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#1627 シン社会科の授業づくり【社会科】
今回は、社会科の授業づくりをアップデートするための実践を整理していく。
参考にしたのは、横田富信氏の実践である。
1 学習問題をつくるためのデジタルワークシート
社会科の授業は「学習問題」が命である。
学習問題が単元を貫く問いとなり、子どもたちの学びを駆動していく。
そのような学習問題をつくるためには、子どもたちの思考の方向性をまとめていくことが必要だ。
よくやりがちなのが、電子黒板に資料を映し、教師が発問し、何人かの子どもに意見を言わせるやり方だ。
これにより、思考の方向性を絞ることができる。
しかし、これは一部の子どもによる意見だ。
全員ではない。
これを打破するために、デジタルワークシートを準備する。
そこに資料を載せ、可視化する。
子どもたち一人ひとりが「思ったこと」「感じたこと」「疑問」を書き込めるようにする。
すると、教師はそれを端末上で共有化することができる。
これにより、一部の子どもだけでなく、多くの子どもの意見を拾うことができるようになる。
あとは取り上げた意見をまとめていけば、思考の方向性が定まっていく。
それが「学習問題」となっていくのだ。
2 学習計画を立てるための資料の提示
学習問題をつくった後は、それに対する「予想」を出してもらう。
この「予想」が、学習問題を解決していくための「小さな問い」となる。
しかし子どもたちは、何もないところで適切な予想を出すことはできない。
的外れな予想を出すこともある。
そこで必要になるのも「資料」である。
学習問題に関する資料を用意・提示し、その資料をヒントに、「予想」を出してもらうのだ。
これにより、学習問題に関わる「予想」が整理され、解決していくべき「問い」になっていく。
このような「小さな問い」ができたら、それを解決していくことを確認し、「学習計画」をつくっていくのである。
3 学習問題に常に立ち返るための工夫
「学習問題」は社会科授業の「命」である。
つまり、どのような学習においても、常に立ち返るべきものである。
よって、「一枚もの」のデジタルワークシートの上部に「学習問題」を表示しておくようにする。
また、黒板にも「学習問題」を常に提示しておくようにする。
これにより、子どもたちは常に「学習問題」を意識できるようになる。
さらに、以下の「6」でも述べるように、「問い」についての調べ学習をしたり、「問いについてのまとめ」を書いたりする際も、「学習問題」との関連を意識できるようにさせたい。
4 問いの分担と協働
学習計画ができた後は、それぞれの「問い」の解決に移る。
このとき、一人で全ての問いについて調べる必要はない。
問いをグループで分担するのである。
そして、同じ問いを調べる者同士でグループをつくり、学習を深める。
その後は、元のグループに戻り、自分の分担した問いに対する学習成果を交流する。
これにより、協働的な学びが活性化し、一人ひとりの学びがさらに深まるのだ。
5 問いを調べる順序の選択
また、それぞれの「問い」の解決を自分で進めていく際に、調べる順序を選択してもらうことも有効だ。
教科書には調べる順序が時系列で載っているが、それを参考にしてもいいし、理由があるのなら別でもいい。
どのような順序で調べていくかの「理由付け」が大切であり、それを自覚させるために記述してもらうのである。
そして、自分の決めた順序に沿って、問いについての調べ学習を進めていくのだ。
調べ学習中は当然、「ゆるやかな協働」を重視させ、孤立した学習にならないようにさせる。
さらに、それぞれの子どもが「今どんな問いを調べているか」を把握できるよう、黒板に問いの枠とネームプレートを用意し、移動してもらう工夫もある。
6 問いについてのまとめの蓄積
それぞれに「問い」について調べ学習をしたら、全体で交流することはない。
つまり、全体での黒板を使った「まとめ」をしない。
その代わりに、一人ひとりに「問いについてのまとめ」を記述してもらう。
それを蓄積していき、「学習問題に対する考え」を書くときの参考にさせる。
「問いについてのまとめ」を書く際は、上記の「3」でも述べた通り、学習問題を意識させるようにする。
「学習問題」は単元を包摂する(貫く)問いであるため、概念的理解に関わる。
そのため、「まとめ」は抽象的な書き方になるのである。
7 追加の問いの設定
それぞれの「問い」について調べる学習は自由進度である。
そのため、早く終わる子どもが出てくる。
そんなときは、「学習問題に関連する別の問い」を設定してもらう。
必要に応じて、教師が「例」を示してもよいだろう。
そのように「追加の問い」を解決していくことで、学習問題解決のための材料が増えるのである。
8 資料のデジタル保管庫
子どもが調べ学習を進めるときは、「資料」が必要になる。
それをあらかじめ教師が想定しておき、デジタル上に共有しておくことが重要だ。
いわば「デジタル保管庫」の設定である。
これにより、資料検索の時短を実現でき、調べ学習をスムーズに行うことができる。
9 既習活用を促すための学習目標(自己評価基準)の設定
社会科の授業では(他教科でもそうだが)、「既習活用」が重要となる。
しかし、既習の活用は「学習の転移」に関わるものであり、その実現が難しい。
そこで、「学習目標(自己評価基準)」をルーブリックの形で示すことで、「既習活用」を子どもにも意識してもらうことが有効となる。
学習目標(自己評価基準)の一番高いレベルに、「既習活用」の要素を盛り込む。
すると、高いレベルを目指したい子どもたちは、「既習活用」を必然的に意識するようになる。
これにより、「前時に学習したこととのつながり」や「前単元で学習したこととのつながり」を意識して追究していくことができるようになるのだ。
そして授業の終末には、「学習目標(自己評価基準)」をもとに、自分の学習について自己評価(振り返り)をするのである。
これを蓄積していくことで、「学習のつながり」がさらに深まっていくのだ。
10 全ての学習を俯瞰する一枚シート
以上「1」~「9」の要素を授業で実現するために、単元全体を俯瞰できる「一枚シート」を作成することが必要不可欠となる。
一枚シートに盛り込む要素は以下である。
・学習問題
・各時間における「問い」と調べた「事実」を書く欄
・各時間における問いについての「まとめ」を書く欄
・学習目標(自己評価基準)
・各時間の振り返りを書く欄(基準に対する評価を含む)
・学習問題についての最終的な考えを書く欄
これらを盛り込むことで、単元全体の学びを俯瞰することができるのだ。
以上、社会科の授業づくりをアップデートするための要素を整理した。
今後の社会科づくりに生かしていきたい。