スクーバダイビング実習
今年度は、あと1回だけ同様の実習があります(本日2月23日に修了しました)が、これまでに何回この実習を担当してきたのだろうか。
大学の非常勤になったのが2000年で、そこから数えても単純に22回はやっています。近年は、夏と冬の2回やっているので、少なくても授業責任者として30回はやっていると思います。さらに学外講師の時代から同様の授業に技術指導者として携わっておりますので、大袈裟ではなく40回程度の授業担当をしていると考えます。
先週のスクーバダイビング実習の授業が終わる時に、ふと「この授業って何回やっているんだ?」と疑問に思って数えてみたからです。
この授業はセッション科目で、夏は未経験者を対象としたオープンウォーターダイバー講習、冬は経験者を対象としたドライスーツダイビングを行っております。未経験者を対象とした講習が、高等教育の授業として適切かどうかは少なからず疑問があります。しかしながら、そこでは商業的なダイビングスクールでは言及しない危険性や研究・就業に関するアドバイスも加わるので、受講者の満足度は、一般のダイビングスクールを凌ぐ内容と考えます。講師料を大学が負担しているため、リーズナブルな金額で提供していることも魅力的であり、興味のある学生や必要不可欠な人にとっては、卒業に含まれる単位も取得できるので、これほど重宝な授業はありません。
この実習は当然授業なので、履修者のレベルに応じて教授グレードを引き上げることができます。これは、座学の授業も同じで、履修者の知識や受講意識が高ければ、それに応じてスピードや突き詰め方、深掘りの深度を調整しています。ただし、実習の授業なので、座学のようにトップランナー集団(面接授業で教室のフロントラインに座っている子たち)に合わせてダイビングをする訳にはいかないので、グループ内の経験の浅い学生に合わせた内容になります。もちろん、ボトムアップを心がけますが、調子に乗ってグイグイやるとダイビングが嫌いになってしまいます。授業に目的は、スクーバダイビングを通じて、海や海洋生物を好きになってもらうことなので、俺様ダイビングや「俺が一番!空気残ってるぅ〜!!」みたいな下級競争社会を助長させるものではありません。
実習の全てのプログラムが終わって、全ての履修者が笑顔であることが理想なのですが、なかなか理想ばかりを追求することは、かなり困難な道のりなのです。もちろん、指導者と受講者のwin winな関係性を構築することは大切なのですが、お互いにイージーなレベルで留めておいた方が良いことも多々あります。これは、アウトドアスポーツの指導者の免罪符ですが、天候や海況が思わしくなければ、諸々の不可能が顕在してきます。よって優秀な指導者ほど、無理はしません。計り知れない自然環境や受講者の経験からくる心理的な影響は読み切れないのです。無理をした先に、ピンチの後にチャンスありになるか、ピンチの後にパンチありになってしまうかは、やってみなければ分からないのです。フィールド教育でワンチャンはワンパンになりかねないのです。
でも、ワンチャンがあるメンバーが揃っているのなら、その流れでトライしてみたくなるのもフィールド教育です。たまたま上手くいったことを自分の手柄にするつもりはありません。もちろん、買わない宝くじが当たらないのと同じで、狙わないレアものは見られないのですから、そのトライの価値は十分にあります。価値の共有ができれば、それは理想を超えた教育になるのだと思います。しかしながら、多分それは教育ではないのでしょう。最近になって、やっとそのことに気がつきました。
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