島食のからだ
カワハギ鍋。
はまちの梅煮と、角煮。
残った梅煮の煮汁に調味料を足してスズキのあら炊き。
アジフライにかば焼き。さばのみりん干し。
11月のとある一週間で、シェアハウスの食卓にならんだ魚料理たち。
大敷がまた動きはじめて、ご無沙汰だった数か月を取り戻すように魚ばかり食べている。
思い返せば何を食べて生きていたのか不思議なくらい、冷蔵庫にも冷凍庫にも魚がない時期や、家に野菜がたまねぎといも類しかない時期もあった。だし巻きの練習がつづけば、心配になるくらいたまごを食べつづけることになる。栄養バランスのいい食生活とはいえない気がするけれど、なぜか体の調子も、肌やつめの状態もすこぶるいい。
発酵食品は体にいいからと、ほぼ毎日欠かさず食べていた大好きなヨーグルトと納豆は、ここでは高いのでめったに買わない。
代わってよく食べているのが、海士町に来て初めて食べたこじょうゆみそ。水とみりんと塩を沸かし、冷めたらこじょうゆばな(こじょうゆみその糀をそう呼ぶ)とボウルにあわせて手でよく混ぜる。毎日一回混ぜつづけて二週間後、保存容器に移して使っていく。
ふつうの味噌は何か月、何年も熟成させるものもあるけれど、こじょうゆみそは仕込んだその年に食べきるらしい。寺子屋でも和えものに田楽に、焼き魚の下味にと活躍している。わたしは昨日の残りごはんで焼きおにぎりにするのがお気に入り。
野菜は分けていただくことも、寺子屋ファームで採れるものもあるので、島外産を買うことは少ない。きのこはあまり食べなくなっていたけれど、旬を迎えたしいたけなら最近よく食べている。 海士町で作られている唯一のきのこは、わたしが唯一きのこ類で苦手だったしいたけ。いつのまにか煮ても焼いてもおいしいと感じて食べられるようになったのは、原木栽培だからか、農家さんの顔と人柄を知っているからなのか。肉厚しいたけの天ぷらに喜んでかじりつくわたしを見たら、家族はびっくりすると思う。
スーパーで買うと高いので一日ひとつでがまんしていたみかんも、ここでは毎食後に食べても尽きない、うれしいおやつ。散歩にいくときもフェリーで遠出するときも、かばんにしのばせていつでもどこでも食べている。 北海道からのと、シェアメイトたちそれぞれに届くふるさと便で故郷の味も楽しみつつ、島の恵みをたくさん食べて、いまのわたしの大部分は島食でできていると思う。チューニングが合って、土地と自分がつながっているような、うまく言い表せないけれど、そんな感覚がある。
毎日理想のバランスで食事を摂るのは、きっとどこで暮らしていても結構むずかしい。 だから一週間くらいでバランスとれたらいいと思うんだよね、と電話口で母に言う。 一年間でもいいんじゃない、と母は言う。 住む土地でとれた旬のものを食べているって、たぶんいちばんつよい。 誰に教わらなくても、わたしの体はちゃんとそれを知っている。
(文:島食の寺子屋生徒 佐野)