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月島ワンダーランド
いい街には、いいたばこ屋と銭湯がある。
次点で、鮪が旨い。
これは街歩きを生業とする自分の勝手な持論だ。そしてそれを確信させてくれた街こそが、本日紹介する、月島だ。
◆◆◆
先日、高校からの腐れ縁の友人と飲んでいた。僕が写真を撮るきっかけとなった友人だ。
そこでは、やっぱり街撮りが最高なのだとか、ゆえにRICOH GRを買いたいのだとか、好きな写真家がいて、このインスタでは珍しく多分85mmくらいでスナップ撮ってるのよねとか、あれこれ話し合った。彼と写真の話をするのは久しぶりだった。ほろ酔いついでにひさびさに「写真欲」が湧いてきた。防湿庫に放置しっぱなしだった愛機も、そろそろ出番の気配がした。
そこから1週間が経ち、友人が「Super Takumarの55mmが結構良い!」と連絡をしてきた。偶然にも僕が2年ほど前から愛用してたレンズだったので「それめちゃいいよね!」と答え、今度写真撮り行こうよと言った。まあ近場でもいいけど、下町が良いな、と長年のなんちゃらですぐに意見が一致した。
当日。天気予報は雨。雨雲レーダーとにらめっこする。確証はないけど、まあ15時には晴れるだろう。僕たちは14時に中野に集合し、月島へと向かった。
月島に降り立つも、空にはまだ小雨がぱらついている。雨が止みそうな気配もあったので、まずはアーケードになっている「もんじゃストリート」を気ままに散歩した。
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ああ、すでにいい。最高だ。
早々に撮れ高を確信していると、イカしたたばこ屋さん「石野商店」を発見した。
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街歩きのちょっとしたコツというか趣味なのだが、地場のたばこ屋さんを見つけて、紙たばこを買う。そこで店主とあれこれ話をして、人柄や街の歴史なんかを知る。もちろん流れで写真も撮らせてもらう。
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店にはおばあさんが2人、楽しそうに談笑をしていた。僕はアメリカンスピリットを買い、店主に話しかける。
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「お店の写真撮ってもいいですか?」
そう店主に尋ねると、
「ああ?いいけどよ、こんな店のどこがいいんだよ」
「クソみてえな店だよ本当に」
「クソみてえな店だぞったく」
「クソだよ、クソ!」
「俺なんか撮らなくていいよ!」
(と言うのでしっかりとした写真撮れず)
とにかく、クソ連発。
いかつい、でも温かい下町のおっちゃんという感じ。
ふと目をやると店内に灰皿スタンドがあったので、図々しく、そこで一服。
するとおっちゃんが話しかけてくる。
「とにかくよ、今日も雨だろ。客が来ねえからもう閉めようと思ってよ。今もコロナで大変だろ。本当に参っちまうよな」
「お前らもんじゃ食いに来たのか?学生?ああ、社会人か、写真は何?趣味か、そうか。仕事は出来てるのか?ほら飲食店だって今も大変だろ、知り合いの店のこれ、券あっから使ってやってくれ」
そう言って近くのもんじゃの店を紹介してくれた(撮影後、伺わせていただきました)。
最後におっちゃんが一言。
「でもよ、酒とタバコ、楽しくな。これが基本」
めちゃくちゃかっこいいおっちゃんに出会え、光の速さで月島が好きになった。
ちなみに何故か店内には至る所にジョニー・デップがいた。
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店を出ると、もう雨が止んでいた。
続いて、予めGoogle Mapで目星を付けていた、「佃小橋」や「住吉神社」に向かい歩く。
ところどころ小道がいちいち良い。そしてこの辺りは井戸が点々とまだ残っている。
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そうして歩いていると、目当ての「佃小橋」に到着。「大栄マンション」がエグイケている。「日の出湯」という銭湯が裏にあった。いい街だ。間違いない。川に浮かぶ船たちもいちいちエモい。
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こうして歩みを進めていると、昭和風情を残した駄菓子屋を発見。
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すると近所の小学生がやって来て、我が幼少期に1mmも記憶にない、謎のお菓子を咥えている。
「それなあに?おいしい?」
と聞くと、
明らかに外部の人間、サングラス姿に髭面カメラおじさんな筆者に戸惑いながらも、
「うん。恐竜の玉子」
と教えてくれた。
何だよそれ、埼玉にはなかったぞ。と思いながら、最近のトレンドなのか地域限定か知らないがとりあえず恐竜の玉子を買ってみた。
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「Oh…My…」
見た目で言うと、完全にエッチな感じなのだが、要はゴム風船の中にバニラアイスが入っていて、先っぽの突起(このときの通称:乳首)をちゅーちゅー吸いながら食べるおやつだ。値段はこれで100円。食べてみて分かるが、持ちがよく、ずっと吸っていられる。たまに舌先で舐めたりもできる(するな)。つまりめちゃくちゃコスパがいい。
少年たちよ、ありがとう。
彼らは何やらハイテクなスケボーみたいなもので去って行った。下町のマーティ・マクフライだ。
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そうして佇んでいると、何やら熱い視線を感じる。振り返ってみると、ベランダからおじいちゃんがこっちを見ていた。
(撮影許諾済)
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これが佃町のおじいちゃんだ。
「こんにちは〜」
と声を掛けると、おじいちゃんは饒舌に語り出した。
聞くとおじいちゃんは御年87歳。
写真を撮り歩いてるのだと伝えると、3月9日の大空襲で焼けなかったのはここ佃町だけだということや、それも井戸があるから男たちが屋根に登ってバケツで消火したからだということなど、先ほど見かけた井戸の伏線回収をさらっとしてくれた。
「同級生はあと2人だよ。あの時は秩父に疎開してさ、虐められたんだよ」などということや、昔漁師をやっていたこと、ここ佃町は徳川家康の時代に36人の漁師がやって来てできた街で、元々は関西の人間たちだったということなど、次々とアツい歴史の話を繰り出してきた。
またこの近辺、石川島播磨造船で軍艦作っていたのも生で見たらしく、勝鬨橋は軍艦を通すために開閉式の可動橋になったなどという豆知識もさりげなく披露。歴史の生き証人でありラスボス、そんな方とお話できる有り難みを深く痛感する次第であった。
驚いたのは、未だに神輿を担ぐということ。
3年に1度、8月にお祭りがあるらしく、今年もコロナの影響がなければ神輿を担ぐと言うのだ。この辺り、住吉神社の神輿は八角神輿と呼ばれる八角形をしている、これは日本に3つしかない(おじいちゃん曰く)らしい。住吉神社に飾ってあるから、どうせだから見ていくといい、と教えてくれた。
おじいちゃん、2階のベランダから話してる割にめちゃくちゃ耳がよく、ウィスパーボイスな筆者の声にも聞き返してくることもなく、15分くらい話してしまった。いい街、いい出会い。
ちなみにこれがその神社、神輿である。
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余談だが、先ほどの恐竜の玉子、中のバニラアイスが減ってくると最後急にドバッと出てくる。口の中に噴射されるそのフィニッシュぶりにマジもんの恐怖を覚えながら、これは正しい食べ方というか食べ終え方なのか?と狼狽えていると、
先ほどの小学生がおもむろに、
「急にくるよね!」
と恐竜玉子あるある(!)を叫びながら横切っていった。よかった。これはあるあるだった。そして小学生よ。この感覚が病みつきになってはいけない、多分、いけないよ。
月島。この街にはドラマがある。
不思議な縁と出会いに感謝しつつ、
街撮りの魅力にどっぷりと浸かった筆者でした(鮪は食ってない)。
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