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手回し式コーヒー豆焙煎器はレトロな甘いお菓子も作れるのか!?
「わざわざ」自分でコーヒー豆を焙煎して心を豊かにするのが手回し式焙煎器くるくるカンカンの 醍醐味だ。ならば「わざわざ」くるくるカンカンでコーヒー豆焙煎以外のことをしてみたら、その後に訪れる心のゆとりや優雅さを得られるのでは!? 前回は回転を利用して洗濯や万華鏡制作をしてみたがもやもやとした結果が残った。やはり相性がいいのは「食」だろう。くるくるカンカンでコーヒー豆焙煎以外の食に挑む!
やはり王道は食でしょう
初回はくるくるカンカンの重みに注目して書道の文鎮に、2回目は回転に注目して万華鏡づくりと洗濯をくるくるカンカンでやってみた。回転させるもの、生活に近いものの方が「わざわざやる面白さ」は実感できた。あとはゆとりと優雅さを得られるかだ。結果にはコミットしなければならない。
そこで今回は「食」だ。食はうまいまずいで判別できるので結果が明白だ。
はて、食で回転するものとはなんだろうか。
……綿あめ?
初手にしては思い切った挑戦であることは否めない。難しそう。だけどくるくるカンカンで綿あめができたら子供たちは大喜びだろう。
大人はコーヒー豆を、子供は綿あめを。夢のある話だ。綿あめを「わざわざ」くるくるカンカンで作ってみよう。
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綿あめづくりに挑戦してみた
綿あめ作りの原理とは、簡単に説明するとこうだ。
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原理自体はシンプルだ。とけて穴から糸状になって出てきたざらめをからめとるのだ。
問題は穴だ。くるくるカンカンの焙煎缶はスチール缶なので硬くて無数に穴を開けるのは無理。そこでやわらかいアルミ缶に、針で穴をたくさん開けることに。
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遠心力で糸が出てくるまで高速で缶をくるくる回転させればいい。
しかし実際にそんなことが起こるのだろうか?
机上の空論じゃないのか?
かつてないほど高速に回してみる!
正確に測ったわけではないが、秒速4回転ぐらいだろうか。
未だかつてないほど、高速でくるくるさせられる「くるくるカンカン」。
どんなに速くしても回転がスムースなのはさすがだが、
「ここまでくるくるさせられるとは聞いてない」と、くるくるカンカンは思っていることだろう。
だが変化は生まれない。
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そういえばコーヒー豆焙煎においては、最初は豆自体に熱が入ってないのでゆっくり回すのがよかったはず。もしかしたら高速すぎて温まらず、ざらめがとけずにそのままになってるのではないか。
ためしにじっくりめに回してみる。
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こ、これは……!
急に綿あめ屋の匂いがしてきた。
大人が砂糖の匂いにここまで喜んでいいのかと不安になるほどの表情をしてしまった。
とはいえ優雅さに香りは大事だ。思えばコーヒー豆焙煎もあのコーヒー豆が焼けていく匂いがして優雅な気持ちになれたのだ。目を閉じてブラジルやコロンビアや遠く離れた産地に思いを馳せるあの時間。
今は屋台の綿あめ屋のキャラクターが描かれた袋しか思い浮かばないが、そのような想起があること自体「わざわざ」くるくるカンカンでやる良さに近づいているのではないか。
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ざらめの音がジャリジャリからシャリシャリへと変化してきている。きっととけ始めてるのだろうから、そろそろ糸状のもの、綿あめの「綿」の第一弾が出てきてもいいころなのだが……。
缶も温まったので、再び高速でくるくるカンカンを回転させる。
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中は一体どうなっているのだろう。心持ちは優雅さとは程遠く、ただただ不安なのである。
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綿あめの綿は出てこず、代わりに茶色の粒が出てきた。
感情としては「やばい」である。
ためしに割り箸でからめとってみると、粒は冷えて固まっている。
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綿あめを作るつもりが、べっこう飴ができてしまった!
