【あと120日】孤独を克服するには
昨日は、夏目漱石の「こころ」から「孤独」について考えた。
人間が自由になれば「自分で選ぶことの孤独」「自分が選ばれない孤独」が生まれる、みたいな話を書いた。
そのことをもう一歩踏み込んで考えるために、政治学者のカンサンジュさんの「悩む力」という本を手に取った。カンさんは、夏目漱石の「こころ」に並々ならぬ想いを持っておられる方だ。100分de名著でも指南役として登場する。自分が何ものかと思い悩んだ時に、「こころ」に救われたのだと言う。
「悩む力」はベストセラーにもなった本だが、中身を開けば「夏目漱石」と「ウェバー」から学んだことが書かれている。あえて言えば、両者の著書のガイド、解説にも使える本であった。
第1章の「『私』とは何者か」に「自我」について書かれている。私は、カンさんは「自我」について次のような問いを立てていることに注目をした。
“自分の中に、自分を中心としてものごとを考える自我というものがあるとすれば、他者の中にも同じくものごとを考える自我があるわけで、自己と他者の関係をどのように根拠づけるのか”
「自分、そして他人それぞれが『自我を持つ』なら、どのようにして他者との関係を作っていけばいいのか?」ということだ。この問いは、「まさに自由の中で生まれる孤独に、どう向き合えばいいのか?」という問いと同じである、と感じた。ここに、孤独を克服するための何かがあるのではないかと。
漱石はこの自我の問題を作品の中で問い続けた作家と言えるとカンさんは言う。それは漱石自身が自分の自我の肥大に苦しみ「Self-consciousnessの結果は神経衰弱を生ず。神経衰弱は二十世紀の共有病」なりと言っている。
漱石の作品の登場人物たちはみなこの自我に苦しみ、他者との関係に悩む姿が見せるという。その姿をまずは読んでみます。今週末は。それでは。