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【本の紹介】ハラスメントがおきない職場のつくり方(中川瑛著)

今回は私が読んだ本「ハラスメントがおきない職場のつくり方」を紹介します。
ハラスメントには至らないグレーケース事例について思うことを書いてみました。
皆さんのお役にたてれば嬉しいです。


どんな本?

「ハラスメント」が起きない職場、というタイトルではありますが、本書は著者が提唱する「ケアリング・ワークプレイス」についての前提と、その作り方が書かれています。

著者は組織開発コンサルタントであり、ハラスメントより広い領域で「ケアの哲学」を基盤としてモラハラ・DV加害当事者団体GADHAを主宰し、「加害者」個人の変容だけではなく、その人が属する組織、社会などのマクロな「加害者を生み出す構造」の変容について、実践・発信をしている方です。

ですので、「ハラスメントで完全アウト」というケースというより、グレーゾーンにある「ケア」されていないとメンバーが「怖い職場」感じてしまうケースを事例として取り上げています。

グレーゾーンの事例では、その「怖い職場」において、知識経験を持った人と、新たにその組織に参入したメンバーで起こりうるケースが紹介されており、管理職やベテラン層の人は「ギクっ」とする内容もあります。

そのような事例にならないためには?ということで「ケア」を相互にしあうための考え方が書かれています。
「ケア」の前提には「個人のニーズ」があり、そのニーズを相互理解することが大切であると著者は訴えています。

さらに「加害者」となってしまう人の考え方と、そんな加害者にどのように寄り添うのか?といった内容にまで踏み込んでいます。
また、著者は「加害者」は個人の性格の問題だけで片付けるのではなく、その所属する組織の課題と捉えており、組織をどのように運営するか?といった内容まで紹介されています。

本書の最後には、組織開発コンサルティングで提案されているであろう対応策も多数掲載されていました。

「ハラスメント」の直接的な対処法ではなく、本書のタイトル通り「ハラスメントが起こらないように」という事前対処として「組織開発」ということを考えていきましょう、という提案されている本です。

人事のお仕事をされている方、管理職の方、ベテラン社員の方など、何らかの組織を動かす力をお持ちの方に有益な本だと思います。

私の気づき

この本を手に取ったきっかけは、先日受験した「ハラスメント防止コンサルタント」の試験に合格し、コンサルタントとして様々な事例を情報収集するためでした。

グレーゾーンの事例は、読むと確かに「あるある」なのですが、自分自身の管理職時代に「あ、これやってしまっていたかも」という事例もあり、ちょっと冷や汗をかきました。

私が、冷や汗をかいた事例は「学びの姿勢に関しての認識の違い」です。
先輩社員は「自分でどんどん学ぶべき」と思っていて
最近入ってきた社員は「一から丁寧に教えてもらえる」と思っている。
この認識の違いが「質問ができない」「教え合う土壌がない」という「怖い職場」になっていく、そして、退職につながる、という事例です。

その事例は確かに、ハラスメントまではいかないケースでした。
ですが、そこにはハラスメントの根本的な理由となる背景と共通点がありました。
それは「自分だったら●●するのに、なぜ、●●しないのか」という、
「自分の意見の押しつけ」「自分は悪くない」の発想です。

第三者として事例を見ていると、「あぁ、すれ違ってるな」と明確に分かることなのですが、当事者になってみると、なかなか冷静に自分が「意見を押し付けている」ということは見えないものです。

そして、この事例で「自分は悪くない」スタンスが継続し、感情的になっていくと、「意図せず、ハラスメント加害者になっていく」というところまで発展することもありえます。

著者はこんなことを言っていました。

どんな人も、生まれたばかりの頃は人を傷つけられなかったはずです。この社会で何かを学び、加害的になっていったのです。

CHAPTER1事例:グレーゾーンのハラスメント より

これは、私もその通りだと思っています。
たった今、誰かを傷つけてしまった人も、その人にとっての何かしらの「背景」を抱えている、そう思います。

だからこそ、適切なコミュニケーションが必要となります。
適切なコミュニケーションとは「傾聴」し、「相手を知ること」ということになるのではないかと思います。

そして、「傾聴」や「相手を知ること」は、相手のニーズや希望を全て叶えて「賛成する」ということではない、ということも大事なポイントになります。

本書では、私が冷や汗を書いた事例では、
知識や経験を持つ(つまりは、その組織の中で力を持つ)先輩社員が
「教えてもらえる」ということを前提としている人に対して
「相手を知る」ための質問をしたり、自分自身に「相手の合理性」を問う、という解決策が書かれていました。

確かにその通りです。
職場という場所では、より強い力を持っている人が、より義務を負う、という構造のため、最も適切な結論です。
そうやって、個々人が誰に対しても、自分の意見を押し付けず、配慮をしていくことがとても大切だと思います。

ですが、それ以外に組織的な問題もありそうな気もしました。
「この先輩社員に時間的な余裕はあっただろうか?」とか
「この先輩社員以外に教える人はいなかっただろうか?」とか
「教えてもらう側が前提知識くらいは自分で学ぶ方法は現場サイドだけでなく、会社として考えられなかっただろうか?」とか
「教えてもらう側の”依存”を抑える方法は考えられなかっただろうか?」
などなど、これ以上「怖い職場」にならないようにするための解決方法を考えるべき問題はたくさんありそうです。

今回は「教える側」が知識経験面で力を持っているケースでしたが、
仮に「教えられる側」が圧倒的多数になった場合、パワーバランスが逆転することもありえます。

そう考えると、「教えられる側」が加害者になることがありえる、
つまりは、全員がいつどこで加害者になるか分からない、そう思ってもいいかもしれません。

そうならないように、できるだけ職場が快適で仕事を前向きに楽しめるようになるために、
一人一人が「自分の言動は自分の意見のみの押しつけになっていないだろうか?」「相手はどういう状況だろうか?」という「配慮」が必要なのではないかなと思います。

そのような「配慮」には、各自の「自律」が前提となります。
「自律」というのは、
どんなことでも自分だけが律して我慢するということではなく、
自分を甘やかしすぎず、酷使しすぎず、周りに「適切に状況や気持ちを伝える力」にあります。

まずは、一人ひとりが「自律」したコミュニケーションが取れるようになることが、「怖い職場」を改善するための一歩になると思いました。

おすすめポイント

ハラスメント恐れて部下に適切に注意ができない管理職の方、
離職防止策を検討している管理職の方、
人事施策としてどのような対策を取ればいいか?と検討中の方にとっては、今後の方法論が見える書籍になり、おすすめです。

職場でのハラスメントは減少傾向(カスハラは増加傾向ですが)にあるため、グレーゾーンからの離職防止対策にもおすすめの一冊です。


「ハラスメントと言われるのが怖い」と思われた管理職の方、
「離職防止策を検討中」の管理職や人事職の方、
私でよろしければ、壁打ちのお相手を
させていただきます。
以下のURLにてご相談依頼してくださいね。
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