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tetekoma_manga
恋花粉【毎週ショートショートnoteお題】
雄しべは、たくさんの雄しべ先輩が空に飛んでいくのを見守った。
「僕もそろそろかな」
勢いの良い風が吹いて、雄しべは個室から追い出された。
「花がたくさん咲いてる代々木公園に向かおう」
目的地は決まったが、様々な方向から吹く風で思うように進まない。
「先輩たちはミツバチが僕らを助けてくれるって言ってたっけ、あ!おーいミツバチさーん!」
フラフラ飛んでいる雄しべに気付いたミツバチは、ブーンと器用に方向転換し、雄しべをキャッチした。
「代々木公園に連れていってくれませんか?」
「いいよ!どの花がいいの?」
「まだ決まってなくて、色々見て決めたいんです」
ユキヤナギ
チューリップ
ツツジ
サクラソウ
「かわいい花はあるけどピンとこないなあ」
「おすすめはこの花だよ、僕と同じ黄色で気に入ってるんだ」
雄しべは、陽だまりのカケラのような花に心を奪われた。
ミツバチは雄しべを降ろす。
「君はなんていうの?」
「私はミモザよ」
「僕、君に一目惚れしたみたい」
(407字)
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黄色いミモザの花言葉は「秘密の恋」なんですって!
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