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思い出話 ①

大学院留学の1年目の冬休みー

クリスマスに友人たちと韓国旅行をした後、お正月を日本の家族とともに過ごして、翌日、アメリカに戻る予定で準備を完了していたら、ルームメートから電話がかかってきた。

ー前に、なくなったって言ってたお金、出てきた?

・・・国際電話をかけてきて、何を言ってんだろうと思いつつ

「出てきてないよ」と答えた。

私は、秋学期の初めから、私の通う大学の語学学校に通っていた日本人と一緒に住んでいた。そのアパートで数ヶ月前から私のお金が少しずつなくなっていて、私はそのルームメートを疑っていた。

が、彼女が続けて言うには、私たちの部屋で

私の留守中に遊びに来ていた彼女のボーイフレンドのお金が、外出から帰ってきたら消えていたのだという。

「え?」

「つまり、空き巣が何度も入っているということ?」

ーそうかもしれないから、帰ってきたら対応してくれる?

と言われ、年末年始、韓国でもらってきた風邪をこじらせて、ようやく回復したというのに、ついてないなぁと思いながら

「わかった」と伝えて電話を切った。

アメリカに戻り、ルームメートから報告を聞き、翌日、警察に電話をした。事情を伝え、大学内にあった警察署に出向き、後日部屋に来てもらい、捜査が始まった。

色々調べてみると、アクセサリー類も、きちんとした場所に行くときに着けるために持ってきていた父にもらった高価なものだけ消えていた。

ルームメートのアクセサリーの中でも、ティファニーだけが消えていて、封筒に手紙とともに入れっぱなしになっていた彼女のご両親が送ってくれたクリスマスプレゼントの50ドルもなくなっていた。

同じアパートで他の部屋でも被害があり、全て、アジア出身者の部屋だったという。

そして、ルームメートからの報告で犯人がわかることになる。

その犯人はー

彼女は、私が帰宅する前に何をすべきか考えているとき、彼氏のお金がなくなったことをアパートのセキュリティのおばさんに話していた。

住み始めてから4ヶ月近く経っていて、彼女も私も、気さくなそのおばさんと仲良くなっていた。

そのとき、おばさんは「警察にではなく、大家さんに言うべきだ」とルームメートに伝えたという。

ルームメート同様、そのことに違和感をもった私は、担当の刑事さんに伝えた。刑事さんもそれはおかしな話だと、セキュリティのおばさんに事情聴取をしたところ、彼女が犯人だとわかった。

その後、刑事さんに聞かれるー

「起訴しますか?」

ーん?

その刑事さんが言うには

この場合、裁判まで持っていくかどうかは被害者の意向によるのだという。

アジア人は、警察とむやみに関わりたくないと保険の申請などに必要な被害届までは出すけれど、起訴はしない傾向があり、それで、アジア人が狙われることが多い。それでは捕まっても、裁判にならなければ、彼女は同じ仕事を別の場所で続けることができるー

「あなたは、どうしますか?」

と、聞かれたのだった。犯人が認めたのは私のお金だけだったので、起訴するか決める権限はルームメートにはなかった。

私は

「もちろん、起訴してください。」

と、答えた。私に躊躇はなかった。

若さもあり、裁判の日、証言の前に検察官に「引っ越したよね」と確認されたとき、検察官の言っていることを理解して、私は、初めて、少し怖くなったのだけれど・・・

・・・そんなことを先日、ひょんなことから生徒たちに話した。

話をしていた生徒だけではなく、その周りにいた生徒たちも皆、目を輝かせて聞いていた。

授業の説明も、私たちの注意も、同じくらい真剣に聞いてほしい!

と思う目の輝きだった。

言いたかったのは、ただ、私は、世の中を良くしたいとか、他の人が傷つくとか、そういうときには、傷つけようとする人や悪いことをする人の責任を問うことに、今でも躊躇がないーという話の流れだったのだけれど・・・

結局、そこが伝わった手ごたえは全くなかった・・・笑

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Terakoya Kamei
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