人事の仕事をどうやって学んでいるのか

私はどうやって人事の仕事を覚えてきたのだろう。
そして、何をどう学んできたのか。
振り返ってみよう。

人事担当者になる前

大学を卒業して入った会社で最初の配属は総務部でした。社内庶務の仕事がメインでしたが、一部労務の仕事を手伝っていました。社会保険の資格取得届を作成して届け出る。毎月の給与計算のデータ作成の一部を担当する。当時まったくシステム化されていなかった紙ベースの出勤簿を集め、勤怠管理作業の一部を担当する。
やっているのはそれぞれの業務の一部。担当というかそれはただの作業でしかなく、社会保険の制度の概要なんてまったくわからなかったし、給与計算の仕組みもわからないし、賃金規程など当然見たこともありません。見せてももらえませんでした。全体像も何もわかりません。
ただ言われたことをやるだけで、他の事業所に行くのもただのお遣いでした。その毎日に学びなどなく、仕事に対して何の理解もありませんでした。令和の今なら、そんな会社すぐ辞めてしまえっていう状況ですね。

そこから何を学んだかと言えば、「誰かが教えてくれるなんて思ってはいけない」ということでしょうか。

社労士資格取得に挑戦する

何をどう学べばいいかもわからない時に、やってみようと思うのが資格の取得です。漠然と将来が不安になった時に誰でも一度は考えることかと思います。
よくわからない資格ビジネスもありますので、挑戦するならやはり権威ある国家資格と思い、社会保険労務士試験に挑戦しました。予備校に20万円払い、講義を受け大学受験以上に勉強し無事に合格できました。
・・・っていうことは以前の記事に書きました。

法律や制度の趣旨・目的を理解せよ

さすがに20万円払ってるだけあって、予備校の授業はとてもわかりやすいです。予備校なので受験対策の勉強ですが、法律や制度の趣旨目的を理解することを講師に何度も言われました。労基法の根本的な考え方、社会保険制度やそれぞれの給付の役割をかみくだいて解説してもらえたので、きちんと「理解する」勉強でした。独学ではできないだろうと思いました。
(ちなみに、現在私が社保の手続きを後輩に説明する言い方は予備校の先生の説明を真似てます)

試験に合格してすぐに社労士に登録するつもりはありませんでしたが、合格者を対象とした事務指定講習を受講し、通っていた予備校が有資格者向けに開講している実務講座を受講しました。
社労士受験で勉強したことは今でも労務の仕事において物事を判断するベースになっており役立っています。
少しずつ覚えるのではなく、一連の法律や制度を1年間で一気に頭に叩き込んだので、知識を体系的に頭に入れることができたのが良かったです。

その後、FP2級と第2種衛生管理者を取りました。法人向け生命保険の契約とかで生保会社の人と話をすることがあり、FPの知識は役に立つはずなのですが、こちらは知識として定着はしませんでした。

人事担当者になる

その後私は何年か現業部門で販売促進の仕事をしまして、その後人事部に異動となりました。
担当者は私ともう一人の後輩(人事経験半年)の2名です。

社会保険手続き・給与計算・就業規則改定の仕事

前任者の業務が完全に属人化しており、なんの引き継ぎも過去の資料もないまま私の仕事は始まりました。大変でしたが、これまで勉強した知識をフル稼働させ、何がどうなっているのか自力で把握しました。勉強していた時期から時間が経っていて細かいことはもちろん忘れていましたが、きちんと「理解していた」ことは頭に残っているものです。現実の目の前の仕事と過去に勉強したことがどんどん結びついてゆきました。社労士の勉強は法律の勉強なので、「昔からやってることのようだが、ここは法的に問題があるのでは?」ということが浮かび上がるように見えてきました。
問題に対し、できることから改善してゆきました。
労務では細かい法律改正に対応してゆかなければならないのですが、おおもとの考え方を一応わかってるつもりなので、行政が作った文書を読めば何を言いたいのかはさっと把握できます。良かったよかった、勉強しておいてよかった。

