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思いついたままに書き綴る千文字小説

【手紙】

中学の時に書いた私宛の手紙、授業で書かされて、嫌々書いていたことは覚えている。
おそらく文面はめちゃくちゃ、どうでもいいようなありきたりなことしか書いていない。
人に言われて書いた文章なんてそんなものだ。
ただ文字でマスを埋めていく。
マスが埋まれば完成。
簡単な話だ。ただ埋めればいい。内容なんてなんでも良いのだから。
そんなひねくれた感情で私宛の手紙の封を切る。

拝啓 わたし

これを読んでいる私は30歳になった私かな?

『まだ生きていますか?』

私はすごく弱いから、途中で生きることを諦めているのじゃないかと心配です。

私がこの手紙を読んでいるなら、なんとか生きているんだね。
よかった。

最初の文面が「まだ生きていますか?」でごめんなさい。

今の私には、この先の未来に見えるのは絶望だけ。
あなたが私のところに来て、私がどんな未来を歩むのか教えてくれたら……私はもっと楽に生きられるのに……

そんな事言ったって無理だよね。

ねぇ、未来の私、私がもし幸せになっているのなら、それはあなたが紡いだ物語の結末なんだよね?

ううん。結末はまだまだ先、まだ序章でしかないよね。
私からあなたにいくつかの言葉を贈ります。

あなたの幸せはあなた自身が掴み取った幸せです。決して運が良かったわけじゃない。
あなたの努力と行動が今のあなたを作っている。それを忘れないでください。

もしも、その幸せが崩れて不幸になったとしても、あなたは不幸なんかじゃない。
不幸だと感じられる事が幸せなんだってことを覚えておいて。

綺麗事かもしれないし、理解されないかもしれない。
怒り出す人もいるかも知れない。

ただこの2つの事は忘れないで。

幸せは待っていても絶対に来たりしない。
あなた自身が行動して、幸せを捕まえないとダメ。

もし幸せが逃げてしまって、不幸が訪れたとしても、不幸はあなたの行動次第で幸せに変えられる。

大事なことだから2回言いました(笑)

おっと、そろそろチャイムがなっちゃう。

正直言うと、未来の私への手紙なんてめんどくさいし、嫌だなぁって思ってました。
でもね、未来の私を想像して、私のために手紙を書くって思うとなんだかすごく楽しくなってきて、年上のあなたに偉そうなことを言っちゃったかもね。

未来の私! あなたはこの世で一番幸せな女の人!

だから、落ち込んだとしても、すぐに前を向いて歩きだしてね!

あなたの涙は、過去の私が拭ってあげるから、あなたは幸せになってね。

それじゃぁね! 私!

                              敬具


涙が止まらない。
私はこの時、絶望のどん底にいたんだ。
友達も作れず、毎日一人ぼっちだった。

両親が共働きで、家に帰っても一人ぼっち。

毎日、孤独と戦っていたんだ。

そんな過去の私を忘れていた……
この手紙を書いている時、私は私を励ますために……
今の私じゃない。

『今の私』のために書いていたんだ。

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