郊外の時代なんて来ない
体力や容姿、家族構成、スキル、学歴、幸福感など…、一人一人の個性や事情もしくは価値観に合わせて柔軟に仕事や居住地が選べる時代です。働き方改革やコロナ禍の影響から、通勤時間と労働時間が減って余暇時間が増え、ライフスタイルの多様化に拍車がかかっています。仕事のほか、副業、スポーツ、趣味、癒し、子育て、介護などで自分の時間をいかに有効活用するか。自由というよりむしろ「小ぜわしい消費社会」の到来です。
この消費の変化を契機に、国やSUUMO編集部らが世間の関心を地方に誘導しよう必死ですが、「都心が衰退し郊外の時代になる」なんてのは言い過ぎです。パソナ一社が淡路島に移転したくらいで、東京一極集中が変わるはずありません。とはいえ、ウィズ・コロナの新たな制度やニーズ、ビジネスが生まれつつあり、社会や意識に多様化を感じます。我々河内長野市は、郊外の時代を喜ぶのではなく、人々の多様性や変化に適応しなかったから生き残れないという従来どおりの話です。
例えば、在宅勤務・リモートワークを前提とした雇用が増えています。これを地域活性化のチャンスと考えてみます。さすれば、在宅勤務者≒純ホワイトワーカー≒クリエイティブ人材≒起業家(以下ニューワーカーと呼ぶ)を集める地域が発展するでしょう。なぜなら、ニューワーカーは近所を散歩やジョギングする。あるいは買い物や外食に出かける。人との出会いを求め、図書館や駅前にシェアオフィスを訪れる。新たな人との関係が地域に刺激を与え発展の種となるからです。ただし、より楽しい地域があればいずれ転出してしまいます。
では、地域としてニューワーカーをどうやって引き込み、引き留めるのか。きれいな空気と緑でしょうか。住宅物件の価格でしょうか。美しい街並みや文化の香りでしょうか。やすらげるカフェや図書館などでしょうか。知らない人と出会える場づくりでしょうか。
私は、まずはこれを読むあなた自身が彼らニューワーカーと知り合い、仲間になることだと思います。類が友を呼び、居心地のよいコミュニティが地域へのロイヤリティを高めます。
奇しくも、彼らと最も遠い世界であるだんぢり・地車・青年団が示してくれています。彼らは交通の便利さ、自然の深さ、住宅や生活のコスパ、支援補助金の額、実家や職場への距離、10年後の資産価値や利回りなどよりも、人とのつながりや人への憧れで住む場所を決めているように思えます。
以上のことから、移住定住促進業務を通じて担当職員が対象者となんとなく仲間になり、うっすら同志となり、コミュニケーションや関係を構築できるような都市が生き残るのではないでしょうか。
多くの日本人は「勉強して卒業して、仕事して定年になったら、年金や貯蓄で時間を潰して、生活習慣病で死ぬ」ことになんら変わりはありません。そんな一人一人の人生設計の中に、地域や行政や職員という存在がどれだけ食い込めるかに河内長野市の未来がかかっているのです。
そう、誰もが楽しみながら。