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哲学を始めるときに読む記事


こんにちは。哲学チャンネルです。

哲学系の発信をしていると、視聴者の方から「哲学を勉強するためには何から始めるべきか」というご質問を多くいただきます。
このご質問に対する答えにいつも窮していたということもあり、今回哲学の入り口をまとめることにしました。独断と偏見による意見だということを前提に、哲学を趣味にするきっかけにしてもらえたらなと思います。


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Mofuwa
農おおはし






はじめに


哲学に興味を持った。とりあえずなんらかの本を読んでみた。

このようにして哲学の世界に足を踏み入れようとする方は多いと思いますが、途中で挫折をしてしまうことが多いのではないでしょうか。
そこには「最初に読んだ本が難しすぎた」とか「哲学者や思想がいっぱいありすぎてよくわからない」とか「全部網羅したいけど途方もなくて心が折れた」とか「ある本を読むのに前提として読んでいないといけない本が多すぎる」とか、色々な理由があると思うんですね。

まぁ実際にそういう要素があり、それが良いところでもあるのが哲学ですから、それらを完全に排除するということは難しい。というかそれらを排除したら哲学の面白さもなくなってしまいます。が、難しいこと・やややこしいことが原因でせっかくの入り口が閉ざされるのも勿体無い。

そこで「できる限りスムーズな導入ができそうな入り口」を厳選して紹介します。結論からいうと、理想の入り口は「好み」に依存します。究極、好きなら続けられるわけですからね。だから「好きかつ入りやすい」が大事な条件。

本記事では、大きく3つの切り口(とおまけ)を用意して、それぞれにおいての導入に適した哲学者や書籍を紹介します。読む本や学ぶ哲学の参考にしていただけると幸いです。(なお、哲学チャンネルにて解説したことがある項目に関してはそれぞれリンクを用意しておきます。ご興味があれば動画を見て判断してください)



分野で選ぶ


一つ目の切り口は「分野で選ぶ」です。一口に哲学といっても、その中には色々な分野が混在しています。ざっくりとジャンルを分けることによって「この分野が好き!」という発見があるかもしれません。
主要な分野を並べてみましたので、ビビッとくるものを探してみてください。



形而上学


哲学といえば、まずは形而上学でしょう。というか一般には形而上学のことを哲学と表現しているような気がする。本当は違うんですけどね。

形而上学は一般に「現象世界を超越した本体的なものや絶対的な存在者を、思弁的思惟や知的直観によって考究する学問」などと説明されますが、要は科学的方法でわからないものを探求する学問です。
主要な対象は”神”や”魂”や”世界そのもの”などですね。死んだ後はどうなるとか、宇宙の外はどうなっているとか、完全な美は存在するかとか。気になってしまうと夜しか眠れないです。私は小さいときにそんなことばかりを考えていたものですから、他のみんなもそうなんだと勝手に思っていました。でもそんなことはないんですよね。そういうことを気にしないで生きられる人(良い意味で言ってます)もたくさんいる。一般的に「考えたってしょうがないこと」を考えたり気になっちゃったりする方は、形而上学に向いているんだと思います。
※解説動画

知識の蓄積よりも、直感や思索による探求がお好きな方に好まれるジャンルです。考えすぎて夜眠れなくなっちゃう諸君にもおすすめ。

導入として最適な哲学者はアリストテレスやプラトン。

以下、推奨図書を羅列します。


・入門に最適な書籍

※「児童書」の皮をかぶった哲学通史を学ぶ本。ストーリー仕立てかつ平易な表現で古代ギリシアからの哲学を解説してくれているので導入に最適です。

※日本におけるウィトゲンシュタイン研究の第一人者である野矢茂樹先生の本。哲学で何が問題にされているのかを信じられないぐらいわかりやすく述べてくださっています。別著『はじめて考えるときのように』もオススメ。


※この本自体が「哲学を学ぶために読むべき本を紹介してくれる」機能を持っています。あらゆるナイスな選書から本文が紹介され、それを理解できるように丁寧な解説がされています。好きな哲学者探しにもオススメです。



・原著厨(褒め言葉)への推奨図書

※その名のとおり形而上学の基礎となった著作。当時、形而上学は「第一哲学」と呼ばれていて、まさに全ての学問の基礎とされていたわけです。「哲学用語」の章を読み”アルケー”とか”ウーシア”とか眺めているだけで、なんとなく哲学している気分が味わえます。 解説動画

※アリストテレスと並ぶ哲学の大家であるプラトン。「愛とは何か」というテーゼから、プラトンの十八番であるイデアに辿り着く流れは垂涎ものです。
解説動画

※これまた哲学の大家デカルトの代表的著作。原題は『第一哲学に関する諸省察』です。哲学の基礎の基礎を再構築しようとした彼の執念には、美しさすら感じます。 解説動画




倫理学


多くの方が学生時代に触れたことのある倫理学。
人間における道徳規範や善悪の基準を探求する学問です。倫理学に特有のものではないのですが、トロッコ問題なども道徳を考える上で重要な思考実験です。何が善い行いで何が悪い行いか、それをもとに社会はどうやって運営されていくべきか。これからの時代により必要になる学問だと思います。

善悪や正誤という抽象的な概念を扱う学問ですから、そのような抽象的思考が好きな方。社会的な答えのない問題について議論するのが好きな方。トロッコ問題のような矛盾をはらむ思考実験が好きな方などにおすすめの学問です。 解説動画

