地方都市、技術職でも年収をアップさせる方法
誰しも「年収をアップさせたい」と考えたことがあると思います。
年収が上がれば生活が楽になったり、今まで手にできなかったものに手が届いたり、将来への不安が解消されたり、良いイメージが満載です。
年収アップという目的に対して、積極的に行動し、成功した人の体験談はインターネット上に沢山ありますが、その多くは給与水準の高い首都圏の話が多く、水準が低いとされている地方都市の話は少ない印象です。
ここで本当に地方都市は首都圏よりも給与水準が低いのか調べてみました。
厚生労働省の「賃金構造基本統計調査(2018年)」によると、平均年収1位の東京都が622万円で、私が住む石川県はちょうど真ん中24位で448万円、その差174万円(1.27倍)という大きな違いがありました。
東京に次ぐのが愛知、神奈川、大阪という順で、首都圏や大都市の給与水準が間違いなく高いことがわかります。
詳しくは下記のリンクに上手くまとめてありました。
また体験談の職種で見ると営業を始めとした一般職の話が多く、技術職の話って少ないように感じます。
一般職の場合はその仕事の特性上、業界関係なく知識や経験といったスキルの応用がしやすく、給与水準の高い業界へ移っていくことで収入を上げることができます。
motoさんの軸ずらし転職なんかは、一般職向けのステップアップ方法だと思います。
技術職の場合は、その業界のエキスパートとしてスキルを磨くことが求められます。
知識や経験は一つの業界に偏り、他の業界に移るとなると応用しにくいことがほとんどです。
給与水準の低い地方都市で、業界を変えることで年収アップを目指すことが難しい技術職という条件が揃っている私ですが、この度年収アップの転職に成功しました。
金額は明示できませんが、社内で普通に昇給や出世した場合の10年分ぐらいの年収アップができました。
その秘訣について少し書いてみようと思います。
1.年収をアップさせる3つの方法
そもそも年収を上げる方法は、3種類あります。
1.社内で出世する
2.副業をする
3.転職をする
1の社内出世は、会社に勤め続ければ少額ずつでも昇給していきます。
年功序列色の強い日本企業では、ある程度の年齢になればそれなりの役職がついて、役職手当がつくこともあります。
少し語弊があるかもしれませんが、何もしなくても少額ながら収入はアップするありがたい仕組みでもあります。
しかし昇給で上がる収入は少なく、保険料や所得税等が上がった分で手取り金額はほぼ±0なんてこともあります。
2は本業以外に収入を得られる副業をすることです。
週に5日間本業の仕事をし、休日や本業終わりの時間を利用して収入を増やす仕組みになるので、総労働時間は単純に長くなります。
特に労働集約型という時間を売るような仕事は、長く働いた分だけ収入が得られる仕組みです。
稼ごうと思えば思うほど長く副業しがちになり、体力的に疲弊し、本業に支障をきたす可能性が高くなります。
その点、サラリーマンの副業として労働時間が短くて済む、放っておいても収入が得られるというイメージで、ブログでの広告収入は注目されています。
しかし収入を得られる意味のあるブログを書くには、ネタ探しが重要だったり、ウェブマーケティングの知識が必要だったり、広告収入を得られるようになるまでに労力が必要という点が見落とされがちです。
決して楽して稼げる副業ではありません。
そもそも政府は副業解禁と言っていますが、結局のところは各企業の規則に従うので、できる人とできない人がいるのが現状です。
3の転職することは、ギャンブル性があります。
一般的な転職で選べるのが職務内容の概要的な部分だけで、実際に働いてみないとわからないことが多々あるからです。
例えば私が携わる住宅業界で「設計士募集」という内容に応募して働いてみるとする。
設計という言葉からおしゃれな空間を考えて、つくる仕事とイメージする方が多いと思われます。
しかし中には営業担当がお客さんと打合せしてきた内容通りの図面を描くだけだったり、役所への申請業務を単純作業でこなすだけだったり、イメージとかけ離れた地味な仕事なんてこともあります。
もちろんこれらも設計士として大切な仕事の一つです。
他にも働く仲間が変わるので、人との合う合わないなんてことも一緒に働いてみないとわかりません。
ただし、同じ会社で勤め続けて昇給を待つよりは大幅な収入アップの可能性がありますし、また職務内容のミスマッチを正す機会にすることもできます。
