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わたしは今日も、後出しジャンケンをしている。

最近、妙な感覚に陥ることがある。

この感覚に初めて陥ったのは、わたしがロンドンに住み始めてから、約2週間が経ったころだったと思う。いつものように朝起きて、今日の予定を考えていた時だった。時差ボケが、やっと治ったころだったかもしれない。

ロンドンと東京の時差は、基本的に『9時間』だ。3月末から10月末ころにはサマータイムが適応され、『8時間』になる。

つまり現在の時差は、『8時間』。労働基準法に記載されている労働時間と、ピッタリ同じ。推奨されている1日の睡眠時間も『7時間』だからだいたい、そのくらいだ。活動時間分、ごっそりズレている。

東京が目覚めるころ、ロンドンは眠り始める。
ロンドンが目覚めるころ、東京は1日の活動を終える。

あの日、朝起きて「シャー! 今日もがんばんでえ!」と思ってSNSを開くと、そこには、今日という1日をがんばり切った人たちの言葉たちが並んでいた。楽しそうだったり、苦しそうだったり、内容はさまざまだけど、そのすべてが、わたしがこれから生きようとしている今日を、すでに生き抜いた人たちの言葉だったのだ。

そして気づけばわたしは、それらの言葉を参考にしようとしていた。いいことは真似して、ダメなことは反面教師に。未来を生きた人たちを参考に、いかに自分の人生を良くできるか、対策を練っていたのだ。「後出しジャンケンしてもいいよ」と、まさかのハンデをもらった感覚はきっとこうだ。

SNSを開けば、簡単に世界と繋がれる。無料で通話までできてしまう。あまりに簡単で壁がないから、その度に、ついつい同じ世界を生きているような錯覚を起こしてたけど、違ったんだな。わたしだけ、ハンデを与えられた世界を生きていたのだ。

日本と一番時差が離れているのは、アメリカのベーカー島とハウランド島。なんと『-21時間』も違うのだそうだ。ほぼ1日のハンデがある。

どこかにいるあなたがこの文章を読んでくれている今も、わたしは、ハンデを与えられた世界をちゃっかり生きている。しかし世界のどこかには、わたしよりもさらにハンデを与えられた人がいる。

うらやましい! ズルい! と思うだろうか。でもどこまでいっても、どこまで世界が便利になっても、この事実からは逃れられなかった。

ハンデを嘆いても人生は変わらない。自分だけの世界を、自分のために必死に生きていくほかに、世界が幸せに包まれる方法はきっとないのだ。

ほな、また。

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