導入として最適な哲学者はジョン・スチュアート・ミルやサンデル。

以下、推奨図書を羅列します。



・入門に最適な書籍

※おそらく、はじめて体系的に倫理が語られた本。本書で語られる「中庸」という概念は、現代にも通用する非常に大事な考え方だと思います。
解説動画

※一般に「物自体」で有名なカントですが、倫理の分野にもとてつもなく大きな影響を与えています。理解できそうで理解できない「定言命法」は、深く学ぶ価値のある概念だと思います。 解説動画

※ある世代の認知度が以上に高いサンデル。彼の本はなんと言ってもわかりやすいんですよね。そりゃ人気出るわな。社会問題を思考実験に置き換えて思索したい人にもオススメ。 解説動画

※サンデル的な解説を小説にすることでさらにわかりやすくしてくれているような本。飲茶さんってどうしてこんなに学問をエンタメにするのが上手(褒め言葉)なんだろう。


・原著厨(褒め言葉)への推奨図書

※エティカ(エチカ)は直訳すると「倫理」。まさに倫理の本です。が、スピノザが示す倫理は他の哲学者のそれとは一味違います。いや、何もかもが違います。個人的に大好きな本です。 解説動画

※こちらは超正統派。今読むと当たり前のことも数多く書かれているけど、それはこの本が当たり前にしてきたものが現存するからなのでしょう。倫理を勉強するなら必読の一冊。 解説動画

※はっきり言って難しいです。私は何十週もしましたがいまだに5%も理解できていません。多分ですけど、これは理解する本ではなくて感じる本です。個人的には『ツァラトゥストラ』よりも好きです。  

※どこからどう見ても正しそうなのに、実際運用するとなるとさまざまな問題が現れる功利主義。社会の問題を議論する際に「功利主義的な立場に立つと〜」みたいな主張って絶対に出てくるので、ある程度は押さえておきたいところ。 解説動画




論理学


すでに哲学の領域を離れ始めているきらいのある論理学。その名のとおり、この学問では言語における論理が研究されます。哲学においては思考も議論も大変に重要なわけですが、その営みがそもそも正しく行われているのか検討するのが論理学です。そういう意味で、哲学を下支えするような性質を持った分野と言えるでしょう。AはAであるは論理的に正しいとか、AかつAじゃないは矛盾しているとか。超厳密に確認していく様はとても刺激的です。

理路整然とした論理的な考え方が好きな方、数学のようにルールがしっかりしている学問が好きな方、クリティカルシンキングの力を身に付けたい方などにおすすめです。

導入として最適な哲学者はバートランド・ラッセルやゴットロープ・フレーゲ。

以下、推奨図書を羅列します。




・入門に最適な書籍

※またまた登場野矢先生。まぁウィトゲンシュタインの研究者ですからね。論理学はど真ん中です。紹介としては本書の「はじめに」で書かれている文を載せるのが適切でしょう。
「本書は、文字通り、ずぶの素人のための原題論理学への初めの一歩である。そして、おそらくはこれが終わりの一歩となるだろう読者を想定している。それゆえこれは千里の道の一歩ではない。ただ、この一歩のための一歩である」

※論理学を題材にしたミステリ小説。章ごとにだんだんと高度な論理学が紹介されるので、段階的に「論理学ってこういうものなんだ」を知ることができます。まぁ推理に論理学を使うのって若干無理があるんですけどね。

※戸田山和久先生による論理学の実践的入門書。古典論理学から現代論理学までのある程度の知識をガチでインストールしたいならこちらがオススメ。例題などを踏まえながら実践的に学習ができます。



・原著厨(褒め言葉)への推奨図書

※数多くの人間を闇に葬ってきた魔導書。これを理解することを一生の趣味にしても良いのではないかと思います。あんなに簡潔な文章で、それなのに理解できないってどゆこと? 解説動画

※微積分を発明したことでも有名なライプニッツ。論理学の方法論だけでなく「論理学が必要なのはなぜか?」「そもそも論理とは何か?」みたいな根源的な疑問についても詳しく検討されています。 解説動画

※論理学の大家フレーゲの著作集。フレーゲの思想もそうなんですけど、なぜか本書を読むとヒュームに興味を持っちゃうんですよね。そういう寄り道もオツですな。




政治哲学


哲学のあらゆる分野の中でも特段実用性のある政治哲学。現在の様々な政治的スタンスは、政治哲学の営みによって形作られてきたと言っても過言ではありません。倫理学ととても似た性質がありますが、より具体的な事象に対してもアプローチするのが特徴です。結局どんな政治が一番良いのでしょうね。難しい。難しいだけにオモシロイ。 参考動画

社会問題に関心がある方、歴史や政治自体に興味がある方、現実的な解決策を模索するのがお好きな方などにおすすめです。 

導入として最適な哲学者はホッブズやロックやルソー。

以下、推奨図書を羅列します。



・入門に最適な書籍

※『暇と退屈の倫理学』がベストセラーになったことでも有名な國分功一郎先生の著作。ホッブズからカントまで、非常にわかりやすく政治学(特に社会契約説)が解説されています。

※ちょっと著者の思想に偏りすぎているきらいがあるけれども、わかりやすさはピカイチです。『これからの正義の話をしよう』と重複する箇所も多く見られますが、後半はわりとこの本だけの主張。

※政治哲学初学者向けの本としては、これ以上わかりやすいものを知りません。困ったらこれ読んどけ的な本。



・原著厨(褒め言葉)への推奨図書

※トマス・ホッブズの主著。「自然状態」「自然権」「万人の万人に対する闘争」などは、政治的な議論をしていると当たり前のように現れる概念なので、ちゃんと押さえておきたいところ。

※善いとは何か?正義とは何か?「善いことは正義だ」という当たり前っぽい主張を一旦保留して、善と正義を個別に検討した本。「無知のヴェール」は数ある思考実験の中でも個人的にイチオシ。 解説動画

