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マガジン特別記事「斎藤元彦はなぜ逆転勝利したのか?」

 さて、県外からも大きな注目を集めていた兵庫県知事選挙は昨日投開票が行われ、前職の斎藤元彦氏が再選して幕を閉じた。

 紆余曲折の末に斎藤氏の返り咲きが決まったことで、すべては振り出しに戻った。発端となった今年3月の「内部告発文書」騒動からの9カ月近く、県政はただただ停滞してしまっていたといっても過言ではない。

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 多くの方がご存じのとおり、知事選がスタートした当初は対立候補だった稲村和美氏が大きくリードした情勢であるとささやかれていた。私の周囲を観測するかぎりでも、その時期に「斎藤が勝つ」と予想していた人は皆無だった。主要なメディアでも各社そろって「稲村氏優勢」の予測を出していた。しかし結果はご覧のとおりだ。斎藤氏が下馬評を覆す「大まくり」を成し遂げ、稲村氏にかなりの差をつけての勝利となった。

 選挙中に書くと法的にいろいろと問題があったのであえて黙っていたが、じつは開票日だった17日、投票締め切りよりも前の16時~17時ごろにはもうすでに私は「斎藤勝利確実」「ゼロ打ち当確もありうる」という情報をとある関係筋から入手していた。

 さて、SNS上では今回の県政史上まれにみる全会一致の不信任(失職)からの奇跡的な大逆転劇について

・「オールドメディアが叩く側=権力に虐げられている善」というストーリーが大衆に支持されるようになった

・マスコミの世論操作に対して、SNS世論が互角以上の影響力を持つようになった

・N党・立花孝志氏の登場によってSNS上にフェイクやデマが溢れて情報がかく乱され、斎藤氏にとって有利に働き逆に稲村氏が追い込まれた

 といった筋書きが支持を集めている。

 なるほどそういった側面が今回の選挙ではたしかに部分的にはあったようにも思える。斎藤氏自身も選挙後の勝利演説のなかで「SNSのよい面に大いに助けられた選挙戦だった」と振り返っていた。SNS上では斎藤氏の演説に数えきれないほどの聴衆が詰めかける様子が連日伝えられていた。その様子が倍々ゲームのように熱を生みやがて、お祭り騒ぎ的な「斎藤フィーバー」をもたらした側面はあっただろう。

 またN党・立花孝志氏の登場によって「斎藤氏が嵌められた」「斎藤氏の一連の疑惑は一切が事実無根だった」などという筋書きがSNS上でも拡散するようになり――むろんその真偽は現時点では明確ではないのだが――それが斎藤氏の追い風になったという側面もおそらく一定の妥当性はある。

 しかしながら、これらの説でもって今回の「逆転劇」のすべてを説明してしまうことも乱暴な議論で、言ってしまえばそれらもまた「イマドキのネット上で腹落ちする筋書き」であるようにも私には見える。

 私はそれらとはまた別の要因があって、今回の逆転劇につながったと考えている。今回の選挙にはかなり複雑に交錯した論点があるので、一つひとつ整理していきたい。
 

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