採用・研修・人材配置・社内トラブル対応の仕事

この記事で言いたいのはここからなんですけど、
採用とか人材配置とか、結果が見えないような、何が正解かもわからない業務が人事にはあるわけです。
社内トラブル対応というのは、社員がモンスター社員化してしまうとか、従業員同士のトラブルとか、ハラスメントとかです。

人事として私は、円滑に会社で人が動くようにしなければならない。
そのために必要な経験・ノウハウ・考え方をどうやって身につけているんだろうかとあらためて振り返りまして、

↓あらためて考えると、この順番の繰り返しです。

  1. とにかく社内の一つ一つの事例に、自分の頭や会社のリソースを使い全力で取り組む
    例えば、新卒採用のインターンシップを始めるので新規にプログラムを作る、という業務であれば自分の会社で何ができるか考え他の部署の人にも意見を出してもらい形にして実行。あるいは人材配置であれば人事担当役員と徹底的に話し合い異動を発令。たまに発生する社内トラブルは当事者に真摯に向き合う。

  2. 事例に対しての気づきを必ず言語化してアウトプット
    なぜうまく行ったのか、何がダメだったのか。気づいたことを言葉に出して徹底的に人事の他のメンバーに話すようにしています。相手にする社員(これから採用する人も)は人間なので一人一人違うのはもちろんですが、いろいろな対応や施策について何が良かったのか、どうすべきだったのかを話すほどにだんだん一般化してゆきます。決してマニュアル化できるものではないのですが、この人はこういうタイプ、この人はこの手の考え方、この部署のスタンスはこうだ、それについてこういうふうに進めれば良い、というのがだんだん標準化されて説明できるようになってきました。

  3. 本を読んだり、他社の事例を聞いたりして、ノウハウ化・持論化
    人事に関する本は色々あって、理論を解説したり、他社の成功事例が書いてあったりします。そういった本を読んでゆくと、自分の経験や気づきと共通していることが多いのです。「おお、うちの会社でもやってるじゃん。一緒じゃん。間違ってなかったんだ。」って。
    外部から得た情報が自分のやっていることと同じであると、あらためて言語化され、定義づけられて、その経験がスキル・ノウハウに変化してゆきます。そこに自分なりの考えが加わると持論になります。

    その繰り返しです。

本を読めば、成功事例が書いてあったりするのですが、その通りにやってみようなんて思いません。トヨタ式のなんとか、なんてうまくいくわけがない。うちの会社はあらゆる点においてトヨタではないのだから。
参考にしましょう、ってことなんでしょうけど、参考にするってなんだ?
結局は自分で当事者意識をもってやるしかないんです。(本に書いてあったり人から聞くのはたいてい成功事例ですが、本当に知りたいのは失敗事例ですね)
繰り返しになりますが、人事の仕事に正解なんてない。それでも、「そうか、そういうことか。そうだったのか。」と納得感が生まれた時は気持ち良いです。ひとり人事の人は自己完結になるのかもしれませんが、人事の仕事は、チームで取り組むべきで、人事の人たちが共通認識として話し合いの中であらたな知見を見出した時は快感があります。快感っていうのは少し変ですが、そういうのが私にとっての人事の仕事の学びであり、仕事のやりがいのように思います。

学んだことがすぐ次に活かせるかというとそうではないと思っています。やはり人のことなので、千差万別。ただ、いろいろな気づきから学び、そして知見・持論に変わってくると、何が起こっても落ち着いて対処できるようになり、新しいことをやるにしても論理的に考えることができるようになってきました。

ゴールはなく価値観は変わってゆくので、いつまでも正解のない仕事だと思っていますが、今後もいつも新たな気持ちで取り組んでゆこうと思います。

というと、すごく志の高い人間のようですが、私はそんな人間ではなく、人事の仕事が好きなわけでもすごくやりたいわけでもない。仕事だからやってるんです。
なので、ちょっと引いた目線で、会社全体を見れるようになっていきたいのが私の目指すところです。





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