※ルソーの主著。東浩紀さんの影響もあると思いますが、最近結構耳にすることが増えた「一般意志」。この概念を提唱した本でもあります。

※ロックの主著。『市民政府論』と呼ばれることもあります。アメリカ独立宣言にも影響を与えたとされていて、現代の政治とは切っても切り離せない内容です。ロック、ルソー、ホッブズは読んでいて損はない。



言語哲学(分析哲学)


言葉が世界をどのように表現しているのかを探求する言語哲学。この中に分析哲学も含まれます。私たちは言葉でものを考えます。であるならば、言葉が世界を正しく表現できていないと確固たる思考など不可能です。だからまずはじめに言葉を厳密に分析しなくてはならない。論理学と似ているように感じますが、論理学がその形式を扱うのに対し言語哲学は言語そのものを扱いますから、全然違うものです。

普段使用している言語に言いようのない違和感を感じている方、人間同士がどうやって理解し合っているのか気になる方、AIと人間の言語に対する理解の違いを研究したい方などにおすすめです。

導入として最適な哲学者はクワインやチョムスキー。(最近発展目覚ましい哲学なので、基本難解です)

以下、推奨図書を羅列します。



・入門に最適な書籍

※前提知識なく言語哲学のイロハが学べる本。解説本というよりかは問題集といった構成で、問題について考えながら言語哲学の姿勢をインストールすることができます。

※「欧米でこれだけ流行っている分析哲学が日本ではなぜ認知されていないんだ!」がモチベーションで書かれているだけあって、熱いです。わかりやすい内容ではないけれど、興味を持つきっかけにはなるはず。

エッセイ形式で書かれているので、感覚として分析哲学のアレコレを身につけやすい本。後半では分析哲学への批判も掲載されていて、多角的な視点を得ることができる。


・原著厨(褒め言葉)への推奨図書

※後期ウィトゲンシュタインの大著。個人的には『論考』よりは掴みやすいと思うが、それでも難解。世界はもので成り立っているのではなく、言語ゲームで成り立っている。らしい。 解説動画

※生涯でたった7本の論文しか残さなかったジョン・ラングショー・オースティン。その彼のハーバード大学における伝説の講義の一部をまとめたのが本書。「確認的(コンスタティヴ)」と「遂行的(パフォーマティヴ)」という概念は、たぶんジュディス・バトラーなどにも影響を与えている。

※言語学界隈の天才。いやただの天才、チョムスキー。よくわからんけどめちゃくちゃすごいことをやっていることだけわかる。

※現代言語哲学の大家クワインの主著。「根源的翻訳」の思考実験はとても面白い。未知の民族の言語を研究する言語学者は、本質的に何をしているのか? え?言語を研究しているんじゃないの? どうやらそうとも言えないみたいです。



心の哲学


「メアリーの部屋」や「哲学的ゾンビ」「逆転クオリア」など、哲学好きの心をくすぐる思考実験が多数現れる心の哲学。その名のとおり「心とは何か」や「身体と心の関係」などを探求する学問です。昨今では人工知能の研究とも密接に関わっており、技術の発展とともにより重要視される学問かと思われます。心って一体どこに存在しているのでしょうね。

人工知能に興味がある方、SFが好きな方、思考実験が好きな方、「痛い」という感覚が共有されていることを不思議だと思う方などにおすすめです。
解説動画

導入として最適な哲学者はデカルトやジョン・サール。

以下、推奨図書を羅列します。


・入門に最適な書籍

※唯一にして至高の入門書。誰が読んでもよくわかる。参考文献の紹介も多数あり、この本から派生されていくのが常套かと思われる。

※ジョン・サールの主著。哲学者本人の著作としては破格に分かりやすい。心の哲学関連の哲学者が何を考えているのか知りたいならこれ。

※私が私だと思っているもの、すなわち心の中心はどこにあるのか。脳神経科学の観点から心を徹底的に考える本。面白いです。 解説動画


・原著厨(褒め言葉)への推奨図書

※哲学者の中でもかなり自然科学寄りなデネット。あくまでも科学の立場から意識の問題を検討しています。600ページを超える対策ですが、論理が澱みないので頑張れば読めます。頑張りましょう。

※ウィトゲンシュタインの著作とともに、後世に決定的な影響を与えたとされるギルバート・ライルの主著。実はこの本が『攻殻機動隊 GHOST IN THE SHELL』の元ネタの元ネタだということはあまり知られていない。

※タイトルの通り。コウモリであるとはどのようなことか。私がコウモリであった瞬間、私はすでにコウモリだから、人間としての私の意識とは違う何かがそこにある。それは果たしてどのようなクオリアなのだろうか。
解説動画



人生哲学


幸福論や人生における指針を探求する哲学。明確に人生哲学という言葉はないと思うのですが、こう表現するしかなかったので人生哲学です。わたしたちはどう生きるべきなのか。幸福とは一体何なのか。そもそもわたしたちはなんでこの世に生を受けたのか。一番身近で、それでいて難しい問題です。
解説動画

自分の生き方をとことん考えたい方、過去の偉人が幸福をどう定義したか気になる方、人生を言語化したい方などにおすすめです。

導入として最適な哲学者はエピクロスやストア派の哲学者。

以下、推奨図書を羅列します。



・入門に最適な書籍

※ちょっと自己啓発寄りだけど、ストア派のことをざっくり簡単に知るためにはもってこいの本。ストア派の哲学と「成功」を結びつけるのはあまり好きじゃないんだけれども。

※三大幸福論の一つ。プロポと呼ばれる断章形式で書かれているので、どこから読んでもOK。そういう意味で一番読みやすい。 解説動画

※奴隷出身の哲学者エピクテトスによる人生哲学。これをバイブルにしている人も多いのではないだろうか。身が引き締まる思いを得られます。
解説動画

※数ある哲学書の中でも万人におすすめできるという意味ではピカイチの本。本作から哲学に興味を持ったという方も少なくないはずである。時間を大事にしたいと思えます。 解説動画


