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バーテンディング【思想】目次

 僕は「バーテンダー」という役割を巡る業界の動向、「バーテンディング」という営みを巡る現代の認識あるいは現代的な理解、それらを憂慮ゆうりょしている。

 私達の内の誰かがどこまでも留まり続けるということではなく世代は順送りで次へ次へと移り、したがって社会が変わらないということはないけれど、それに伴い新しく訪れる趨勢や潮流、業界における流行り廃りにもいろいろあり、メディアなどで喧伝されているものだけに目を向けているようでは確実に取りこぼしてしまい、継承が途切れかねない先人の遺産ともいえる叡智もあるでしょう。

 そのことについてどれだけ危機感をもてているかどうか。

 ただそれ以前にきっと、そのことについて憂慮できるだけの、歴史とは何であるかということについて認識できている人がどれだけいるだろうか。
属する業界の内輪だけを見ているようでは見えてくるはずもないことがあると、あるいはいま自分が見ることができていないことが業界の内にも外にもあると、どれほ自覚的であることができるだろう。

 しかし同時に小さく、小さな希望が芽吹いていたということにも、僕自身最近まで気づいていなかったのだから、これは特定の誰かだけに向けたものではありませんし、ここまで綴ってきたような僕が憂いている事態が本当にあるのだとすれば(もし自分の解釈が実際に起こっている状況と符合しているのだとすれば)、その内部にいる自分という人間もよくもあしくも現状に寄与していると言えます。

 本連載『バーテンディング【思想】』における内容とは、局所的には「バーテンディング」という営為、大局的には「サービス業」「ホスピタリティ」という業界や産業、そして究極的には日本と世界における「文化」や「思想」換言すれば「歴史」や「後世」とも呼べるそれらを巡って、僕が抱えるかかえる「憂慮」と抱くいだく「希望」という、ときには相反するような思慮を、それら異なる要素をそれでも渾然一体とさせようとし混ぜ込んだ結果であるカクテルのように、その都度提示していくつもりです。


1) バーテンディング【思想1】閉鎖性と開放性

 まず「バーテンディング」という営為と「バーテンダー」という職種には、今日こんにち一体どのような実態(本当にそのような状態かどうかは証明し難いですが)があるのかという考察をします。
そのためには現在まで私達の認識にいかなる変化があり、それに伴い現代までにどのような潮流が発生しているかを俯瞰する必要があると考えています。
先行する各世代が生きた時代について眺めた際に際立って現れるのは、その時代ごとに特有の社会性です。そしてそこでどうしても考えさせられるのは、漸進的ではあってもそれらが紡がれた結果であり、また一種の到達点ではあるこの時代に生きている私達と、後発世代に属する私とは、では一体どのような存在であり得るのか、それゆえ何ができるのか、またそうすることで後世への影響とこの先の歴史はどうなりそうなのか、ということであり、その思索について綴る第一章です。

2) バーテンディング【思想2】世界観、流派、ブランド
近日公開予定



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 本連載『バーテンディング【思想】』では私個人が、「飲食」「サービス」「ホスピタリティ」の業界における実情が社会の変容とどのように紐づいているかについて顧み、その結果これから後世に向けてどのような在り方があり得るのかという可能性について検討し、それらの内のどれを採ることが私達にとって善いと想っているかについてを綴っているため、その内容とは必ずしも万人に適応できるものであると断言はできません。
 ひるがえって、「バーテンディング」という営み、またはそれを仕事とした場合、より実務的で万人に対してある程度の効用が見込める、つまり各々の研鑽や成長に寄与することができるであろう「学び方」についてまとめたものは以下の連載『バーテンディング【理論】』となります。