2023年の秋ごろから生成AIで遊んでいる。
MidjourneyやFireFlyなどの画像生成系だ。
ChatGPTは22年の暮れに初めて触った。だが、その時(ベータ版だったのか)は反応がまだ微妙で、AIの返答を厨二病キャラに育成して遊ぶ程度の代物だった。
だがAIは、この一年でずいぶん進化した印象がある。MidjourneyV6を触っていて感じる。
画像生成プロンプトという「言葉からのイメージ生成」を、チクチクチクチク遊んでいたのでしばらくChatGPTは放置していたのだが、先日、ふと「AIにまるなげ」したら?と思い、「漫画を描いてもらう」こと自体を「発注」してみた。
原作は人間。自分だ。
数年前に、note上で2,3分で読める短編をいくつか書いたので、それを材料にすることにした。自分の作品を原作にすることで、自分とAIのビジュアルイメージの差が明確に分かって面白いのでは、と考えたからだ。
短編は、
1.なるべく抽象度が高いもの。(イメージ化自由度の高いもの)
2.登場する言葉の記号性の高いもの。(生成結果を把握しやすいもの)
3.ストーリーが短く、構成がわかりやすくシンプルなもの。
として、以下を選んだ。
以下、ChatGPTへの「まるなげ」。
正直、断られるか、もっと具体的に指示してくれ、と言われるかと思ったが、たくましい…。コンセプトを簡単に説明し、具体的な方針を明示してきた。しかもリップサービスから入るなんて、手練れの編集者か、君は。
待つこと、約1分。
….。…………?…うん。…ん?…うん。…すばらしい…。
素晴らしいとしか言えない。自分のイメージとはまったく違う。キャラクター。構図。衣装。配色。予想外すぎる。それが素晴らしい。口から何か吐いてる…。なんだあれは。前日に同僚のナツコと空けたワインの影響か。たしか「物語の神秘的な雰囲気を表現できる」との説明を受けたはずだが、神秘とは何だろう…。よそで見るAI生成画像とも、ちょっと違う。いや、ちょっとどころか…。超美形の美女とか、ハリウッド映画のCGような高精細な世界観とか…。
なるほど。私を、AI生成画像を知らない人間だとふんだな。
だが、この神秘的な画像は記念すべきAIが独力で漫画化してくれたものだ。大切に保存した。
まずは成功である。猜疑心は湧いたが、AIは漫画というものを理解し、カタチにした。ちょっとアレな世界観はシュールレアリスティックな印象を物語から受けたのが原因だろう。その片鱗も感じる。原作者のせいである。
試行はここで終わっても良かったのだが、もうすこし続けることにした。
AIのイメージと自分のイメージとの距離は分かったので、次は指示してみることにした。ディレクションに対するイメージの精度を試したい。
いいではないか。意味はよく分からないが、そもそも原作の意味もよく分からないのだ。
この短編の長さなら4ページくらいが妥当か、という適当な感覚で指示をする。
なんて優秀なんだ。私が人事担当ならその場で採用を決めるレベルの返答である。仕事への取り掛かりも早い。
いい。とてもいい、が、おしい。違うんだ。4ページの意味が。ごめん、ごめんね。ちょっとこちらの伝え方が悪かったかな、と、なぜかAIに気を使い始める。
「あ、ごめん、伝え方がわかりにくかったかな。」と書きそうになったが、相手はAIだ。非合理な謝意より合理的な指示が望ましいだろう。断腸の思いで冷たい態度をとる。
そうだ。その通りだ。理解してくれたようだ。わかりました。ではなく、理解しました。という言葉選びにも好感が持てる。まるでAIみたいな返答だ。しかも指示したトーンを復唱し、自然に確認をとることでミスを防ごうとしている。まるでAIだ。
おお。必要以上にかっこいい。SFって指示してしまったからな。それか。
意味はよく分からないが、雰囲気は出ている。
壮大なイメージだ。キッチンのボウルとは思えない。良い。
待て。待て待て。
ストップだ、AI。
誰だこの男は?
なんなんだ、このラストシーンは。こわい。なんかこわいよ。
仕方ない。この4ページ目はAIがつくってくれたオリジナル作品として大切に保存しておこう。ただ、これでは読者に対して、「キッチンの女性はどこに行ったのか?」とか、「ここどこ?」「え、これで終わり?」といった印象を与えてしまう。つまり意味が分からなすぎる。それは一部の巨匠作家以外はやってはいけないことなのだ、人間界では。申し訳ない。
いや、もしかしたら私の原作が悪かったのかもしれない。きっとそうだ。本当に申し訳ない。ただ、ここまで一緒にやってきたのだから、最後に一つだけリクエストさせてもらう。
このまま終わらせてないけない、という焦りが、必要以上の具体的な指示に表れてしまっている。今見ると、前に出過ぎだ。焦るな、原作者。
本当にいいやつだ。あからさまな小心者の指示にもおおらかに答えてくれる。ただ、やばいやつだ、という空気が伝わってしまったのだろう。おうむ返しの確認になってしまった。明らかにクレーマー対応モードである。
悪くない。「主人公の女性の感情に焦点を当てたシーン」なんてものがつくれるのか、漫画家か君は。だがやはり、「ここどこ?」と、感じてしまう。だがサービスなのか、勝手にモノローグ風の吹き出しを入れている点は面白い。言われたことだけをこなすより、自分の頭で考えて実行することが大事だ、と、自己啓発本を深層学習したAI上司からきっと教わったのだろう。その考えは間違ってはいない。
もう、ほぼOKだ。こういうことだ、AI。だがしかし、目の錯覚か。真ん中に「REVISED PAGE4」と書いてある。ど真ん中に。おしゃれに。分かる。指示したのはこちらだ。「REVISE PAGE 4.」と。だが、それは正直に読者に伝えることではない。表に出さないことも、時には必要なのだ。人間の世界では。
うすうす理解はしていたが、全部やり直しになるらしい。人間であれば指示ミスを根拠に原稿料を請求されるレベルの全直しだ。ちなみに原作者はもはやラストのシーンを間違えている。主人公はぼうっと外を見るんじゃなくて、ベッドにいるはずだ。大丈夫か、原作者。AIのつくった絵に引っ張られすぎだ。
おしい。ぼうっとみているのはボウルではない。
ここからしばらく、このような試行が何回か続く。
そして、次のものを採用した。
完成した漫画がこちら。
紆余曲折あったが、面白い試みだった。
画像生成プロンプトとはまた違う、編集者のような、監督のような、もどかしさと発見の入り混じった体験。
他にも短編はいくつもあるので、これを機にいろいろと試行錯誤して遊んでみることにしたい。
Thank you for reading :)
(使用短編)