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【掌編小説】パフェ攻城戦

※※ヘッダー画像は bluedaisy さまより

 パフェというのは、城のように複雑な構造を持っている。

 下地の層にはスポンジケーキやムースの石垣。
 高級なものだと、ティラミス、タピオカ入り紅茶のムース、ミルフィーユ、苺のババロアと、4層にもなる。一世を風靡したスイーツたちが積み重なる様は、ローマの城壁のような歴史と伝統を感じさせる。
 マンゴー、オレンジ、バナナ。器の外周はカットフルーツで彩られていた。中心にはホイップクリームで化粧したプリンの城。白鷺城よりは美しくない。脇にはポッキーの物見櫓が建っていた。
 そして天守閣にはアイスクリーム。

 パフェの構造は複雑だ。攻め落とすには忍耐と知恵を要する。

 私は外周のカットフルーツを少しずつ食べ始めた。
 カットフルーツは各個撃破する必要があるからだ。天守閣のアイスは時間とともに溶けていく。外周のフルーツは城壁であると同時に、溶けていくアイスの防波堤にもなる。城外へアイスが氾濫するのは好ましくない。上手にアイスの流路を誘導せねばならない。

 治水は中華皇帝の命運をわける。名君になりたければ無計画にパフェを食べてはならない。少なくともアイスクリームを氾濫させるようでは、革命待ったなしだろう。

 溶けていくアイスの流路を制御すると、今度は石垣を攻めていく。
 苺のババロア、ミルフィーユ、紅茶のムース、ティラミス。下地層はどれも強敵ぞろいだ。穿つのは容易ではない。
 スプーンで掘り続けていく塹壕戦。甘味というマンネリ。膠着状態を打開するため、溶けたアイスクリームを最大限に利用する。器の底に流し込んでの水攻めだ。
 同時に残しておいたフルーツを甘味の奈落に突き落とす。マンゴーやオレンジの酸味はマンネリを打破する兵器である。とはいえフルーツの大量投入は悪手。味を損なう可能性が高いからだ。

 下地層の制圧が決定的となった。次はアイスとプリンを一挙に攻める。
 物見櫓のポッキーをついばみながら、容赦なくホイップクリームの漆喰を食い破り、完膚なきまでに城を破壊していく。すでに半壊しているプリンとアイスを跡形もなく食べ尽くすと、私は残党のフルーツたちを始末した。

 これにて完食。ごちそうさまでした。

【完】

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