壮絶な修行期間があった、その物語、東村アキコ流まんが道。
林明子は、宮崎県の片隅で伸び伸びと育ち、自分は絵の天才だと思い込んでいた。元気がよくて学級委員に選出されたりしていた明子は、勉強ができるいかんに関係なく進学校に推薦をもらい、落ちこぼれる。それでも「自分は漫画家になれればいいや」と勉強そっちのけ、美術部の優しい先生にほめられて「美大なんか余裕」と思っていたところ、数少ない美大志望の友人二見から「こんなんじゃ美大受からん。美大に強い絵画教室に行く」といわれ、それに誘われて通いはじめる。
そこで絵画教室の先生で明子の恩師となる日高先生とであう。自信のあるデッサンを持ち込んでみたものの、ものの見事にボロクソに言われショックを受ける。絵画教室では竹刀や鉄拳制裁もじさない厳しくも、自分で作った陶器で茶葉からお茶を生徒全員にいれたり、常に「本物」に対して妥協しない優しさも併せ持つ先生。そんな先生になんだかんだありながら慕い始める。
先生の口癖はとにかく「描け」。何があろうと兎に角描かせる。明子はときには反発しながらもなんだかんだ描きまくって金沢芸術工芸大学に運も味方につけながら現役合格します。
広いアトリエ、ヌードモデル、石膏像、といった絵を描くことに特化した環境。自分が憧れていた環境に入った明子は、スランプに陥ります。そんなときに助けてくれたのが日高先生。帰省してプレッシャーでヒステリックになっていた明子の家まで駆けつけ、こういいいます。「自画像描け」。
その後もなんだかんだと人生の節目に助けてくれる日高先生。まさに師弟関係といえるでしょう。
本編を読めばすぐにわかりますが、日高先生はすでに亡くなられています。それを思い出しながら描かれる体裁となっています。
「モノ」をつくるクリエイター誰もが通る道である、「とにかく手を動かせ」という練習。
「描け」というのは「モノを作る訓練を受けた人」が必ず通ってきた、「とにかく手を動かせ」という練習です。私も建築学科でとにかく「手を動かせ」と言われました。今になってその大事さがわかりますが、当時の私は頭でっかちであまり手が動く学生ではありませんでした。しかし、評価されている学生を観察するとやっぱり「手を動かして」考えてるんですよ。このひたすら手を動かすということの大事さを(無理矢理に)教えてくれる日高先生に高校生にして会えた明子はかなり運がよいです。
工学部・工学研究科の学生が中心のワークショップでしたが、少しでも彼らにその大事さが届けばと思い選書しました。
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