大きく環境を変える機会なので、それ相応のリスクが伴います。
転職は慎重に進めなければならないという認識は必要です。
私は2の複業(※副業とは少し言葉の意味が違います)にも取り組んでいますし、その価値観については別のnoteで紹介していますが、今回ご紹介したいのは転職による年収アップのお話しです。
2.年収アップに向けたマインドセットの大切さ
年収アップや転職となるとお金稼ぎのための行為に思われてしまいますが、大切なのはそこではありません。
年収アップは結果論や社会で自分を計る指標の一つであって、それが目的化してしまうと非常に危険です。
なぜかというと、年収アップが目的化した場合は転職した時点がゴールになってしまい、その後のモチベーションは低下しやすく、新しい職場で期待されているパフォーマンスを発揮することが難しくなりやすいからです。
運動会の徒競走でゴールテープを切った後に、「もう一周全力疾走して下さい!」なんて言われても難しいですよね。
目標となるゴール設定を、どんな仕事をしてどのように社会を豊かにしたり、お客さんの要望を満たしていくかに設定しなければ転職後に上手くいかないと思います。
仕事が嫌になったタイミングでの転職が上手くいかないとよく言われているのも、辞めることが目的化してしまい次の職場でのモチベーションがない状態を生みやすいので、目的意識の違いが転職の成否を左右すると言えます。
ポジティブな転職の結果に併せて、年収がアップするよう抜かりなく雇用契約を整理しておくしたたかさが必要です。
そのしたたかな作業は、自分という商品にいくらの値札を付けて売るのか、その根拠は何なのか示すことと私はイメージしています。
価格の妥当性を示すために、技術の専門家ではない経営者に納得してもらわなければなりません。
自分を知り、社会を知り、様々な観点から自己の価値を伝えられるかは、専門性にとらわれない視野の広さが必要だと考えられます。
3.視野を広げることが可能性を広げる
特定の業界のエキスパートとして重宝されるのが技術職ですが、一方で儲かっている他の業界に移ることで年収を上げるといった転職には不向きです。
エキスパートなので、仕事で磨ける知識や経験は狭い範囲をどんどん深く掘り下げるような形となり、他の業界で応用しにくいからです。
そのため同じ業界、同じ職種で転職しようとしても基本的な給与水準はその業界によって大きな差はありません。
金額面では微々たる差、待遇が多少違う程度のことが大半です。
大きな差を生み出すためには、業界なのか職種なのかを変えなければなりません。
そこで狭い範囲を深く掘るエキスパートとしての経験値を積む方向とは逆に、視野を広げて様々な知見を得る意識が大切です。
例えば住宅設計の仕事をしている私を例に考えてみます。
Step1
より良い設計をするために、本やネットで色んな図面や実例を見たり、先輩の図面を見て学びます。
設計の業務範囲で携わる最低限の視野で、自分の作業デスクの上だけで完結する視野の広さです。
Step2
本やネットだけじゃ実感を持てないので、実際の工事現場をよく見て、手を動かしてつくる職人さんとコミュニケーションを取りながら理解を深めます。
ここまでが技術職同士のやり取りで、上手くつくるための方法の精度を高める視野になります。
Step3
技術職は無から有を生み出し、営業職はそれをお客さんに伝えて、意見を徴収したり、決定を促したりする仕事です。
営業職は、伝え聞くプロです。
素人であるお客さんに対して、専門性の高いことを上手く伝え聞くには工夫が必要です。
住宅営業の場合は、お客さんと複数回やり取りして進めていくものなので、理解力や性格等がわかりやすく、傾向と対策がしやすい仕事です。
この営業という行為を意識できるようになれたら、技術職の一つ外側にまで視野が広げられたということになると思います。
Step4
営業は特定のお客さんに向けた仕事ですが、住宅会社は多くの方に知ってもらうために広告宣伝、企画といった広報活動が必要です。
特定のお客さんに訴求する営業と比べて、より一般化した形にしないと伝わりにくいのが広報です。
技術職、営業職の更に広い視野という立ち位置になります。
