積み重なる文化のもとで 辰巳蒸留所 代表・蒸留家 辰巳 祥平さん
お酒造りの現場を取材し、記事を書く。
その体験の前と後では、そのお酒の味わい方が変わることはよくある。
今回もそうだった。以前から「アルケミエ」のお酒は、飲んだことがない新しい味わいを感じながらも、すごくまとまりがいい。そんな印象を与えてくれるお酒だった。新たな味わいのお酒は他にも多くある中で、何かが違うと感じていたのかもしれない。それが取材の後で、腑に落ちた。古くから現在まで脈々と続く歴史文化や技術の積み重ねを会得している方がつくっているからだと。
世界で最初の焼酎の記録は1546年。ポルトガル商人ジョルジェ・アルバレスの見聞録『日本報告』にて。「日本には、身分の上下を問わず皆が飲める米からできたオラーカがある」と日本来航前のフランシスコ・ザビエルへ宛てています。オラーカとは蒸留酒のこと。その時代、オラーカ(焼酎)を造るに使っていたであろう、兜釜(かぶとがま)蒸留器。現在は使われることの少なくなったこの太古の蒸留器を使い、岐阜県の郡上八幡でスピリッツをつくる蒸留家がいる。
(本記事は、フリーマガジンterra本誌の文章をそのままに、写真と編集のみを変更したものとなっております)
取材・文:大島 有貴
写真:古賀 親宗