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マガジン限定記事「ママチャリ女性はなぜここまで大炎上したのか?」

 その日は現場仕事が忙しく、SNSのタイムラインをろくに眺めている時間がなかったせいでリアルタイムでは気づかなかったのだが、先日のペケッターランドでとある大騒動があったようだ。

 SNS上にアップされた、とあるドライブレコーダー映像がその発端となっていた。その映像には、逆走していた自転車の女性があわや衝突しそうになった自動車の運転手に怒声を浴びせたり、なにやら写真撮影や通話をする様子の一部始終が動画に収められていた。

 これがネット上で瞬く間に拡散して2024年でも最強クラスの大炎上騒動となり、動画に映っていた「ママチャリ女性」に非難の声が殺到した。炎上したその日のうちに名前や住所はおろか、子どもが通っている保育園や配偶者の勤務先までネット上で「特定」されてしまったらしく、聖地巡礼を称して付近のエリアに「凸」する者までもが現れる異様な事態に発展していた。

 道路交通法を違反した走行(逆走)を行ったり、あわや衝突しそうになった自動車に対して謝罪するどころか怒号を飛ばしたり写真撮影するというのは、たしかに社会常識を鑑みても褒められた行為ではない。

 ……しかしだからといって、匿名のネット民が寄ってたかってプライバシーを暴いたり、彼女が暮らしているとされるエリアをうろついて「凸」を仕掛けたりするといった迷惑行為を正当化することはできないだろう。ましてや家族の情報を晒したりして「連座」させるような行為は言語道断の不法行為である。ネットで「悪党」を見つけたからといって、直接の利害もなにもない無関係な第三者が我先にと私刑に殺到する光景は恐ろしくもある。

 昨年夏の「寿司ペロ少年」の騒動のときにも、私はネットで苛烈化するバッシングや私刑の盛り上がりに対して「やりすぎだ」という意見を持っていた。昨年末の「デスマフィン」騒動のときも同様だ。たしかにかれらは「悪い」ことをしたかもしれないが、それはSNS上の人民裁判の開廷を促したり、際限ない私刑を正当化するものではない。

 しかしながら「寿司ペロ事件」にせよ「デスマフィン事件」にせよ、そして今回の「ママチャリ女性事件」にせよ、SNS上で常軌を逸したスケールの炎上とリンチが発生するケースにはある一定の法則性というか、共通する要因があることに気づいた。

 その共通する要因とはすなわち――

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