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【HSCと朝起きられない起立性調節障害の関係性】

2021年度に文部科学省が発表した「問題行動・不登校調査」の結果によれば、過去20万人を超えることのなかった小中学生における不登校者数が、今回の調査では24万人にも及び、社会問題の1つとなっております。

不登校の原因はさまざまですが、よくある原因として「無気力や不安」「親子間の関わり方」「生活リズムの乱れ」などが上位を占めています。

ここからも分かるように、ストレス耐性が未熟な小中学生では、学校や家庭での小さな不満やストレスによって不登校へ発展してしまうことが少なくありません。

中でも、ストレスをより強く感じて身体にも影響を及ぼしてしまう気質・特性を持つ「HSC」や「起立性調節障害(OD)」の子供は不登校になる危険性が高いです。両者は全く別の病態・疾患ですが、類似点も多いため良く混同されやすい疾患です。


HSCは起立性調節障害になりやすい?

結論から言えば、HSCの子供は起立性調節障害になりやすい可能性があります。両者は全く異なる病態・疾患ですが、いくつか類似点や共通点があり、しばしば診断において混同されやすいこともあるため、両者の疾患としての特性をしっかり理解しておくことが重要です。

まずHSCとは「Highly Sensitive Chaild」の略で、視覚や聴覚などの感受性が非常に敏感な気質を持った子どもを指します。つまり、なんらかの身体的原因を伴う病気ではなく、あくまで生まれながらに持っている気質のことを指します。

米国の心理学者であるエレイン・N・アーロン博士が提唱した心理学的概念であり、全人口の15〜20%、5人に1人がHSPであると考えられています。HSPの方は特徴的な4つの性質を持つとされ、その頭文字をとって「DOES」と呼ばれます。

「D:Depth of Processing」は、簡単に答えの出るような物事に対しても深く考えすぎてしまう事を指します。周囲の人の感情や空気を深く読むことができる反面、必要以上に情報を読み取ってしまい精神的に疲れやすくなります。

「O:Overstimulation」は、外部からのあらゆる刺激に対して非常に敏感である事を指します。視覚や嗅覚・聴覚などの五感や、気圧の変化、目に見えない空気感の変化などを敏感に察知し、精神的に疲労しやすいです。

「E:Emotional response and empathy」は、周囲の人との心の境界線が薄く感情に共感しやすいため、自分も相手に感情移入してしまう事を指します。

「S:Sensitivity to Subtleties」は、他の人が気付かないような音や光などの些細な刺激も察知してしまう事を指します。Overstimulationと同様に、精神的疲労を感じやすい性質です。

以上のことからも分かる通り、HSPの方は非常に周囲の変化や刺激に影響を受けやすく、精神的ストレスを抱えやすい気質であることがわかります。

HSP自体は病気ではありませんが、HSPの特性によって心が刺激を受けすぎるとさまざまな支障をきたす可能性があります。

例えば、仕事や日常生活に影響が及んだり、ストレスが蓄積することでうつ病などの精神疾患や胃腸炎などの身体疾患を併発する可能性が高くなります。

一方で、ODとはHSCとは異なり、あくまで身体的原因を伴う身体疾患です。ODでは睡眠・血圧・脈拍・排尿・排便などの体の多くの生理機能をコントロールする自律神経(交感神経と副交感神経)が乱れることで、脳への血流が低下してしまいさまざまな症状をきたします。

特に、寝ている状態から立ち上がる際は血液が重力に伴って下肢に多く取られるため、脳血流は低下しやすいです。そのため、本来であれば起床時には自律神経のうち交感神経が活性化し、血管を収縮させて脈拍を早めることで脳への血流を維持するように働きます。

しかし、ODでは交感神経がうまく活性化してこないため、起床時に脳血流が低下してしまい、めまいやふらつき・嘔気嘔吐・腹痛など様々な症状をきたします。特に、肉体が急激に成長する時期は心臓と脳の距離が離れやすく発症しやすいと言われています。