・原著厨(褒め言葉)への推奨図書

※皇帝でありながら真摯に哲学をした人、マルクス・アウレリウス。少し宗教色が強くはあるものの、説かれていることは現代でも通用します。これ、個人的な日記だったらしく、後世の人にここまで読まれていてちょっとかわいそう。 解説動画

※三大幸福論の中でもとびきり論理的なラッセルの幸福論。おそらく現代人には一番理解しやすい内容だと思われます。幸福論の入り口として非常におすすめです。 解説動画

※三大幸福論の中でもとびきり宗教的なヒルティの幸福論。特に後半は宗教色が強くて難解です。が、ずっと読んでいると少しずつ彼の言っていることがわかってくる。何度も繰り返し読みたい本です。 解説動画



心理学


心理学を哲学に含めて良いのかは甚だ疑問ではありますが、少なくとも哲学から出てきた学問ではあります。そして、心理学ほど論説が二転三転する学問も珍しい。人間はどのような心理のもと動いているのか。心理的な病気にはどのような原因が考えられるのか。ラスボスであるラカンを理解するために人生を賭けるのも趣深い趣味だと思います。(わたしはまだ理解できていない)

現在の心理学がどのように作られたか気になる方、心理的な病理に興味がある方、夢は無意識の表出だと確信している方などにおすすめです。

導入として最適な哲学者はフロイトやアドラー。

以下、推奨図書を羅列します。



・入門に最適な書籍

※あくまでも「心理学全体の気配を知る」ための本ではありますが、導入としては最高です。ここから、興味のある小カテゴリーに移動していくのが王道かと。

※「心理学って面白そう!」とインスタントに感じたいならこれ。この本に載っている用語を日常で使えば、君もなんちゃってインテリだ!

※心理学という広い分野の中でも特にカウンセリングに特化した入門書。心理学がどのように実践されるのかを知りたいならこの本が良いでしょう。

※初めて読んだときは感動しました。決してラカンが理解できるというわけではないんですけど、少し近づけた気持ちになる本。勢いづいてラカンの原著にあたって爆発するまでがセット。

※実は哲学チャンネルで一番最初に取り扱ったのがアドラー。なんといってもわかりやすいです。ここからフロイト・ユングへと派生するルートもおすすめです。 解説動画



・原著厨(褒め言葉)への推奨図書

※フロイトによる精神分析学の本。私たちがなんとなく信じている「過去の経験が湾曲して現れたものが夢だ」という認識は、彼から始まりました。賛否ありますが、心理学を勉強するなら必須の本。

※「集合的無意識」という言葉は文学の解釈においても多用されるため、できればある程度の強度で押さえておきたい。ユング自身によるユング思想の解説本なので、結構わかりやすいです。

※無人島に持っていくならラカン。なぜなら一生完璧に理解することができないから。





時代と場所で選ぶ


二つ目の切り口は「時代と場所で選ぶ」です。時代ごとに哲学は様々な流行を生み出してきました。もちろんそれは作られた流行ではありません。その時代時代に特有の社会的な課題があり、それを解決するために哲学が躍動していたのです。当然、社会的な課題は時代ごとに移り変わりますので、哲学の方向性も多様に変化します。時代を切り口に学びたい哲学を探すのも良い方法かもしれません。



古代ギリシア哲学


世界の不思議に対して超越的なもの(神など)で理解が試みられていた時代。一部の天才たちが理性によってその不思議を解明しようと立ち上がりました。これが哲学の始まりだとされています。そして、まだ科学的技術が未熟だった時代に哲学者たちは「物質を分解していくと原子に至る」という結論を得たのです。控えめに言って異常です。荒削りでもありながら、それだからこそ様々な気づきが得られる古代ギリシアの哲学。現代の哲学の土台として今も光り輝いています。「その前」が存在しないのも、導入に最適な要素かもしれません。 解説動画

形而上学的なトピックにご興味がある方、前提知識なく哲学に没頭したい方、当時から変わり者だった哲学者の生き様を楽しみたい方などにおすすめです。

導入として最適な哲学者はソクラテスやプラトン。

以下、推奨図書を羅列します。



・入門に最適な書籍

※ただ単に当時の哲学を解説するだけではなく、哲学者たちの情熱や意志を感じられる本。哲学って情熱から始まったんだよなぁ。

※超ダイジェスト版。時間がない人にオススメ。

※上下巻合わせて800ページ近くあるので読破するのは大変。でも、ギリシア哲学に興味を持つなら頑張って読んでほしい。これを読んで好きになれなかったら多分他の時代を見たほうが良いです。



・原著厨(褒め言葉)への推奨図書

※哲学者には変人が多いけど、古代ギリシアの哲学者は輪をかけて変な人たちの集まりでした。哲学者に対する尊敬だけでなく、愛着が沸く本。同時に数少ない当時を描写する貴重な資料でもある。

※プラトン中期の対話篇。一つの集大成と考えて良い。後期になるとイデア論に対する解釈が変わってきたりするのですが、この時代の著作には迷いがない。民主主義を否定するロジックなども必見。 解説動画

