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地域内循環を目指した場づくりの話

現在作っている音(音楽)のための施設FOR/Mは「新しいものを全て使うのではなく、なるべくそのままだと処分されるようなものを使って作っていきたい」というコンセプトで、今回のプロジェクトのパートナーのズ工(ズコウと読みます)と進めている。
それはこの物件が古いビルであるという背景から施工前の準備段階でそうしたいと両者で思うようになっていた。

日本の人口は減り続け、空き家も多くなる中で、新築を作る意味は難しくなっているという話をズ工から聞いていたのがきっかけであるが、僕自身、以前から自分の地元や色々な地方で空き家、朽ちていくのが惜しいくらいの良い建物を多く見たり、そういう地域のかたから課題であるという話を聞いていたので同様に思っていた。

yuinowaは築85年の元呉服屋の空き家をリノベーションした事例(茨城県結城市)

そのような物件に手を加え、活用し、非常に良い場所にしている事例見た時に、「ああ、この物件が未来に引き継がれてよかったな」とノスタルジーを感じていた。

僕自身、そういう課題感から地元茨城県で関わったyuinowa と言う店舗と住宅の一体型の見世蔵と呼ばれる歴史的な建物を街に残すためにリノベーションし、コワーキングスペース、レンタルキッチン、シェアスペースとして復活させるプロジェクトに関わっていた。
その時に感じたことも今回生かされていると思う。

古いビルと呼ばれるの定義がどのぐらいかはわからないが、調べると、ビルの耐用年数で見たときに以下のように設定されている。

出典 ビルは何年で老朽化する?耐用年数が過ぎたら建て替えが必要なのか
https://www.kasegroup.co.jp/owner/column/service_life/

「古いビルには古いビルなりの残し方、使い方、そして最終的には建物の終い方があると思う」というズ工の意見を聞いて、改修にはどういうものを使いたいかという今回のコンセプトが決まった。

このコンセプトは僕らの運営するPenguinmarket Recordsの理念にも共通している。
それは建物が早いサイクルで消費される状況と、音楽アーティストが早いサイクルで音楽シーンに消費され、アーティストが活動を断念せざる状況が非常に似ているという点で、僕らはアーティストが直面する環境をなんとか改善していきたい想いがある。
※資本主義経済、経済合理性の中では致し方ない部分があるが、本来音楽を芸術/文化活動と捉えた場合にそれでいいのか?という疑問があるという話は長くなるので別の機会で書こうと思う。


さて、FOR/M物件の作り方に話を戻すと、具体的にはこの3つ
①なるべく建物に元々あったものを活かす
②材料を施工で使う場合は古材などそのままだと処分されるようなものをなるべく使う
③解体/施工でいらなくなったものをなるべくゴミとして出さないようにする

①は物件の随所で工夫しつつ進めている。
②はFOR/M作りの考えを伝え、周りに声をかけることで、ありがたいことに古材などをいただいたりしている。もちろん新しいものも使っていないわけではない。
③は今までの使い方では利用できないけど、使い方を変えると今後の物件では使えるようになったり、FOR/Mではない他の場で使えるのであれば積極的に渡すようにしている

この3つにプラスアルファし、
できれば僕らの地域内でいらないモノを、そのモノが再度活躍できる場所、人へ巡らせていきたい(地域内循環


言うのは簡単だが、やるのはなかなか難しい。
その都度、デザイン上そのモノがはまるか?を解決するためにアイデアが必要であるし、地域内で受け渡しができる関係性、コミュニティが必要である。
「FOR/Mが○○を欲しいと言ってるよ」と言う口コミで、モノが実際にきたりする。
大切なのは、モノと言う物質を引き継ぐだけでなく、そのモノにある背景、ストーリーも引き継ぐことである。
そのモノに関わった人たちがFOR/Mに来てくれると素敵だなと。

また、地域内循環は長距離輸送などでかかる金銭的コスト、環境負荷を軽減するメリットもある。
そういう綺麗な理由だけでなく、正直なところ、施工にかかるコストの節約にもつながるのが、僕らにとっては大きいのも事実である。

直近でいただいたハイスツールは、京都市内で移転するカフェで不要となったもの。
解体現場から大量の古材をいただく

最後に、施行中の今、また今後も長い間、使う人たちのニーズによって場所をアップデートする際にはこのコンセプトでやっていきたいので、捨てようとしているものがあったら、まずは僕らに一声かけて欲しい。
※後日、欲しいものはリストでまとめて公開する予定

そして、地域内循環でできる場っていいなと感じてくれる人が一人でも増えれば嬉しい。
※地域内循環ってモノだけではないよねって話もまたしたい書きたいと思う。

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鈴木哲也/Tetsuya Suzuki
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