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関係性のパズル

 人は生まれた瞬間からずっと人間関係の網の目の中で生きていき、その中で良好な関係性を築こうとする。だが、血を分けた親子でも、長年連れ添った夫婦でも、はたまた、固い絆で結ばれた同志でも、ふとしたタイミングで不協和音が訪れて足元をすくわれたりする。どんなに親しくしていても、突然何かの拍子にぶつかったり裏切られたりするものだ。

 だからといって、その不一致を許容できずにもう無理だと、せっかく培ってきた関係性を断ち切ってしまうのは短絡で軽率だろう。なぜなら、人を人たらしめる人間関係は、相手を分かりえないなりにも、丸ごと受け止めようとする覚悟と忍耐で成り立つのであるから。
 それは例えば、余ったパズルのピースを手に取って、あっちに向けたりこっちに返したりと試行錯誤しながら並べる過程にも似ている。根気よくピースを繋げながら少しずつ溝を埋めていくことが人間関係の醍醐味なのだから、その溝の深さにため息がでたとしても、何かしらの取っ掛かりがどこかにあるはずだと知恵を絞って続けてみることだ。

 どうせ通じないと諦めずに、それでもと果敢に関わっていけば、その心意気が相手に伝わって、再び関係性の扉が開くこともある。逆に、その人との縁を大事に思って誠実に接していても、最終的に関係が壊れることもある。それはそれで、全てが成るべくしてなっていく。
 いずれにせよ、誠意をもって目の前の関係性の維持に尽くし切った先には、お互いにとってよりよい新たな局面が展開されることだろう。


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