※アリストテレスの主著の一つ。個人的な感覚ですけど、彼が一番言いたかったのはこの本に書かれている気がする。余裕があれば『二コマコス倫理学』を読んでから本書を読むことをおすすめします。




ストア派哲学(古代ローマ)


古代ギリシアのポリスが崩壊し、人々にとっての「世界」が急に大きくなった古代ローマの時代。それによる孤独感や不安感に対処するため、個人としての生き方や普遍的な倫理が求められました。そこで興隆したストア派の哲学。彼らはどのような生き方が幸福なのかを”ストイック”に探求します。ストア派の創始者であるゼノンは、ソクラテスの「徳こそ幸福である」という主張を前提に「動じない心/情念からの解放(apatheia)」などの生きる指針を提供しました。同時期に対立したとされるエピクロス派の快楽主義も一緒に学ぶとよりGOODです。 解説動画

自己改善や精神的成長に関心がある方、倫理や道徳について深く考えたい方、ミニマリズムや禁欲主義に共感する方におすすめです。

導入として最適な哲学者はセネカやエピクテトス。

以下、推奨図書を羅列します。



・入門に最適な書籍

※ちょっと自己啓発寄りだけど、ストア派のことをざっくり簡単に知るためにはもってこいの本。ストア派の哲学と「成功」を結びつけるのはあまり好きじゃないんだけれども。

※問題に立ち向かうのではなく、問題そのものの解釈を変えること。というストア派における代表的な主張がよくわかる本。超絶読みやすい。

※エピクテトスの入門書。思想だけではなく、その特徴的な生涯も丁寧に描かれています。



・原著厨(褒め言葉)への推奨図書

※皇帝でありながら真摯に哲学をした人、マルクス・アウレリウス。少し宗教色が強くはあるものの、説かれていることは現代でも通用します。これ、個人的な日記だったらしく、後世の人にここまで読まれていてちょっとかわいそう。 解説動画

※奴隷出身の哲学者エピクテトスによる人生哲学。これをバイブルにしている人も多いのではないだろうか。身が引き締まる思いを得られます。
解説動画

※数ある哲学書の中でも万人におすすめできるという意味ではピカイチの本。本作から哲学に興味を持ったという方も少なくないはずである。時間を大事にしたいと思えます。 解説動画

※ストア派ではないんだけど、同時代の思想としてストア派理解のためには必須の本。個人的には、本質的な主張は同じだと思っている。すごく好きな本の一つです。 解説動画



中世哲学


理性を重視し科学的方法によって様々な不思議を解決しつつあった古代ギリシアからの哲学の流れは、キリスト教の登場により一旦堰き止められます。
哲学は神学の下に置かれ、神学の理論を否定しない限りにおいて自由を許されました。しかしそんな時代でも、ときにプラトンの思想が、またときには東から逆輸入されたアリストテレスの主張が、哲学者(神学者)たちの心を揺さぶります。中世哲学は、神学と哲学をどのように折衷するかの戦いでもありました。 解説動画

宗教学にご興味がある方、ヨーロッパ史が好きな方、信仰と理性の関係を研究したい方などにおすすめです。

導入として最適な哲学者はアウグスティヌスやトマス・アクィナスですね。

以下、推奨図書を羅列します。


・入門に最適な書籍

※哲学書ではなくて、哲学史書。だからこそよく分かる。まずは歴史を押さえてからそれぞれの思想に入るのが安全だと思います。

※『神学大全』って引くほど膨大なんですよ。そのエッセンスをうまいこと凝縮してくれている本。もちろん、これを以て『神学大全』を理解したことにはならないけど、導入としてはグッド。

※アウグスティヌスの講話がまとめられた本ではなく、アウグスティヌスについての講話がまとめられた本。「ペルソナ」の章は必見です。

※哲学史家として有名はルチャーノの中世哲学史の解説本。ユーモアあふれる視点で描かれていて、読み物として単純に面白い。


・原著厨(褒め言葉)への推奨図書

※膨大な神学大全の中から徳論と徳のための習慣についてが抜き出され解説された本。アリストテレスを理解するための副読本としても大変に優秀です。 解説動画

※正直、キリスト教に相当深く入り込んでいないと面白さを感じられない本だと思います。が、だからこそ読むことに意味がある。しっくりこない感じから逆算し、キリスト世界の一端を感じるのが正しい読み方な気がします。
解説動画

※スコラ学の父とされるアンセルムス。存在論的神の存在証明も有名です。書簡集なので、当時の空気感がありありと感じられます。



近代哲学


1500年近く続いた中世哲学は、科学という信仰にも似た概念の登場でその力を急激に弱めました。以後、古代ギリシアの伝統である「理性(科学的方法)によって真理を追求する」試みが復古し、哲学の影響力はまた大きくなりました。とはいえ、古代ギリシアに比べて世界は圧倒的に複雑化しており、哲学の進む道もそれに対応するように多様化しました。デカルトから始まりカントを経由しヘーゲルやマルクスに結実する一連のスペクタルは、哲学史の中でもひときわ刺激的です。 解説動画