つまり、ODはHSCとは異なり生まれながらの気質ではなく、後天的な自律神経の乱れに伴う身体疾患です。一方で、両者には多くの共通点があり、両者ともに見た目では異常を認めず、周囲から理解されにくい特徴があります。

ODはあくまで自律神経の乱れが原因であり、直接的にHSPという気質が原因となるわけではありませんが、HSPに伴う過度なストレスは自律神経の乱れを助長するため、ODになりやすい可能性はあります。

このように、相互の疾患に医学的関係性が証明されているわけではありませんが、実際にHSPの子供がODを併発する可能性は十分あり得るため注意が必要です。




HSCと起立性調節障害の関係性

前述したように、HSCはあくまで気質であり病気ではありません。一方で、起立性調節障害は気質や精神疾患ではなくあくまで身体疾患であり、両者は全く別の存在です。

一方でHSCとODには共通点も多く、両者ともに通学に支障をきたしやすく、不登校の原因となりやすいです。また見た目に異常があるわけではないため、周囲から理解を得られにくい点も共通点の1つです。

HSCの場合、他の子供よりも過剰にストレスを感じやすく、それに伴い自律神経が乱れてしまうとODの症状を増悪させる可能性があるため、直接的な原因ではなくとも影響を与える可能性はあります。

しかし、ODだからと言ってHSCになるかといえば、そうではありません。HSCはあくまで生まれ持った気質であるため、ODが影響して後天的に気質がHSCに変化することは考えにくいです。



HSCで起立性調節障害になった子どもへの接し方

HSPの子供が起立性調節障害に罹患した場合、親御さんはどのように子供に接するべきなのでしょうか?

ODの症状を悪化させないためには、子供をありとあるゆる刺激から遠ざけ、ストレスを緩和してあげる必要があります。

例えば、HSPの場合は人の感情を深読みするあまり精神的ストレスを感じやすいため、本人が自然体でいられる人間関係だけを優先し、無理に学校のみんなと仲良くするように勧めることは避けましょう。

もし学校での人間関係がストレスになっているのであれば、一度距離をおいて学校を休ませることも1つの選択肢です。

また、光などの外的刺激もストレスにつながってしまうため、あえて周りが見えすぎないようにメガネを装着したり、就寝時にはアイマスクの装着もオススメです。

音刺激に対しては、イヤホンを装着して自身のリラックスできる音楽を聞き流すか、耳栓を装着して不要な音刺激を回避するのも1つの手段です。

匂い刺激に対しては、不要な匂い刺激を避けるためにマスクを装着したり、好みのフレーバーのするものを持ち歩くことでリラックスできます。

さらに、HSPでは周囲の人の心に感情移入しやすくなるため、つい周囲の感情を読み取って自分の行動を決めてしまう子供も少なくありません。

しかし、それがストレスになってしまうため、子供に「自分がどう行動するかは自分自身の感情で決めていい」ことを理解してもらう必要があります。
そのためには、日頃から親御さんが子供の言動や行動に対して許容してあげること、温かく見守ってあげることが肝要です。

注意点としては、ODで苦しむ子供に対して過剰に励ましてしまったり、過保護になりすぎてしまうと、HSPの子供にとってはかえってストレスに感じてしまい、むしろ症状を悪化させてしまう可能性があるという点です。

子供との適切な距離を保ち、その上で子供が何か困っているときは優しく手を差し伸べてあげるように、親御さんは注意深く子供の感情や言動を見ておく必要があります。

HSPは自身の言動や行動を内省することができ、周囲の空気を読んで即座に状況を察知できるため、適切な役割やポジションを与えると、思いもよらず素晴らしい働きをすることがあります。

それは家庭内でも発揮されるため、もしODで苦しんでいるHSPの子供がいれば、家庭内でただ漫然と過ごさせるよりも、なんらかの役割を与えることでストレスが緩和される可能性もあります。


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