書籍 深い集中を取り戻せ
著者は集中状況をモニタリングできるアイウェアJINS MEMEを開発し、今や集中の専門家としてご活躍の井上一鷹さん。(JINS執行役員まで経験後、現在はSunでご活躍)
リモートワークやノマドワークでサラリーマンであっても個々のパフォーマンスが更に問われる時代において、上手に(早く、深く)集中できるスキルはどんな職種でも重宝するはずなので、クリエイティビティが問われるあらゆる職種に向けてお勧めの1冊。
集中に要する時間と現状
1つのことを深く集中して考えるためには、準備だけで23分かかることが研究により明らかになっている。しかし、その一方で、現代人は平均で11分に1回、口頭やメールやチャットで集中状態を乱されている。つまり、残念ながら大半の人は深い集中状態には入らずに仕事をこなしている。
パフォーマンスと集中の方程式
アウトプット = 時間 × パフォーマンス
パフォーマンス = 能力 × 環境(空間や時間)
つまり、アウトプット = 時間 × 能力 × 環境(空間や時間)になるが、能力を最大限に引き出すのが集中できる環境と理解すると良い。
つまり、集中できないのは誰の責任だ?
個人事業主はもちろん自らの責任であり、そこは変わらないけれど、従来はサラリーマンは会社のせいにできた部分がある。だって事務所が狭くてうるさくて。隣や向かいの人が話しかけてくるしそれも仕事の一部だし。
しかし、在宅勤務が選択できるとかさせられる状況においてはサラリーマンであろうとも集中できないのは自分のせいで、もう会社のせいにできない。こう言い換えても良い。「プロなら集中できるように環境を整えて仕事に臨みなさいと言われる世界が来た。」とか、「集中するというスキルを従来より求められる社会になりました」とか。
自分で整えられない部分もあるだろうが、可能な限り集中できるように労働環境を整えよ!ということだ。(き、厳しいなあ)
スムーズに作業を始める工夫
作業は立ち上げてから開始するところが一番負荷が高いため、その抵抗を小さくするためにスモールスタートを進めている(これは時間術や仕事術でも良く取り上げられているタスクブレイクダウンのこと)
また、その日に何をするのかを明確にしておくことも効率的に物事を進めるのに有効だ。(この辺りは、むしろ「7つの習慣」やNOLTYシリーズのPDCA手帳辺りの方がわかりやすいのでサラッと書くに留める)
テレワーク環境に投資するなら?
環境に投資、ということで、作業効率の良いデスク、椅子、ITツール、文房具。個人的には五感に効く部分を重要視したい。ノイズキャンセリング機能の付いたイヤホン。アロマディフューザーなんかも効果的なのかもしれない。
3つの分野へのリソース配分
以下3つに時間を思った通りの配分で投資することが理想であり、その理想配分をデザインすることこそが働き方を考えることだ、という主張は忘れずに取り込みたい。
<3つの分野>
① Work 仕事に集中する時間
とにかくしっかり業務に集中し、パフォーマンスを出す。これは1人でやる時間だけだはなく、職場の同僚やパートナーとの打ち合わせ等のコミュニケーションも含まれる。(つまり、コミュニケーションのコストパフォーマンスも良くしていく必要があるので、ダラダラと内容のやり取りをするなんてあり得ないということ)
② Self 1人だけの時間
仕事もせず、誰とも一緒にいない自分だけの時間は、絶対に無くしてはならないし、意識してデザインする必要がある。(クリエイティビティには孤独な時間が必要だとパブロピカソも言っていたはず)
③ Relation 家族や友人と過ごす時間
ここが①と混ざってしまうのが従来の日本の古き良きサラリーマンスタイルなのかもしれない。その関係は友人なのか同僚なのか。どっちか本人たちもわかっていないのか。会社でやるなら仕事にして欲しいし、友人ならプライベートで付き合えばいい。
逆に、家族や友人と会いたいと決めた頻度や時間を過ごせているだろうか?
後悔なく生きているのか?という部分も併せてデザインしたい。
非日常もデザインする
本書でこれは面白かった!という部分。
テレワークが進むと、セレンディピティ(偶然のような必然的な出会い)が減っていくことは予想に難くない。だから、良い刺激をもらえる非日常も自分でデザインしていく必要があるよ、というものだ。
書籍では美容院なんか絶好の非日常体験をする機会とされており、確かになあと思った。(そしてこれをきっかけに、あまりにも悪い刺激しかない美容院との付き合いを精算し、距離も遠く価格も倍ぐらいになったが、別の美容院にお願いするようにした。全く後悔していない)
日帰りでも会社帰りでもちょっと足を伸ばすと素敵な体験は溢れているはず。素敵な非日常を体験させてくれる場所を探して、計画して、旅立とう!
7つの習慣は様々な形で提供されているので、とっつきやすいこういう本から入るのもお勧め。
分厚くて読みにくい…という人も多いけれどやはり得るものは大きい基本の1冊
A5版で使いやすいフォーマットなので、学生にもビジネスマンにもお勧め。