カントなどの有名な難読書にチャレンジしたい方、存在という概念自体に興味がある方、とにかく時間をかけて哲学を学びたい方などにおすすめです。

導入として最適な哲学者はデカルトやヒュームですね。

以下、推奨図書を羅列します。



・入門に最適な書籍

※近代哲学の中心にいる人。カントの入門書は数多くありますが、石川先生の解説は本当にわかりやすいと思う。 解説動画

※近代哲学の大まかな流れを知るにはこれ。哲学者の紹介だけでなく、それぞれが向き合ったテーマに関しても詳しく説明してくれているのがGOOD。

※インタビュー形式の本なので、非常に読みやすい。多少抽象的な表現が多い気がするけど、入門書としては最適です。



・原著厨(褒め言葉)への推奨図書

※難解とは言われるけど、論理構造がちゃんとしているから頑張って読み続ければ言っていることは理解できる。取り組みがいのある本だと思います。

※「知覚するとはどういうことか」を徹底的に考えた本。個人的にはカントよりもヒュームの方が入り口に適している気がする。

※「モナド」という個性的な概念を提唱した本。この世がどうやってできているかを論じているわけだが、量子力学の常識と共鳴する部分もあってとても面白い。



現代哲学


一応、哲学における一つの時代ということで現代哲学というカテゴリーを設けましたが、正直現代哲学はあまりに多様すぎて一言で説明することができません。はるか未来から見たときに、重要なものだけが残されるのでしょう。広義には「実存主義」も「現象学」も「分析哲学」も「構造主義/ポスト構造主義」も全部現代哲学です。ようは最近(と言っても1950年ぐらいから)の哲学は全部現代哲学です。どれを選んでも難易度ハードなので、覚悟して取り掛かるべし。

直近の哲学の動向が気になる方、理解に時間がかかる哲学にどっぷり浸かりたい方、哲学者に共感をしたい方などにおすすめです。

導入として最適な哲学者はサンデルやマルクス・ガブリエルですね。

以下、推奨図書を羅列します。



・入門に最適な書籍

※後でも取り上げますが「100分de名著」はそれ自体が名著。実存主義の定義と、なぜ実存主義が生まれたのかなど、とてもわかりやすく解説してくれています。

※ニーチェって思想の余白が大きいので、研究者によって解釈が大きく変わる哲学者なんですよね。竹田先生の解釈は、わりと好きです。

※とくに「構造主義/ポスト構造主義」の流れについて詳しく知ることができる本。(多分)一般読者を強く意識して書かれた本なので、とびきりわかりやすいです。


・原著厨(褒め言葉)への推奨図書

※私がここ数年で一番読み込んだ哲学書。数十周したものの、いまだに5%ぐらいしか理解できている気がしません。戦いごたえのある一冊です。

※レヴィ=ストロースの主著。それまで当たり前だと思われてきた思考の枠組みを疑ったという功績は絶大だと思う。

※正直言います。『アンチ・オイディプス』と『声と現象』は、何度読んでも理解できません。当時の文化人の多くがこれを読んで語り合っていたと考えると、相当な知的水準だよなぁ。

※現象学の祖、フッサールの大著。去年神保町で全集が8万円で売っていて、悩んだすえに購入を断念しました。私は1-1しか持ってません。いつか揃えたいなぁ。



東洋哲学


西洋とはまた違ったベクトルで、東洋でも哲学的な議論が重ねられてきました。中国の諸子百家からはじまり、朱子学、陽明学、そして日本の哲学における萌芽である西田哲学。西洋における直線的な論理だけでなく、東洋思想に根付いている円環を前提としたような柔らかい哲学観にグッとくる方も多いと思います。

初期仏教的な思想に興味がある方、西洋的な考え方に馴染めない方、アジアの歴史を勉強したい方などにおすすめです。

導入として最適な哲学者は老子や九鬼周造ですね。

以下、推奨図書を羅列します。



・入門に最適な書籍

※飲茶さんから哲学に興味を持った方も多いのではなかろうか。入口としてこれ以上の本はないと思います。

※老子道徳経はとても短いので、東洋思想の入門にぴったりだと思います。とはいえ、それは簡単だということではない。短いけど底抜けに深いのだ。

※『論語』の内容についての記載もあるけれど、どちらかというと孔子その人のことがよくわかる本。現代にも多大な影響を与えている人なので、知っておいて損はない。

※『善の研究』ってめちゃくちゃ難しいんですよ。それを、下民にもわかるように丁寧に解説してくれています。日本の哲学を学ぶならここからで良いと思う。

※江戸時代、朱子学と陽明学は日本に対してとても大きな影響を与えました。当然、現代にもその残り香は漂っています。その関連性を想像しながら読むと面白いかも。 解説動画

・原著厨(褒め言葉)への推奨図書

※「いき」という抽象的な概念を徹底的に具体化しようとした本。九鬼本人の人生とも密接に関わっている思想なので、人となりと合わせて勉強するとなおよろし。 解説動画

※西洋哲学を踏まえながら、それでいて根底には東洋の思想がどっしり佇んでいる。西田哲学にはそういう特徴があります。この哲学が日本で生まれたことに大きな意味があると思う。 解説動画

※様々な故事成語にもなっている『論語』。エリートになりたいなら『論語』をはじめとした重要図書を暗記しなくてはならないというわかりやすい評価基準、嫌いではない。 解説動画

※「性悪説」で有名なですが、個人的には彼の学びに対する姿勢に共感します。「学は以て已む可からず」、本当にそうだよなぁ。 解説動画



インド哲学


西洋哲学とも東洋思想とも微妙に違う独特な発展を遂げたインド哲学。バラモン教やウパニシャッド哲学あるいはヴェーダなどの聖典から誕生したこの哲学は、主に「世界はどうやってあるのか」という認識論的な性質を持っています。西洋哲学でいえばドイツ観念論に近いのですが、根本に東洋的な思考スキームが根ざしているため、両者のハイブリッドと言えるかもしれません。(インド哲学の方が歴史が長かったりするので、ハイブリッドは適切な表現ではないかもしれませんが)
ちなみに、勉強するための資料が極めて少なく、体系的に学ぶのが非常に難しい哲学でもあります。 解説動画

