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大学でファシリテーション論を担当したら、何が起こったか?

[この記事は、「ファシリテーターadventカレンダー」12/25日分として書いています。参加させていただき、ありがとうございます。]

立教大学コミュニティ福祉学部で秋学期の半年間、「ファシリテーション論」を担当して4年目を迎えました。去年までの3年間はオンライン授業で120名ほどが履修していましたが、今期は新座キャンパスで対面授業、10名ほどという少人数の授業になりました。

定員80名ほどの机や椅子可動式の教室を使うことになっていましたが、初日は入ってくる学生はだだっ広い教室の隅っこにバラバラに座り、誰とも目を合わせないような状態。

「では、前の方の机と椅子を後ろに寄せて、空いたスペースに人数分の椅子を丸く並べてください」と伝えると、「なんだ、なんだ? 何が始まるの???」と、明らかに戸惑った様子でした。

チェックインから授業を始めると、その頃には「あー、困ったなあ。とんでもないところに来ちゃったなあ。いろいろやらされそうだなあ。しかも、こんなに少人数じゃ、目立ったちゃうし」と気がついてきたようでした。

「気がついたか」と思いつつ(笑)、授業はおかまないなしに参加型で進めていきました。

2回目の授業の時、チェックインで偶然、「今日の持ち物の中で最近気に入っているものを見せて説明する」ということをやった時のこと。学生の一人が「僕、ポケモンカードゲームやっていて、先週末の○○大会で優勝して、その時にもらったポケカがこれです」と見せてくれました。一同「え〜! すご〜い!」と感心し、授業が終わると他の学生が彼のところに駆け寄り(私もですが。笑)「さっきのカード、見せて!見せて!」となりました。

それがきっかけになったかどうかはわかりませんが、毎回、問いの異なるチェックインやアイスブレーク、そして授業の中の対話の中で、そういうことをやらなければ知ることのなかったお互いのことを知り、興味を持ち、仲間になっていったと感じています。最初はお互いを知らなかった学生が、LINE交換して「○○ちゃんは電車遅延で遅れるそうです」と教えてくれたり、授業中にヒソヒソ話をしてクスクス笑っている状況も。

4年前に授業を依頼された時に考えた授業の目標は、「ファシリテーションができるようになる」ためのツールやテクニック的な(HOW)というよりは、「さまざまなファシリテーションの場を体験・体感することにより、自分にどんな変化が起こったのか。そういう場を作るためには、ファシリテーターがどんなことに注意を向ければいいのか?」(WHY)にしようと考えました。

大人数のオンラインの授業ではその手応えはあったものの、今期の対面授業では学生一人一人と関係性が変わっていくのをさらに実感することとなりました。具体的には、

▪️場の雰囲気が柔らかく、和やかになった
▪️笑顔が増えた(最初からくつろいでいるようになった)
▪️最初はなかなか発言しなかったのが、どんどん話してくれるようになった
▪️中途半端な意見や、まだ自分の中でまとまっていないことも話すようになった(「お利口さん」な答えが減った)

毎年学期後半には、学生にチームに分かれてもらい、自分たちで選んだテーマに関する話し合いをデザインし、実際にファシリテーションを行なってもらうということをやっています。みなさんとても緊張していたようでしたが、

▪️話し合いがより活発になるような、良い「問い」を立ててきてくれた
▪️途中で「いま介入すべきか、もう少し待つべきか」という葛藤をしながら、よく耐えたり介入に踏み切ったりできた
▪️想定外のことが起こった時にも、それを受け入れてスムーズに次に向かった(私自身に、あの状況でそれができたかはわからない、脱帽!と思いました。学生にもそのことは伝えました)

と、素晴らしかったです。

授業は途中で脱落する学生もいるのですが、今回最初にいたメンバーは最後までいて、「楽しかった!」「次回も楽しみ♪」という感想が多く見られました。

では、なぜ楽しいのか? 私がおもちゃやカード、ゲームなど、毎回いろいろなものを持ち込んだのもあるでしょうが、「自由に発言してもいい」という体験を積み重ねていくうちに、自己受容・他者受容が起こり、「自分自身でいてもいい」ということがわかってくるからではないでしょうか。

また、今回一番嬉しかったのは、「話し合っているうちに、自分の考えが変わってきた」という意見でした。その発言に至るには、それに気がついて、受け入れて、人に伝えるといういくつものプロセスが必要です。考えを変えるのは「負け」でもなんでもなく、「変化」だと気がついたのだと思います。

一般的にはまだまだ二項対立、つまり「いい、悪い」「正しい、正しくない」「勝つ、負ける」という発想が多いと思いますが、そのどちらでもない世界があり、そこから新しいものが生まれるということが伝わっていたらと思います。若い世代だからこそ、できるだけ早いうちにそうしたことに触れていただく一助となっていることを願ってやみません。

・・・と、ここまで書いて気がついたのですが、一番変化したのは、私自身だったかもしれません。出会った時と今では、一人一人の個性や才能が際立って感じられるようになり、尊敬するようになったからです。ファシリテーターとは「自らが変化して"しまう”ことも良しとする」と、かつて師から教わりましたが、こうして生の体験をさせてくれた今期の学生には感謝!です。

integforsustainability.com

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