#1616 自己調整学習のポイントまとめ
今回は久しぶりに、教育書のポイントまとめをする。
参考図書は、友田真氏の『自己調整学習』である。
以下、自己調整学習の三大要素と三段階ごとにポイントを整理していく。
自己調整学習の三大要素
1 動機づけ
・自己決定理論には以下の「調整スタイル」がある。
➀外的調整
②取り入れ的調整
③同一化的調整
④統合的調整
⑤内発的調整
このうち、①②が「他律的動機づけ」、③~⑤が「自律的動機づけ」と分類される。
しかし学校教育では、学ぶべきことが学習指導要領で規定されているため、実質的に⑤はありえない。
そのため、④の「統合的調整」を目指すことが求められる。
このような、子どもの「自律的動機づけ」を高めるためには、「関係性」「有能感」「自律性」の順に、3つの心理的欲求を満たすことが重要となる。
・「関係性」の欲求を満たすためには、教師と子どもの関係を良好にし、信頼関係を結び必要がある。
そして、子どもに「有能感」を与える言葉かけをすることが重要となる。
その際、「成長マインドセット」をもつような言葉かけを重視する。
・「努力」や「学習方法の選択」に原因帰属するよう促すことで、「有能感」を充足させる。
その際、原因帰属する比較対象は「自分自身」とする。
・「予見段階」で「自分事の目標」を設定することを重視する。
そのためには、教師が「なぜ学ぶのか」「学びのゴールは何か」という趣意説明をする。(「学びマップ」の活用)
また、学習前に「メタ認知スケール」を活用することで、自分の理解度をモニタリングすることができる。(初級→中級→上級→エキスパート)
これらの工夫により、「自分の目標」を設定することができる。
さらに、設定した目標をクリアするために、「学習方法」を選択する。
学習の終末には、目標の達成度と学習方法の是非を振り返るようにする。
・次の学習につなげるために、「内省段階」で「振り返り」をする。
これにより、次の学習につながる「動機づけ」になったり、「学習方法」の向上・改善につながったりする。
また、「振り返りの視点」を共有することも重要となる。
・「遂行段階」では、子どもたちの学習状況、学習方法が適切かどうか、目標を達成できそうかどうかを観察し、必要なフィードバックを行う。
また、理想とする姿が見られたら価値付けをしたり、メタ認知を促す質問をしたりする。
・自己調整学習成立の基盤は、学級が「安心して学べる環境」になっていることである。
2 学習方法
・経験していない方法は、自分に適切かどうか判断できないし、選択することもできない。
・自らの学習過程における「学習方法」を振り返る。
これにより、自分に適切な学習方法を見出し、定着させることができる。
・UDLの考え方を取り入れ、障壁となるものを取り除き、子どもの実態に応じたオプションを用意する。
・学習方法の選択肢の例
➀手書きorタイピング
②授業動画や要点をまとめたスライドの用意
③参考図書やポスター、パンフレットの用意
④どこで学ぶのか
⑤誰と学ぶのか
⑥何で学ぶのか(プリント、ドリル、問題の出し合い、ポイントまとめ)
・子どもたちの多様化、精神発達年齢の差を考慮し、学習方法の選択肢を広げる。
・自己調整する力には、以下のような成長段階がある。
➀観察
②模倣
③自己制御
④自己調整(応用が利くので、教師の想定を超えることもある)
・子どもたち一人一人を「学習リソース」として捉える。
そして、ただ答えを教えるなどの「依存的援助要請」ではなく、解き方やヒントを示すなどの「自律的援助要請」を重視する。
3 メタ認知
・子どもたちの「メタ認知」を高めるための指導を継続する。
➀子どもが学びの舵取りを行う授業デザインにする
②選んだ学習方法についてのメタ認知を促す
③「メタ認知スケール」や「振り返りの視点」を活用する
・「予見段階」で以下のツールを活用する。
➀メタ認知スケール
②学びマップ
これらのツールにより、自分の理解度を「メタ認知モニタリング」し、その後の「メタ認知コントロール」につなげることができる。
・「遂行段階」では以下の点を重視する。
➀教師による子どもの学びの価値付け
②メタ認知スケール(やラーニングピラミッド)の活用
これらにより、「メタ認知モニタリング」と「メタ認知コントロール」を促すようにする。
・「内省段階」では以下の点を重視する。
➀振り返りの意味を確認する(自分で舵取った学びだからこそ振り返る)
②「振り返りの視点」を共有する
③メタ認知スケールを再度活用する
・「教訓帰納」と「仮想的教示」を重視する。
➀教訓帰納:授業前後でなぜ理解度が変化したかを振り返り、今後に生かせそうなことを引き出す(未来へのメッセージ)
②仮想的教示:今回の学習内容をそれを知らない人に教示するつもりで説明する
・単元の終末に「ノートまとめ」をすることで、「メタ認知」を育む。
これにより、自分の理解度をモニタリングすることになる。
・「メタ認知」が高まれば、「テストに向けての学習」「テスト中」など、様々な場面で自己調整することができるようになる。
自己調整学習の三段階
1 予見段階
・「学びマップ」をもとに、単元や本時の学びを概観する。
・自分自身の理解度を「メタ認知スケール」をもとにモニタリングする。
・「自分事の目標」を設定する。
・適切な「学習方法」を選択する。
・前回の「内省」で得た気づきや改善点を確認する。
・教師は、「なぜ学ぶのか」「学びのゴールは何か」という趣意説明をする。
2 遂行段階
・選択した「学習方法」で学習を進める。
・教師からのフィードバックをもとに、学習方法の修正をする。
・教師は、子どもたちの学習状況を観察し、必要なフィードバックを行ったり、価値付けをしたり、メタ認知を促す質問をしたりする。
・教師は、前もって「子どもの視点」でオプション(学習方法の選択肢)を用意しておく。
3 内省段階
・「自分事の目標」の達成度を評価する。
・自分が実行した「学習方法」の是非を振り返る
・「振り返りの視点」をもとに、自己の学びを振り返る。
・結果に対する原因帰属をし、次に向けての動機づけを高める。
・教師は、振り返りの意味を語ったり、「教訓帰納」や「仮想的教示」を促したりする。
以上である。
ぜひ、自分の実践に生かしていきたい。