映画ネタバレ感想 #非常宣言
初めて韓国映画を劇場で観ました。
本作はパニックアクション映画というカテゴリーです。とにかく劇場で観てよかった。すごかった。内容からして「面白かった」というのは表現が違うかな。とにかく心を揺り動かされました。
以下、ネタバレありの感想です。映画鑑賞後に見てください。
公式サイト
ひとつの大きな虚構があって、それ以外をリアルに詰めていく
「元バイオテクノロジーの多国籍企業の研究員が致死率の高いウイルスを潜伏期間が短くなるように変異させたうえで、それで自殺するのに飛行機の乗客を巻き込む」というのが本作の虚構。
それ以外は、ある程度の誇張はあるにせよ、リアリティを追求しています。
そういうところは「シン・ゴジラ」を思い出しました。
カーチェイスでのクラッシュシーンとか、すごくリアル。あんなに急いでいる場面でもシートベルトしていてよかった ..
傾いた機内のシーンは圧巻でした。メイキングビデオも公開されていますが、あれはすごい。
肝心なところが英語
韓国の映画なので、基本は韓国語の会話で物語は進んでいくのですが、けっこう肝になるところが英語なんですよね。
犯行声明
犯人が激昂(げきこう)したときのセリフ
航空無線
多国籍企業の役員のセリフ
それに英語で答える運輸大臣のセリフ
私は英会話を勉強中なのですが、こういうところが字幕を読まなくてもダイレクトにわかってしまうので心に響きました。
特に航空無線のところは、聞いた瞬間の絶望感が半端ない。
自衛隊機の通信に「え、まじで??やめてーーー」
引き返すシーンの描写
米国国内への着陸を拒否されて、引き返すシーン。
西日の太陽が機内の照らすのですが、その角度がゆっくり変わっていることで乗客が引き返すために方向転換をしていることを知る … 早く着陸して病院で手当を受けたいのに …
飛行機の中でスマフォでインターネットにつながるのが現代的
少し前だったら、乗客にとって飛んでいる飛行機の中は外界から閉ざされた密室でした。でも今は飛行中の飛行機の中でも乗客はスマフォでインターネットを使うことができます。回線が遅いと文句を言ったり、全員が一斉に使ったら繋がらなくなってしまうのもリアル。
ニュースや政府の発表を当事者である飛行機の乗客、乗員もリアルタイムでそれを見ることができて絶望する ..
日本の扱い
若干悪者的な描かれ方かなとも思いました。でも、アメリカはともかく日本にすら拒絶され、成田空港に強行着陸しようとしたら自衛隊機に妨害されるという事態に際して韓国の人々が日本に悪態をつくというより、「本当にヤバいのではないか」と楽観的な空気が吹っ飛んで「着陸反対派」が多数になるというのはリアル。
まあ、でもさすがに「非常宣言」をしている航空機の着陸を邪魔するのは国際法違反なのでフィクションですよね。
あと、日本の官房長官?の声明が異常にまどろっこしいのは日本ぽくてリアル。
「( 飛行機を)降ろしなさい!責任は私がとります」
事件発生当社は困惑していた女性の運輸大臣(日本でいう国土交通省)がフル回転で仕事します。
のらりくらりとはぐらかす多国籍企業の外国人役員に "Who are you?" と聞かれたときに通訳を通さずに「私は運輸大臣だ。交通の全ての責任を負っている!」というようなことを英語でズバッと返す。迫力すごい。
(そういえば、最初に登場したときには国際会議らしきもののスピーチの準備をしていた。英語が話せることの前振りだった。)
「( 飛行機を)降ろしなさい!責任は私がとります」
こういうセリフ、映画ではわりと出てきます。でも普通は言いっぱなしですよね。
この映画では違います。最後に法廷なのか安全委員会なのかの場所で責任を追求されるシーンまであって、テロップの肩書きが「元運輸大臣」になっているし、判断は妥当だったのか責任を問われて「だから辞めた」と言う。このへんもリアル。
そういえば、「シン・ゴジラ」のときも政府機関など登場人物が有能すぎるところが返ってリアルじゃない!という声がありました。韓国でも現実に起こった船の事故の件とか関係者があまりにグダグダだったわけで、映画の中くらいは有能な人を観たいのでしょうね。
ラストシーン
波止場でたたずんでいる女性。人の顔を覚えるのが苦手なので間違っていたらすみません。これはチーフパーサーだった方ですよね。
もう辞めるつもりだったと言っていたし、退職してぼんやりとあのときのことを思い出している感じでしょうか。 映画を観ている観客も放心状態。
もしかして、あの親子の父親(=離婚していた元パイロット)と結婚するのではという感触もわずかに感じられたのですが、そういう恋愛要素は一切無しでした。
身を挺してウイルスを自分に打たせ、ワクチンの効果を実証した刑事の方も命はつなぎとめたものの、満足に体を動かすことはできず車椅子の生活。
でも「(小学生の)娘さんの結婚式の頃には歩けるようになるでしょう」というセリフで長い時間をかけて快方に向かっているということはわかりました。
パーティでは機内にいたキャビンアテンダントの方とドクターが談笑していたので、軽傷で回復した人もいたのでしょう。(でも多分全員ではなさそう。)
バッドエンドではないけれど、手放しのハッピーエンドとはとうてい言えない終わり方でした。これもリアル。
最後の最後は空港に停止できた飛行機の中で安堵の表情の乗客と、飛行機
に消防隊が近づいていくのを真上から俯瞰するというシーン。最悪の事態にはならなかった … よね?
ついでの一言
最後の着陸で滑走路が見えたときに、朝ドラの「舞い上がれ」の航空学校編を思い出してしまいました。大河内教官に「機軸がずれている!」と叱られる舞ちゃん ..
もう一言
実は映画を観ている最中はホノルルからインチョンに飛ぶときに成田空港の近くを飛ぶんだっけ??と思いました。(羽田/成田-サンフランシスコを昔よく使っていたけど北海道からカムチャッカ半島をかすめるくらいのコースだよね?)
観た後に調べてみると、北朝鮮の領空を飛ぶことはできないので、ソウル近傍の飛行場に向かうときには東側から回り込む必要があると知りました。そうすると成田空港の近くを通過するのは変なことではないですね。
flight radar 24 でホノルル->インチョン便の実際のルートをひとつ確認してみたら鹿児島から長崎の上空を通過していました。これは風の影響を受けるので季節によって変わります。
追記(2023/01/20)
他のレビューを見るとストーリーに雑なところが多いと書かれていましたが、言われてみると確かにその通り。しかし、迫力に圧倒されていて言われるまでは気がついていませんでした …
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