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#3 学校統合のジレンマ②

前回述べたように教育施設としての機能の点からすると、小さくて近くに統合しても一定の時間内に通える学校がなら、統合した方が良いということになりがちだ。

だが地域社会の側の論理からすると事はそう単純なものではない。

学校には単なる共施設としての一つとして割り切ることのできない面があるからだ。

第一に多くの地方部において、学校は地域コミュニティの中で一番中核的な施設であることだ。郵便局や公民館など比較的小さな施設がなくなるのと一番大きな施設がなくなるのとでは全然違う。

第二に学校は地域の精神的シンボルとしての側面がある。学校がなくなることで、地域の心の基盤が失われてしまうのではないか・・・そうした危惧を抱く人は少なくない。

第三に「教育」という、人間社会にとって普遍的な営みを通して人々が繋がれるコミュニケーションの拠点でもあることだ。病院にほとんど行った経験のない人はいても、学校という施設に縁がなかったという人は希だ。誰もが親近感を持てる場で、教育という営みを通して老若男女が相互に繋がる事ができる・・こうした公共施設は他にない。

だから地域を守ってきたという意識のある年配世代にとって、学校の統合は受け入れ難い提案だ。保護者世代は統合の望み、その親の世代は学校存続を願う。そうしたねじれが生じることもめずらしくはない。

加えて、市町村にとっても学校の統合による影響は無視できない。移住者や独立する世帯が居住地を選択するに当たり、学校に通うためにバスを利用しなければならない地域と、徒歩で通学できる地域があれば通常は後者の地域を選ぶ。

このようにして市町村の周辺部から中心部へと流れる人口移動が加速すると、長期的には周辺部から人がだんだんに減少して、あたかも市町村内の居住地域が縮小していくかのような影響を市町村にも与えることになる。

学校統合に絡むジレンマ-教育上の効果・効率性と地域の維持発展-は、人口減少社会の課題をリアルに象徴する問題だ。

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