#1665 生涯にわたって能動的に学び続ける力
今回は、加固希支男氏の著書『「生涯にわたって能動的に学び続ける力」を養う教科教育への挑戦』からの学びを整理していきたい。
この書籍を読んで、久しぶりにカミナリに打たれた感覚を得た。
※詳細は、次の記事で。
以下にポイントをまとめていく。
1 生涯にわたって能動的に学び続ける力を養う
・子ども自身が自ら問題を解決したり、学習環境を選んだりしながら、学習を自ら進めている実感をもたせる。
→子ども自身が必要感をもって行動することが許される環境を整える。
→子どもが必要感をもった行動を促すような声かけをしていく。
・「教師にやらされる」という構図ではなく、自分なりに発見があったり、自分の成長を実感できたりするときに授業が「楽しく」なる。
・授業を「楽しく」するためには、「問題を解く意味を理解させる」「何のために学習するのかを理解させる」ことが重要。
→「今まで使ってきたことが、目の前の問題でも使えるの?」という意識をもてるようにする。
・共通点を考えること=統合的に考える
統合したものを使い、学習の先を考えること=発展的に考える
※数学的な考え方
・見方・考え方を働かせる過程
➀複数の見方を働かせる
②複数の見方の共通点を考え、統合する(考え方)
③レベルアップした見方になる
④「だったら~もできそう」と発展させる(考え方)
→見方・考え方を働かせることで、子どもが能動的に学びやすくなる。
・教師が準備したプリントやドリルの問題を解いているうちは、与えられた問題を解くだけの構図となる。
→「問題は先生が与えてくれる」「自分は問題を解くだけでいい」という学習観を変える。
→自分で疑問をもったり、問題を考えたりする力が必要。※魚の釣り方
→各教科等の特質に応じた「学び方」を身に付ける。※見方・考え方
→「生涯にわたって能動的に学び続ける力」を養う。
・算数では、学習内容だけではなく、数学的活動という「学び方」を学ぶことも目標となる。
・数学的活動の学習過程
➀A:数学化する
②B:「何のために解くのか」を理解する、焦点化する
③C:焦点化した問題を解決する
④D:学習を体系化する
・数学的活動のBとDの重視
(1)B:問題の焦点化
➀「前に使えたことが、今回も使えるかな?」
②「既習が使えないから、どうすればいいかな?」
(2)D:学習の統合・発展/体系化
①「前の学習と同じところ、違うところは何かな?」
②「いつでも使える大切なことは何かな?」(統合)
③「じゃあ、どんなことができるかな?」(発展)
→BとDを往還的、連続的に行っていく。
・単元の導入では「一斉授業」を行う。
→その単元の学習で働かせるべき見方を顕在化し、共有する。
→どんな既習事項との関連を考え、解決した問題を発展させていけばよいかという、学習のつながりを意識させる。
・単元の中盤以降では、見方・考え方を働かせることで、個別学習として「自己調整学習」を設定しやすくなる。
➀予見段階:AとB
②遂行段階:C
③内省段階:D
・単元の前に、前学年までに働かせた見方・考え方を復習することも重要。
→「覚える学習」ではなく、「理解する学習」に変えることができる。
・教師が各教科等の特質に応じた「学び方」を理解し、時間をかけて子どもたちに身に付けさせていく。
→子どもが自分で問題を見つけたり、つくったりできるようになる。
・教師の役割は「見方・考え方のつながりを意識した系統性のある教材研究」である。
→目の前の学習や単元で働かせる見方・考え方を言語化できるようにする。
→一人ひとりの子どもの学習を見取り、価値付けることができる。
・見方・考え方を働かせること=深い学び
・まとめ
旧来の知識伝達型の授業
↓
GIGAスクール構想で加速する「個別最適な学び」と「協働的な学び」による授業改善
↓
「各教科等の特質に応じた見方・考え方」を働かせて育てる「資質・能力」と「主体的・対話的で深い学び」の繰り返し
↓
生涯にわたって能動的に学び続ける力
➀資質・能力(問題解決のための道具)
②学び方(道具の使い方)
・見方・考え方を働かせて、資質・能力を養い、「学び方」を学ぶことで、「学習は自分で創り出すことができる」と思えるようにする。
→「自分が関わっている社会は、自分で変えられる」という気持ちをもてるようにする。
・「負けたらおしまい」ではなく、「勝ち負けでは終わらない」「学び続け、チャレンジし続ける」という学習観を広める。
2 個別最適な学び
・学習指導要領の目標が「子ども主語」になっている。
→ますます「個別最適な学び」の概念は考えていく必要がある。
・指導の個別化:全員が身に付けてほしい教科書の内容理解を、一人ひとりの学習進度に合わせて目指す学習
・学習の個性化:教科書の内容から飛び出し、学習のつながりを意識した内容を、一人ひとりの子どもの興味・関心に委ねて学ぶ学習
※同様の見方・考え方で学習を発展させる。
・教師に用意されたプリントを解き続け、「解けたらよい」という学習観を与え続けてはいけない。
→見方・考え方を働かせて、自ら問題を発展させる学習が必要である。
・一斉授業の在り方
→「学び方」を学ぶ場
→「見方・考え方」の働かせ方を学ぶ場
・単元づくりの実際