ここまでくれば同じ県内の住宅業界を意識しないと捉えられない規模の視野となり、一般的なユーザーが何を求めているのか、それに対して自社がどう応えられるのか、それをどう設計という仕事に落とし込んでいくのかという具合に、地域の需要に対して適切な供給ができるようにもなれます。
Step5
効果的な広報活動となると、専門としている建築の知識だけではいよいよ完結できなくなります。
どのような媒体で、どのようなビジュアル、キャッチコピーで訴求すればいいのか、またHPのSEO対策、SNSの効果的な運用等、広告代理店のアドバイスを得ながら広報活動をしていかなければなりません。
ここまで来ると確実に住宅産業以外の異業種と交流を持つことになります。
設計を中心に五段階で分けてみました。
技術職同士の言葉から、特定のお客さんに説明しやすい言葉、不特定多数の人に伝わりやすい言葉といったように、どんどん違う職能へと広がり、使用する言語が一般化していくイメージがわかるかと思います。
視野を広げることで、物事への捉え方や考え方が変化し、また変化させるために関わる人も変わっていき、その都度新しい発見があります。
Step1から5を順番に辿ってきたのが私の実際の経験です。
まさに住宅というものの捉え方が変化し、自分が好きなことと向いていることに違いがあるという新しい発見をし、それが転職の足掛かりとなりました。
4.好きなことと向いていることの違い
設計という仕事に憧れて建築学科のある学校に進学し、設計士の仕事について、一級建築士の資格を取得しました。
これはあくまでも自分が好きなことです。
自分が好きなことと、向き不向きには違いがあります。
向いていることは、周囲から必要とされることです。
自分が向いていることがわかるのは、経験重ねてからが多いと思います。
技術職系の仕事につく場合は、学校選択の時点である程度の方向性がついてしまいます。
中学生または高校生という無知でピュアな状態で、「建築に興味があるかも、建築が好きかも」といった根拠の無い妄想で方向性を選ぶため、好きであり続けることはできても、向いているかは別問題です。
好きなことに向いているというのが最良な状態かもしれませんが、私の場合は設計という仕事は好きでも、向いているのは広報業務ということが徐々にわかってきました。
その理由はこの通りです。
<設計が好きでも広報業務に向いている理由>
私は細かなチェックがとても苦手で、設計業務においてその性格によるミスで怒られることが度々あります。
図面にはいろんな種類があって、平面図の1ヶ所が変われば立面図や断面図、展開図、仕上げ表等、複数の図面変更が必要になる作業です。
その作業がひどく苦手で、何度チェックしてもどこかの図面に反映し忘れていて、またそれをチェックするのが得意な上司なんかがいて、「おい、また忘れてるぞ!」なんて言われることがしばしばありました。
(設計士ならこの居た堪れない気持ちわかってくれるはず。)
設計が好きだと信じて仕事にしたわけですが、設計という業務内容で求められることの一部に私は上手く適応できていませんでした。
一方で設計という仕事で必要なもう一つの能力として、コンセプト、ストーリーづくりがあります。
それには定評があり、お客さんの要望に合わせたオリジナルのコンセプト、ストーリーを描いて提案し、それをさらに完成後の内見会で来場する他のお客さんに語って共感を得ることが得意でした。
コンセプトやストーリーを一般化していくことで、会社のキャラクターができます。
それを伝えるのが広報業務であり、私には適任でした。
設計という技術職同士の言語を噛み砕き、特定のお客さんの理解が得られる営業的な側面にまで視野を広げ契約に貢献し、さらに内見会で不特定多数のお客さんに共感されるまで一般化して自社の家づくりがどんなものか広報活動ができ、次の設計依頼につなげることができるようになっていました。
最初から上手くできたわけではなく、創意工夫を重ねて視野を徐々に広げたことや、趣味の写真で伝える力が磨けていたこと、学生時代の蓄積で簡単な広告デザイン程度はできなこと等、長い期間や複数の努力による結果です。
そして私は広報業務が特別好きという訳ではなかったのですが、設計をよりわかりやすく、多くの人に伝えたいと視野を広げたことで、向いているということがわかりました。
向いていることを自覚すると行動が積極的になり、徐々に社内で周知され、オンリーワンのポジションを得ることができました。
そして必要不可欠な人材として周囲から頼りにされるようになったことで自己肯定感が高まり、広報業務が好きになっていきました。