形而上学に興味がある方、ヨガや瞑想やアーユルヴェーダの成り立ちに興味がある方、持っている知識が他者と被らないことを好む方などにおすすめです。

以下、推奨図書を羅列します。


・入門に最適な書籍

※とくにサーンキヤ学派の解説本って希少なんです。その中でもとびきりわかりやすい。やはりアジア思想のことは中村元先生に聞けということか。

※ウパニシャッドから仏教まで。その流れや、それぞれの思想家のことがよくわかる本です。六師外道とか四天王感があってすごく好き。

※現代でも定着している「ヨガ」は、もともと悟りに至るための行為でした。哲学や思想の果てに行為があるということ自体、東洋思想の大きな特徴ではないかと思います。

※インダス文明の頃から現代までのインド思想史(もちろん仏教も)が広範かつわかりやすく描かれている本。入門書としては一番おすすめです。

※法相宗を支える思想の大元である『唯識三十頌』を分かりやすく解説してくれている本。インド哲学の多くは唯識論を採用しているので、ここをおさえておくことはとても重要です。



・原著厨(褒め言葉)への推奨図書

※ヴェーダ聖典群のうち、最も古い書。もともとは口伝で伝えられていたものが紀元前12世紀ごろに編纂されたと言われています。讃歌なので論理的な思想ではありません。が、きっと何か感じ取れるものがあるはずです。

※主にバラモン教の儀式典礼が掲載された本。初期仏教の経典には「アタルヴァ・ヴェーダの呪法に関わってはいけない」という記述があった模様。ちなみに本書の医術に関する記述から派生してアーユル・ヴェーダが成立したとも言われている。

※ヒンドゥーの叙事詩『マハーバーラタ』の一節を抜き出した本。直訳すると「神の詩」。とくにサーンキヤ哲学を学ぶなら必読の書。




推しで学ぶ


特定の哲学者が好きになり、そこから哲学の世界に吸い込まれる人も少なくありません。が、たまたま出会った哲学者が難解だった場合、それが原因で哲学に苦手意識を感じてしまうこともあるでしょう。そこで「入門に適した哲学者」を独断と偏見で選定し、何名か紹介させていただきたいと思います。個人的にはこのルートが一番哲学に入り込みやすいんじゃないのかなと考えています。



プラトン(ソクラテス)

ここは外せないでしょう。西洋哲学の源流と言っても言い過ぎではない大哲学者。20世紀初期イギリスの哲学者ホワイトヘッドは『過程と実在』という書籍の中で「西洋の全ての哲学はプラトン哲学への脚注に過ぎない」と述べています。近代の哲学を学んでいてもそこかしこに"プラトン"からの引用あるいは影響が見られ、どんな入り口から入っても結局はおさえないといけない部分でもあります。そういう意味で、まずはプラトンから順を追って西洋哲学を追いかけるルートは合理的なのかも。 解説動画

西洋哲学史を時系列順に学びたい方や形而上学から入りたい方におすすめです。

以下、推奨図書を羅列します。


・入門に最適な書籍

※「はじめての」とありますが、若干難しい内容も扱っている本です。(特に後半) プラトンの批判的な思考スキーム、そしてイデア論の明快な解説。ちょっと難しいのも導入として最適かも。

※プラトンの思想と、その思想が現代においてどう理解され活用されるのか?にまで言及している本。こちらも若干難解なところがありますが、初心者でも頑張れば読めると思う。


・原著厨(褒め言葉)への推奨図書

※プラトン中期の対話篇。一つの集大成と考えて良い。後期になるとイデア論に対する解釈が変わってきたりするのですが、この時代の著作には迷いがない。民主主義を否定するロジックなども必見。 解説動画

※プラトンの著作の中でも特に「愛」について語られた本。「愛」がテーマなだけに語り手のソクラテスの人物像が他の作品よりも近しく感じられる。

※すべてはここからはじまった。ソクラテスが何を信じ死んでいったのか。そしてプラトンはそこから何を受け取ったのか。短いので入門としても最適です。


アリストテレス


プラトンが西洋哲学の原動力と問題提起を行った人だとしたら、アリストテレスは西洋哲学の基礎となるスキームを作った人です。論理学・社会学・政治学・自然科学などなど、あらゆる分野の基礎を形作りました。そもそも、ひとまとめだった哲学に分類を与えたのも彼の仕事です。アリストテレスを学び、興味を持った特定分野に歩を進めていくやり方も面白いかもしれません。

西洋哲学の基礎を総合的に学びたい方におすすめです。

以下、推奨図書を羅列します。



・入門に最適な書籍

※アリストテレスの生涯から思想までを広範に解説してくれている本。『政治学』『ニコマコス倫理学』への言及が極端に少ないという面はありますが、それを差し引いても入門書としてピカイチです。

※首尾一貫してプラトン思想との対比に重きを置いたアリストテレス解説書。プラトンと対比されることで、思想の内容だけではなく、当時アリストテレスがどんな動機で思想展開をしたのかが見えてくる本です。

※なんかよくわからんけど文章が綺麗でスッと入ってきます。著者の過度な思想や偏った解釈がほとんど入っていないのも良い。the入門書といえるでしょう。


・原著厨(褒め言葉)への推奨図書

※「中庸」って良い言葉ですよね。私もかなり大事にしている言葉です。政治学を読む前にはぜひこちらを読んでください。 解説動画

※岩波版もあるのですが光文社版は解説が非常に秀逸なので、こちらをオススメします。後世に大きな影響を与えた政治哲学の古典。

※アリストテレスの著作の中でも特に彼個人の感情が含まれている本だと思う。自称弁論術士に対する怒りから書かれた本(多分)。ちょっと構成がぐちゃぐちゃで読むのが大変だけど、アリストテレスを身近に感じられると思います。



