小論文・面接・グループディスカッションなどの入試形式の本質論と対策~その正当性と正体と対策と~

 国立二次試験が近づいてきていますが、近年は小論文・面接・グループディスカッションなど課す大学も増えてきました。普段からあまりやったことがなく苦戦する受験生も多いと思いますが、対策をすればするほど頭の中にある疑問が浮かんできます。

・小論文とか面接って絶対的な答えなんてないのに、なんで採点できるの?
・答えが1つに絞れないのに採点なんで出来ないし、曖昧だろ!!
・採点者のさじ加減1つで合否が決まるなんて、ひどい!!
・公正公平な試験だとは言えない!!

途中から疑問ではなくて怒りに変わってきていましたね(笑)

ただ、この指摘は決して間違ってはおらず、その通りだと思います。では、それでもこんな入試形式が多く導入されている正当性は何なのか、どうやって攻略すべきなのか、をお話していきます。

(1)正確な採点はできなくても、すり合わせればある程度の優劣はつけることができる
 そもそも、「小論文・面接・グループディスカッションなどの試験で正確に点数がつけられるのか(いや、つけられない)?」という批判の前提にある正確性とは、誰が採点しても等しく点数になるのか、という意味だと思います。例えばセンター試験はマークシートですが、これは誰が採点しても必ず同じ点数になります。この観点から考えたとき、小論文・面接・グループディスカッションはおそらく採点者によって点数自体は同じであるとは言えないと思います。しかし、考えないといけないのは、入試の合否を出すのに正確な点数が必ずしも要るのか、という別の問題です。
 結論から言えば、点数は正確に採点できなくても、受験者間の優劣が正確につけることができればよい、と考えられます。結局のところ、受験者が気にしているのは合否の一点のみです。合否が正確であればほとんどの場合は文句はないはずです。その点から考えると、採点者間ですり合わせをして、受験者間の優劣が合意できれば問題ありません。点数でもすり合わせればある程度のところで誰でも採点すれば同じ点数になると思いますが、それより優劣をつけるのはもっとずっとハードルが低いはずです。正確な採点はできなくても、すり合わせればある程度の優劣をつけられることが、この手の入試方式の正当性の1つだと思います。

(2)どの範囲で、採点者が誰か、という観点が大切
 これが実は一番重要な観点です。先に優劣は付けられると言いましたが、どの範囲で、誰が採点するか、が最も小論文などの入試方式の正当性を高めます。では、どの範囲で誰が採点すれば良いかといえば、

「募集している学部学科等の志願者を対象範囲として、所属する教職員が採点する」

ことだと思います。特に後半が重要で、所属する教職員による採点は正当性を引き上げます。大学入学後に受験者を迎え入れ、教育していくのは大学教員です。その先生たちが、教えるに値しない、と裁定を下せば受験生はそれを受け入れざるを得ないでしょう。
 また、私は共通テストの記述問題に反対する人たちが感じた不公平感の最大の原因は、この観点が欠落していたからだと思います。同じ学部学科の志願者同士が同じ採点者によって、しかも志願する学部学科の教員に採点されていれば、かなり不公平感は減退したはずです。ただし、それならなぜ大学入試センターがわざわざ共通の記述問題を課すのか、各大学で記述問題を作ればいいじゃん、という新たな批判が渦巻くとは思いますが。

(3)縁があるか、という考え方
 それでも批判として、志願している学部学科の教員のさじ加減1つで決まるのはどうなのか、その日の気分次第で合否も変わってしまうのではないか、という批判をする人もいると思います。しかしながら、その批判の論法をしていけば、あらゆる試験や評価が不可能になってします。学校に送られた信じられないクレーム集のような本の中で、「その日は子どもの調子が良くなかったら試験で点数が取れなかったけど、本来なら100点を取れたはずなので、通知表を5にして欲しい」というものを読んで唖然としましたが、その批判の延長線上だと思います。さじ加減とは言え、採点者側も職責を全うするために採点をしていまし、採点には説明責任が負わされます。そこに入る込むさじ加減は十分に合否に影響を与えていいものではないでしょうか。
 要はバランスだと思います。第三者が客観的に考えて合理的で、受験者が納得できる形で合否が出るレベルであれば、多少の曖昧さがあろうとも、小論文・面接・グループディスカッションのような試験はなされて問題ないと思います。あまりにも採点の再現性を求めすぎることも、試験方式も無駄に収縮させ、多様な人材を測定し選ぶことの足かせにもなります。
 受験は第一に実力がものをいうと思いますが、実は合否はそれだけではありません。その日の調子もあるし、出題分野の得意不得意もあるし、採点者の線引きのやり方など、いろいろな要素が絡み合って合否が決まっていきます。私はそれは「運」だとは言わず、あえて「縁」だと言いたいと思います。

(4)あまり言われていない攻略法=教授を狙え!
 しかしながら、縁だと言われて、じゃあどう対策をすればいいのか、と途方に暮れる受験生は、いろいろな対策本を読んで、まず自分なりに考えるべきです。私が受験の際には、書店にあった本に書いてことは読み尽くして全部知っていたし、まずは自分で積極的に動いて、考える必要があると思います。
 その上で、志望する大学の学部学科との縁をより結びつきやすくするためには、所属する教授陣について徹底的にリサーチすることです。日本の入試制度の特徴の1つに、出題や採点について教授に大きな権限があることが挙げられます。欧米ではアドミッションオフィスが権限を持って選抜に関わることが多いですが、日本ではほとんどの大学で所属学部学科の教授が主導しています。特に小論文・面接・グループディスカッションなどの試験は、所属の教授たちが最終的に合否を決定します。そのため、志望する学部学科の教授について調べると、小論文やグループでディスカッションのテーマとしてどんな分野を勉強するべきなのか、面接試験でこの教授にはどんな受け答えが良いのかが、自ずと見えてきます。私が指導の際に受験生にやらせているのは、

・顔写真を見て、名前と専門分野を言えるようにする
・著書や論文を手に入るだけ集めて、できるだけ目を通しておく
・面接の際は、面接官の教授によって言う内容を変える

などです。私の生徒たちの試験前の指導の際には、教授の顔写真をiPadに映して名前・専門分野を確認して、各々の教授が面接官だったことを想定した面接練習をします。この練習をしていると、試験本番になると生徒は「あ、本物だ!」という妙な高揚感から緊張が解けるという意外な効果もあるようです。ぜひ試してみて下さい。

 小論文・面接・グループディスカッション等の試験は今後ますます増えてくると予想されます。その中で大切なのは、この試験が学びたい学部学科の教員とのマッチングであり、ご縁があるためにあらゆる努力をしていくことが大切であるということです。

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