好きなことを始めるのではなく、向いていることをやり続けることで、結果的にその仕事が好きになり、好きなことに向いているという最良な状態を迎えることができました。
そうなると勢いは増していき、評判は社内だけでは止まらず、広報業務で協力してもらっていた異業種の企業からうちに来ないかとお誘いをいただくことができました。
ここで大事なことは、あくまでも私が頑張ったのは本業の仕事の延長線上として向いていた広報業務であり、建築士という技術的な裏付けがあったからこそ強く発信できたという点です。
全く違う分野で頑張るよりも、今の業務内容を中心に少しずつ視野を広げていくことが効果的と考えられます。
そうすることで技術職で得た知見が裏付けとなり、説得力になります。
5.選ぶ側か選ばれる側か
視野を広げて、向いていることを見つけ、技術的な裏付けで説得力を持った人材になれたなら、年収アップの転職市場に出る準備は整いました。
ここで大切なマインドセットがあります。
企業があなたを選んでいると同時に、あなたも企業のことを選んでいるのが雇用契約だということです。
新卒向けセミナーで、企業に選んでもらえるように清潔感のある身だしなみや、好感の持てる話し方などを教えてくれます。
それらは選んでもらうためではなく、社会常識を教えているだけだとお気づきでしょうか。
雇用契約においては、双方が選ぶ側でもあり選ばれる側でもあります。
契約行為なので、そこに優劣や一方的なものがあってはいけません。
選ばれるために自分を繕い、入社後にこんな人材を雇ったつもりはなかったと会社が嘆くことがあります。
その逆で、会社が良い条件ばかりチラつかせ、悪い条件については薄っすらとしか説明せず、働いてみたら悪い条件で苦しめられて退職なんてこともあります。
これらのミスマッチが起きないように、雇用契約条件をしっかりと相談しなければなりません。
そのためのマインドセットが、企業があなたを選んでいると同時に、あなたも企業のことを選んでいる対等な契約行為であるという認識です。
「年収交渉したら不採用にされるのではないか?」
「条件を事細かく交渉したら印象が悪くなるのではないか?」
これらの質問は雇用契約後のミスマッチを防ぎ、その後のトラブル防止になるため、積極的に行うべきだと私は考えています。
なぜなら雇用契約後のトラブルの方が損害が大きくなるからです。
双方のリスク管理のためにとても大切なことです。
6.まとめ
地方都市、技術職でも年収をアップさせる方法はあります。
年収アップの方法は昇格、副業、転職の3つがあり、今回は転職についてご説明しました。
転職の目的は年収アップに絞ると危険です。
転職後の職場で何をしたいのかを目的にし、その上で交渉によって年収アップを掴み取るのが成功の秘訣です。
特定の業界のエキスパートとして重宝されるのが技術職ですが、同じ業種での転職では年収アップや雇用条件の大きな変化は見込めません。
そこで視野を広げて、身につけた技術を他に活かすことに年収アップのポイントがあります。
視野を広げ、知見を一般化し、その過程の中で今まで交わることがなかった仕事の人から刺激を受け、より視野を広げられます。
そうすることで自分の技術を他にも活かす術が発見でき、年収水準の高い職種への転職の道も見つかります。
また好きな仕事が、必ずしも自分に向いている仕事というわけではありません。
向いている仕事は、周囲に必要とされる仕事であり、その仕事にこそ新しい道を切り開くヒントがあります。
向いている仕事を頑張ることで、周囲からの評価が高まり、自己肯定感が増し、自ずと好きな仕事になるはずです。
最後に、転職交渉時に大切なマインドセットが、企業があなたを選んでいると同時に、あなたも企業のことを選んでいるということです。
企業にとっても、個人にとっても後々の不利益を少なくするために大切なことなので、決して気に入られようと嘘をついたり、変に遠慮したりしないでください。
これは一級建築士の私が、webマーケティング会社に転職するにあたって考え、経験したことです。
今よりも年収はアップしますし、やってみたい事業にも取り組むことができます。
働くことに対して、主体的かつ一生懸命取り組むことで、自分の働きたい環境や条件は生み出せるはずです。
少しでも私の経験が誰かのヒントになれば幸いです。
建築と写真で素敵な生活のサポートをしたい