カント


哲学書での引用率が非常に高いカント。難解だと言われていますが、やはり避けて通るのは難しい。いっそカントから入ってしまえ!という若干クレイジーな入口です。(でも理にかなっているとも思う)
認識論だけではなく倫理についても学べるし、カントを学ぶ=近代哲学の歴史を学ぶでもあるので、何もしなくてもすごいスピードで学ぶ範囲が広がっていきます。

近代哲学を包括的に学びたい方、難解な内容をじっくり攻略していきたい方におすすめです。

以下、推奨図書を羅列します。



・入門に最適な書籍

※カントの入門書は数多くありますが、石川先生の解説は本当にわかりやすいと思う。 解説動画

※多少難しいところはありますが、入門書と言って良いぐらいの難易度です。巻末にある推奨図書のリストは必見。

※カントの思想の中でも『純理』で語られる超越論的観念論に集中して解説してくれている本。『純理』と比べると驚くほどわかりやすく、オススメです。



・原著厨(褒め言葉)への推奨図書

※難解とは言われるけど、論理構造がちゃんとしているから頑張って読み続ければ言っていることは理解できる。取り組みがいのある本だと思います。

※『純理』の手引き本、あるいは『純理』に対する批判に対する反駁をした本。基本的に『純理』を読むなら一緒に読んだほうが良い。

※カント渾身の倫理の書。彼の倫理には観念論的な前提が必須ではあるのですが、この本からカントに入っても問題はないと思う。むしろそっちの方がスムーズまである。



サンデル


哲学者の中には、自身の哲学を主張する際に丁寧に過去の哲学史や哲学書の説明をしてくれる人がいます。サンデルもその代表的人物の一人。(そういう意味ではマルクス・ガブリエルなんかも同様)主な主張であるコミュニタリアニズムの思想や、共通善を求める倫理の思考。それだけでなく、サンデルを読めば過去の哲学からどうやって彼の思想が導かれているかが明確に理解できることでしょう。 解説動画

思考実験が好きな方や現代の社会問題に関心が強い方におすすめです。

以下、推奨図書を羅列します。



・入門に最適な書籍

※結果を出した人は本当に努力した人なのか。努力ができるということも、決定論的な初期ステータスではないのか。「無知のヴェール」に代表される、人間の先天的なランダム性に疑問を投げかける本。

※正義ってなんだろう。正義を一意に定めることができないのだとしたら、正義なんて存在するのか。サンデルのコミュニタリアン的要素が多分に出ている本ではあるけど、正義論のおさらいとして非常に優秀。

※上記二冊よりも若干硬派な一冊。一番本音が現れている本だと思います。アメリカにおけるリベラリズムの勉強にもなります。


キルケゴール


キリスト教の絶大な支配が翳りを見せ、人々が「どう生きるべきか」に対して不安を抱えていた時代に現れた実存主義。代表者としてはサルトルやニーチェが挙げられますが、個人的に入門に適しているのはキルケゴールだと考えています。何よりも著作が分かりやすい。社会不安に呼応するように現れた思想は、きっと現代にも通用する何かを持っていると思います。
解説動画

人生哲学にご興味がある方におすすめです。

以下、推奨図書を羅列します。



・入門に最適な書籍

※実存主義系の書籍の中で多分一番分かりやすい。キリスト教色は強いけれども、その「神」を自分なりの「信じるもの」として変換すると現代にも無宗教者にも通ずる内容になる。

※当たり外れの激しい『まんがで読破』シリーズの中でもこれは傑作。キルケゴールの人生自体が彼の思想に強く結びついているのも影響していそう。これ読んで興味が出たら『死に至る病』を読む流れも良いかも。

※不安は愛の不在あるいは利己的な愛を原因として生まれる。言っていることは『死に至る病』と一緒だけど、こちらの方が共感しやすいかも。



その他の入り口


これまで紹介してきた方法以外にも、哲学を学び始める良い方法はたくさんあります。ここではその中でも特におすすめの方法を三つ紹介して長かった記事を終わらせようと思います。



100分de名著ブックス(NHKテキスト)で学ぶ


古今東西の難解な書籍をその道の専門家(かつ説明が超絶上手な方)を招いて平易に解説するNHKの番組。それが書籍になったものが「100分de名著ブックス」です。控えめに言って神。哲学書も多く取り上げられているので、まずは100分de名著ブックスをひたすら読破するのも、かなり有効な哲学の入り口だと思います。以下、その中でも特におすすめの書籍を紹介します。



通史で学ぶ


哲学の「内容」ではなく、まずは「歴史」で学ぶ。これも非常に有効な方法です。そもそも哲学はその歴史を前提にしているきらいがあり、深く学ぼうとすると結局歴史を認識している必要があります。だったら最初から歴史を勉強しちゃえと、そういう意図ですね。哲学そのものを学びたい方にはあまりおすすめできませんが、歴史を学ぶのが好きな人(これが結構たくさんいらっしゃるんですよね)にはうってつけの方法かもしれません。
以下、通史を学ぶ上でおすすめな書籍をいくつか紹介します。


※インスタントに学びたいなら以下の二つ


※わりとがっちり学びたいならこの三つ


※東洋思想も合わせて学ぶならこのシリーズ(個人的おすすめ)




哲学チャンネルで探す


手前味噌ではありますが、これまでにさまざまな哲学の解説動画を作ってきました。その動画を以て「理解した」とはならないのですが、興味の在り処を探すきっかけぐらいにはなると思います。

以下、ランダムに動画を紹介します。
詳しくはチャンネルのリストを参照ください。


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