(1)単元の導入では、一斉授業を行い、働かせるべき見方・考え方を顕在化して共有し、単元を通した課題意識をもたせる。
(2)はじめに全員で、働かせるべき見方・考え方や課題意識を共有してから、個別学習に入る。
(3)個別学習の前半:指導の個別化
①全員共通の課題を提示する
②大切な見方・考え方を確認する
③前の学習と共通する見方・考え方を確認する(統合)
④ICTなどで、見方・考え方を共有する
(4)個別学習の後半:学習の個性化
問題を発展させる視点
①数を変える ②数の個数を変える ③場面を変える
※同様の見方・考え方が使えるか考える。
・見方・考え方をICTで共有するとき、教師は実況中継をする。
・塾などで先行知識をもっている子どもには、「見方・考え方を同じように使えているか」と問うことで、先行知識を見方・考え方で振り返ることができ、目の前の学習とのつながりを考えることができる。
・「全員取り組むべきもの」と「取り組まなくてもよいもの」の線引きを明確にする。
→「取り組まなくてもよいもの」を全員で共有する必要はない。
・「子どもに個別学習を任せる勇気」だけではなく、「一斉授業を行い、子どもから学習を戻す勇気」も必要である。
※理解を共有する必要があるとき
・個別×協働の学び
➀一人で問題に取り組む。
②近くの人と解き方を共有して、働かせた見方・考え方を顕在化する。
③解き方や答えを保証する。
④大切な見方・考え方をICTで共有する。
⑤見方・考え方を使い、問題を発展させる。
⑥発展できないときは、教室内を歩き、自分が興味をもった問題を作っている人を見つけ、一緒に問題を解く。
⑦「見方・考え方」「協働できたか」を切り口に学習を振り返る。
・「対面×非同期コミュニケーション」の授業では、周りからノイズが聞こえる。
→見方・考え方を働かせるきっかけになり、深い学びにつながるような情報に触れることができる。
・子どもたちが学び合うための学習風土
➀答えだけ出すのではなく、説明できるようにする
②自分だけでなく、より多くの人が理解できるようにする
③教わるだけではなく、自分でも説明・表現できるようにする
※一斉授業で、学び合える風土を築いておく。
・教師は理解が不十分な子どもに個別指導をし、人と関われる基礎を築いてあげる。
3 各教科等の必要性と探究学習
・教科教育では見方・考え方を働かせやすいので、知識が使える根拠や背景を考え、他の知識と結び付けながら構造化させていくような「学び方」を学ぶことができる。
→教科教育を通して、3つの「学習の基盤となる資質・能力」を育てる。
➀言語能力(考えを書く、説明する)
②情報活用能力(ICTで情報を集める、友達に聞く)
③問題発見・解決能力(問題の発展、問題の自作と解決)
※現実問題の解決だけでは、「~さえ分かればよい」という学習に陥る。
※「解いて終わり」「調べて終わり」という学習から脱却する。
※だからこそ、「教科教育」が必要なのである。
・学習内容を串刺しする串:見方
串を刺し進める力:考え方
→各教科等の特質に応じた資質・能力が育成される。
・各教科等の学習で育成した資質・能力や獲得した学習内容を、各教科等の学習で相互に使いながら、「総合的な学習の時間」で探究的な学習を行うことで、子どもの疑問・関心に基づいた課題を解決する経験をさせる。
→現実問題を解決できるような力を養う。
※「探究のサイクル」で課題を解決していく。
・「探究のサイクル」では、「子どもの疑問・関心に基づいた課題設定」が一番重要である。
→いかに魅力的で、子どもの熱量が上がる課題を設定できるかが肝となる。
4 カリキュラムオーバーロードへの対応
・学習内容を精選する根拠を明らかにする。
→重要な概念や考え方を理解することで、一つひとつの知識をつなげ、系統性やつながりを意識した理解を目指せるようなカリキュラムデザインをする。
※見方・考え方を働かせる。
※「これ以上やる必要はない」と判断しやすくなる。
・「本当にこの学習内容を理解すれば、あとは同じようにできると子どもは考えられるのか?」ということを批判的に見直す。
・見方・考え方を働かせることで、「見通しをもつ」「課題の共有」という時間を短縮することでができるので、時数の削減につながる。
・カリキュラムオーバーロードへの対応策
➀見方・考え方を働かせることで、学習内容を精選する
②見方・考え方を働かせることで、学習速度を上げる
5 数学的な見方の例
・~を1とする
・単位を揃える
・整数にする
・~法則
・面積を求められる形にする
・図形の中にある数値を使う
・二量の比例関係
以上である。
はじめは、加固氏の著書なのに「なぜ算数というタイトルじゃないの?」と疑問をもった。
しかし、読んでいくうちにその謎が解けた。
「見方・考え方」というものは、算数科だけではなく、全ての教科教育で働かせることが重要となる。
つまり、算数科の実践例が多く載ってはいるが、それを生かして、全ての教科教育でも「見方・考え方」を働かせていくよう促すことが重要であるということである。
「見方・考え方」を働かせながら、教科教育と総合的な学習の時間を往還するカリキュラムデザインをしていく必要がある。
今回の学びをこれからの授業実践に生かしていきたい。