敗因としては回転の速さなのだろう。実験動画を見ると電動ドリルのようなもので超高速に回転させている。
くるくるカンカンじゃなくドリルカンカンだったら……と思うがそんなものでコーヒー豆を焙煎したらまずそうだ。
奥の手は金平糖づくり
仕方ない。まだ奥の手がある。金平糖である。
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なんでそんな昔の子供が喜びそうなものばかり作ろうとするんだ。そしてまた原料は砂糖である。君はアリか、と思われるだろうが、これは勝機があると確信してのことだ。
金平糖はゆっくりと回転する鍋に蜜をかけて砂糖の粒を少しずつ大きくしていくものらしい。
これなら低速でもかまわないし、できる可能性は高い。
また、穴を開ける必要はないのでくるくるカンカンの焙煎缶を使用可能。砂糖がとけてベタベタしてしまう心配はあったが、その時は洗えばいいし、いざとなったら焙煎缶を追加購入できるので安心だ。
さて、金平糖づくりのスタートである。
けしの実などを最初の核とするらしいが、ざらめでもいいらしい。
くるくるカンカンにざらめを入れて濃い砂糖水を少しずつ入れながら温める。
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原理をおさらいしてみよう。
鍋に蜜(砂糖水)をかけて熱する。
すると鍋肌に砂糖の結晶ができる。
それをざらめがからめとって雪だるま式に大きくなっていく。
こういう理屈だと思うのだが何かがうまくいってない。
たとえば芯となるざらめを火で温めているが、熱でざらめがとけてしまわないのだろうか? だとしたら意味がない。
困難はひらめきを生んだ!
検索してみると、ざらめの融点は160℃くらいだそうだ。
そして、水の沸点は100℃である。
つまり、砂糖水が蒸発する100℃以上をキープしつつ、160℃に達しない温度にすれば良いということでは?
水分を蒸発させて砂糖の結晶を作る。
よし、だいたいイメージはできてきた。
しかし、缶は水分が内にこもりつづけそうな形をしている。これでは蒸発しても外に出てこず、ずっとムレムレの状態なのではないか。
そうだ。空気を送り込み、中の水分を強制的に飛ばそう。
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筒で吹いて乾いた空気を送り込む
人間ドライヤーである。
思えば、コーヒー豆焙煎から遠くに来たものだ。
しばらくして、中のものを取り出してみる。
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果たして出来上がったのか!?
できてきている。金平糖のようなものができてきている。
砂糖の粒が大きくなってきているのでこれを続けているときっと金平糖は出来上がる。
ただしここまで30分である。本来の金平糖の大きさにするにはどれくらいかかるのだろうか。
それから、さらに30分回し続けただろうか。
最終的に出来上がったのは、写真の右下の粒である。
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右下はとけてくっついた金平糖の塊
お、最初のざらめより、大きくなっている!
ああ、うれしい。手さぐりの結果、砂糖が少しだけ大きくなった。
しかし、泥団子のような無骨な形だ。
金平糖の優雅さとはほど遠い。
それでもこれだけ考えをめぐらせ、不安になりながらも、懸命に回し続け、出来上がったものは喜びもひとしおである。
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しかし、やはりもやもやとしたものが残る。
やれるだけのことはやったのだから、失敗自体は悔いていない。
とはいえ、もっとコーヒー豆を焙煎するように、優雅な気持ちになれないだろうか?
次回こそは……次回こそは結果を出す!
(つづく)
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クレジット
文:大北栄人
編集:いからしひろき(きいてかく合同会社)
撮影:蔦野裕
校正:月鈴子
制作協力:富士珈機
ライター・大北栄人 https://twitter.com/ohkitashigeto
デイリーポータルZをはじめおもしろ系記事を書くライターとして活動し、2015年よりコントの舞台明日のアー(現「アー」)を主宰。監督した映像作品でしたまちコメディ大賞2017グランプリを受賞。ありふれた日常からクスクス笑いを生み出す達人。
#てさぐり部 とは
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